謎過ぎるウルトラマンティガの削除、「暴力」の基準どこに?―中国メディア

Record China    2021年9月30日(木) 20時0分

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中国で「ウルトラマンティガ」が一時削除され、その後「復活」したことについて、中国メディアは28日、「暴力の基準はどこにあるのか」とする記事を掲載した。写真は上海のウルトラマン50周年イベント 。

中国で日本の特撮ドラマ「ウルトラマンティガ」が一時削除され、その後「復活」した不可解な騒動について、中国メディアの中国新聞週刊は9月28日、「暴力の基準はどこにあるのか」とする記事を掲載した。

■突然の削除からの「復活」、背景に何が?

今月24日、騰訊視頻(テンセント)、優酷(YOUKU)、愛奇芸(iQiyi)、bilibili(ビリビリ動画)など中国大手動画配信サイトで「ウルトラマンティガ」が削除された。3日後の27日に突然配信を再開したのだが、一部の回が削除されたままになっていることから、「問題のある回」を避けて再開したとみられる。

記事は、「ウルトラマンティガ」について、「昭和のウルトラマンと比べてストーリー、特殊効果、演技の面で明らかなブレイクスルーがあった」と評価。「削除された数日間に戸惑ったのはファンだけでなく、無数のアニメ業界関係者たちだった」とした。

削除された原因について、江蘇省消費者権益保護委員会が今年4月に公表した「アニメ分野における未成年者の成長安全侵害消費調査報告」の中で、「ウルトラマンティガ」には43の「暗黒要素」が存在し、全体の34.9%を占めていると指摘されたことが関係しているとの見方が浮上した。しかし、同委員会はコンテンツ配信元の自主的な行為だとして関連性を否定した。

一方、各配信サイトは「コンテンツ調整のため」「最適化のため」「著作権の問題のため」などと説明。ただ記事は、ウルトラマン中国の公式微博(ウェイボー)が25日に安徽省合肥市で開催予定だった記念イベントの登場キャラクターが「ウルトラマンティガ」から「ウルトラマンタイガ」に変更されたと発表したこと、中国のコンテンツを管轄する国家広播電視総局が24日夜に「暴力や血なまぐささ、低俗やポルノなどのよろしくないエピソードや場面を含むアニメのインターネット放送を断固としてボイコットし、優れたアニメの放送を大いに支持する」との通知を発表していたことを挙げ、「これがウルトラマンティガが消えた理由で間違いない」との見方を示した。

■「暴力」の基準はどこに?

記事は、「ウルトラマンティガ」はアニメではなく特撮映画としてカウントされるべきとした上で、「暴力の基準はどこにあるのか」と疑問を提起した。騒動後、多くの人は保護者からの苦情がこの結果を招いたと考えていたが、アニメ業界関係者は保護者からの苦情が散発的にあったとしても削除にはならないだろうとの見方を示した。

「ウルトラマンティガ」は江蘇省消費者権益保護委員会の4月の報告書で、「暴行、複数人による恐喝、放火、爆発などの暴力的なシーン」があるとされたが、記事は「同作をよく知っている視聴者は『ウルトラマンティガ』が他のウルトラマンとは違うことを知っている。それまでの相手はほとんどが地球外の怪獣で決まったテーマもあまりなかったが、『ウルトラマンティガ』そして後続の『ガイア』『ダイナ』などは人間性、環境、友情といったテーマがより鮮明になっている」と指摘。

「人間には欠陥があり、それに向き合い、克服するということが『ウルトラマンディガ』の作品全体を貫いている。そのマクロのテーマと内容の共通性は、日本だけにとどまらない。複雑な人間性が『ウルトラマンディガ』の魂であり、それこそがこの作品を幼稚な善悪二元論の子ども劇ではなく、教育的な意味を持つリアルな童話たらしめているとの見方もある」と評した。

赤兎経典アニメーション制作有限公司の谷淞(グー・ソン)CEOは「『ウルトラマンディガ』には暴力的なシーンがあるが、内容としては決して暴力的な価値観をアウトプットするものではない」と主張。「同作がある世代に受け入れられているのは、その背景にある救いや勇気などが、実は10代の若者の優良な価値観形成に役立つと考えられているからだ。私は長年仕事をしてきたが、歪んだ価値観で大ヒットした作品は見たことがない」と述べた。

記事は、西遊記など他のアニメ作品の暴力シーンを引き合いに、「子どもはその中で、悪を懲らしめ、正義を助けるという道理を理解するのである。それなのになぜ『ウルトラマンディガ』では基準が変わるのか」と苦言を呈した。

■あいまいな基準、影響はアニメ業界全体に

谷氏は基準がはっきりしない状態で作品を削除することは、ファンにとってだけでなく中国のアニメ産業にもたらす影響も深刻だと指摘する。

同氏は「『ウルトラマンディガ』は合法的な著作権取引で引き入れられ、合法的な放送審査に合格している。暴力的と結論付けられるのであれば、放送前の審査はどのような基準で行われていたのか」と矛盾を指摘。同作が2004年に中国で初めて放送された時は大幅なカットは行われておらず、大手評価サイトでは9.4点(10点満点)と非常に高い評価を獲得した。谷氏は「基準の変更があったのならどのような調整に基づいているのか。変更の周期や流れはどうなっているのか」と問いかけた。

記事はこのほか、「基準が不透明であれば、アートクリエイターが安心して仕事ができないことは間違いない。投資家やプラットフォームも訳が分からない損失を被ることになる」とも指摘している。

「ウルトラマンディガ」の削除は国産アニメの発展に有利になるとの見方も出ていたというが、谷氏は「『ウルトラマンディガ』が削除されても国産アニメのレベルが上がるわけではない。恥ずかしい話だが、私は自分の2人の子どもに国産アニメを見るようにとは勧めていない。以前と比べて、中国のアニメーション企業は技術的に大きく向上したが、コンテンツの創作においては依然として十分なレベルには達していない」とした。

また、一部の保護者からは「子ども向けアニメのストーリーは実際に即し、常識から逸脱するものが多すぎてはならない」という声が出ていることについても、「アニメの最大の優位性は無限の想像力と創造性。子どものうちに正しい価値観を形成することは確かに重要だが、想像力を広げ、子どもの創造力を尊重してあげることも同じくらい重要。アニメーションはある程度、そうした作用をもたらすことができる」と訴えた。(翻訳・編集/北田

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