Record China 2021年8月3日(火) 21時20分
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ドイツメディアのドイチェ・ヴェレは2日、「東京五輪:五輪精神と民族主義」と題する記事を掲載した。
記事はまず、米ロサンゼルスの大学に通う河南省出身の張(ジャン)さんを紹介。張さんはもともと五輪にあまり関心を抱いていなかった。開幕の数日前から米国で新型コロナウイルスの感染者が増加し始めたことや、故郷が水害に見舞われたことなどが理由だった。しかし、ここ数日は留学生のSNSグループでも五輪に関する話題が増えており、自身も注目するようになったという。
張さんは「もともと中国が金メダルをいくつ取るかということは大事だと思っていませんでした。ここ数年、中国は発展しましたし、五輪のメダルによって自分を証明する必要もないと思っていました」と語った。一方で、チャットグループの中で「日本鬼子」「韓国棒子」「米国人は醜い」「台湾人はカエル」といった罵声を最初は眉をひそめて見ていたものの、「ここ数日は私自身も『小日本』『日本鬼子』と叫んでいることに気付きました」という。
記事によると、張さんは体操男子個人総合の決勝戦で橋本大輝が中国の肖若騰(シャオ・ルオテン)を抑えて金メダルを獲得したことに憤慨していた。留学生の間でもこの話題だけで数百の書き込みがあったという。張さんは「中国が世界での発言力に乏しく、欧米諸国からいじめられたり、圧迫されたりしている証拠」と考えた。国際体操連盟(FIG)が採点の詳細を説明したことについても、「欧米諸国が結託して発言権を独占している」という認識で、「中国が世界の強国になるのは本当に難しい」と嘆いたという。
一方で、張さんは周囲の米国人たちが自分たちとは異なる見方をしていることにも気付いた。米国人のルームメイト2人は五輪にあまり関心がなく、米国が金メダルをいくつ獲得していたかも知らなかった。「リビングにはテレビがありますが、彼女たちは興味があるいくつかの競技しか見ません」とのこと。
米国の女子体操選手のシモーネ・バイルズが団体戦決勝で途中棄権したことについても、意見が違った。中国のネット上では多くが「理解できない」という考えで、「彼女は自分勝手」「集団主義の精神を持たない選手は中国には絶対に現れない」などの声が出ていたという。張さんが後日、米国人のルームメイトにこの件について尋ねると、「バイルズの自由」「メンタルが整わないのなら棄権すべき」「誰にも彼女を非難する権利はないし、彼女は謝る必要もない」などの言葉が返ってきた。米メディアでもバイルズの選択を支持する報道が多かった。
張さんは「ここ数日、中国のネット上で多くの人が負けた選手に罵詈(ばり)雑言を浴びせるのを見ました。特に日本に負けた卓球の劉詩雯選手や、台湾選手に負けたバドミントン男子ダブルスの選手。彼らにもバイルズのような苦しみがあるのではないでしょうか。彼らには試合を棄権する権利があるでしょうか?。私は今のところ、中国選手は勝手に棄権することはできないと思います。2008年に(ハードル選手の)劉翔(リウ・シアン)が(棄権して)ネットでたたかれたことを覚えていると思います。ですが、徐々に良い方向に向かうと思います」と語ったという。
テキサス州で学んでいる李さんも、五輪をめぐって米国籍の夫と意見の相違が生じた。李さんは当初、「私と一緒に中国チームを応援してほしい」と夫に頼んだ。米国が中国に勝利すると、夫を責めた。しかし、夫は試合の勝ち負けをあまり気にしておらず、自国選手が金メダルを獲得して国歌を聞いても胸が熱くなるということはなかったという。
李さんはここ数日、五輪をめぐるネット世論に恐怖を感じるようになってきたという。今回の五輪でネット上に漂う愛国感情、民族主義的な感情が例年に比べて多くなっていると李さんは感じている。リオデジャネイロ五輪に比べて今大会の中国のパフォーマンスは出だしから良かったが、他国の選手を嘲笑したり、中傷したりする行為が続出した。橋本大輝や国際体操連盟の審判員、伊藤美誠らがターゲットになり、侮辱的な画像加工も相次いだ。
李さんは「普段は優しい話し方をするクラスメイトがSNSで『抗日感情に火がついた』とつぶやいているのを見てぞっとしました」と話した。「愛国不十分」と批判される自国のネットユーザーやメディアも目にした。そこには、体操の採点基準を説明して「肖若騰は減点されてしかるべき」と主張したネットユーザーも含まれている。射撃女子10メートルエアライフルで金メダルを獲得した楊倩(ヤン・チエン)も、かつてナイキの靴を愛用していたとして罵声を浴びた。
李さんは、「ネットユーザーはおかしくなっています。このような感情は危険です。彼らの基準では、私も『愛国でない』発言をしている可能性があります。私はもうネット上で発言する勇気がありません」と語っているという。(翻訳・編集/北田)
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