中国の土壌汚染が深刻、修復市場は88兆円規模へ

内藤 康行    2021年9月23日(木) 16時10分

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中国では近年、土壌汚染事件や事故が頻繁に発生している。資料写真。

中国では近年、土壌汚染事件や事故が頻繁に発生している。工業化と都市化の加速に伴い、人類生存の物質的基盤としての土壌は、現在すでに大部分の汚染物質の消費地となっている。汚染企業による廃液の投棄から水銀米、鉛小麦まで、土壌汚染事件・事故はどこでも見られる光景だ。

土壌汚染は、生態環境の安全を脅かすだけでなく、人間の健康と安全を危険にさらす。土壌中の重金属過剰で土地の健康指標が低下しており、土壌修復は急務となっている。

■土壌修復について

土壌修復とは、物理的、化学的、生物学的方法を利用し、土壌中の汚染物質を移動、吸収、分解、変換して、それらの濃度を許容レベルまで下げるか、有毒で有害な汚染物質を無害な物質に変換することを指す。

現在、中国の土壌環境状況は総体的に深刻で、一部地域の汚染は特に厳しい状況にある。土壌環境保護は、エコ社会の建設を促進し、国の生態安全を維持するための重要な部分となっている、そのため、政府部門は土壌の保護と修復を非常に重要視しており、土壌保護と修復の取り組みを強化し一連の保護と包括的な整備措置を採用している。

「土十条」、「土壌汚染防止整備法」、「汚染区画の土壌環境管理弁法」、「2017年国家ネットワーク土壌環境モニタリング技術要求」などの公布に伴い、中国は今後数年間で土壌修復に関連する法律と政策を導入し、土壌修復法制度を改善し、土壌修復産業にさらに詳細な指導意見を提示し、土壌修復産業の発展を後押しする。土壌修復市場規模は1兆元(約17兆円)を見込む。

■土壌修復兆市場はブルーオーシャンか

中国の土壌汚染修復整備が遅れたことで、業界は今後、同市場が拡大すると見ているが、土壌修復市場の規模はどのくらいの大きさになるのか?

あるデータによると、2016年の土壌修復産業の受注総額は60億元(約1020億円)近くだったが、2017年の受注総額は約250億元(約4250億円)に急増し、2020年の受注総規模は約400億元(約6800億円)となった。しかし、業界内のアナリストは、中国の土壌修復産業はまだ揺籃期にあり、市場規模は年々拡大するだろうと予測している。

また、中国華東、南西部などで詳細な調査と整備計画の策定が完了し、修復の需要が徐々に明らかとなり、2020年以降の市場成長を支えることが期待されている。業界関係者は、「用地修復、農地修復、鉱山修復などを含め、土壌修復の潜在的な市場スペースは5兆2000億元(約88兆4000億円)を超えるだろう」と指摘した。

政策支援型の産業として、土壌汚染防止・整備行動計画から土壌汚染防止・整備法、土壌環境モニタリングの技術的要求に至るまで、土壌汚染防止・整備を非常に重視していることを示している。兆元規模の土壌修復市場の「ブルーオーシャン」の実現には、政策支援が必須であるだけでなく、関連する環境保護企業の「内部の強さ」、市場潜在力、土壌修復、先行モニタリング、土壌モニタリング計器を継続的に育成する必要がある。「新たなブルーオーシャン」に期待がかかっている。

■土壌モニタリング計器の巨大な需要

前述のように、土壌修復は汚染土壌の正常な機能を回復するための技術手段であり、土壌汚染の深刻さ、修復の難しさと緊急性のために、汚染土壌修復はすでに今日の環境科学研究のホットスポットと挑戦的な分野になっている。

土壌修復、先行モニタリング、土壌修復モニタリングのプロジェクトは主に土壌中の汚染物質や有害有毒成分を検出する。この中には残留農薬、重金属含有量、固形廃棄物含有量、放射性物質の検出、無機非金属含有量などを含む。土壌修復モニタリング方法は、主にガスクロマトグラフィー、紫外分光光度法、イオンクロマトグラフィー、周波数領域反射率測定法、原子吸光分析法、原子蛍光法、フレーム原子吸光分光法など、さまざまな項目に応じて各種の方法を採用する。

汚染土地の修復と改善のプロセスをモニタリングするため、関連する土壌モニタリング計器が特に重要になっている。水銀、ヒ素、セレン、ビスマス、アンチモン、その他の重金属などの土壌中の沈殿物の測定には、デュアルチャネル原子蛍光分光法、液相クロマトグラフィー原子蛍光分光計、X蛍光分光計、誘導結合プラズマ分光計がある。

さらに、モニタリング計器の使用により、土壌環境モニタリングシステムの構築、定期的な土壌環境モニタリングの実施、土壌環境モニタリングの結果のタイムリーな報告、土壌環境の全体的な状態、潜在的なリスク、変化動向を把握する。同時に技術の発展の伴い、土壌モニタリングはより体系的かつインテリジェント化と進化する。

土壌修復産業が近年急速に成長し、汚水処理、大気汚染整備、固形廃棄物処理の後に続く、環境保護市場のもう1つの重要なセグメントになっている。業界アナリストは、潜在的な総市場規模は5兆2000億元を超えると分析している。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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