<日中世論調査>相手国の印象「悪化」に衝撃=相互協力「期待」は光明―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年10月24日(日) 6時10分

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「日中世論調査」で中国国民の日本に対する意識がこの1年で急激に悪化。冷え込んでいた日本国民の対中意識にも改善はなかった。一方、日中両国民とも日中協力への期待が大きいことが判明したのは一筋の光明である。

非営利シンクタンクの言論NPOが毎年実施している「日中共同世論調査」に注目している。先週今年の調査結果が発表されたが衝撃的な結果となった。中国国民の日本に対する意識がこの1年で急激に悪化。「良くない印象を持っている」人の割合は7割近くに達した。一方、冷え込んでいた日本国民の対中意識に改善はなく、中国へのマイナス印象は9割を越えた。

こうした中、日中両国民とも世界・アジアの平和維持や経済発展に向けた日中協力への期待が大きいことが明らかになったのは一筋の光明である。また米中対立の中での日本の立ち位置について、日本国民の55%が米中の「どちらにもつかず世界の発展に努力すべき」と回答した点は注目すべきである。安全保障で米国、経済で中国に大きく依存している日本の立場が反映されたと思う。政府には「全方位外交」「近隣外交」を志向すべきだとの国民の意思が示されたと考える。

中国国民の回答で「日中関係の発展を妨げるもの」として最も増加したのは「両国政府の間に政治的信頼関係がないこと」で、日本の印象を良くないとする理由では、「侵略した歴史をきちんと謝罪し反省していないから」「一部の政治家の言動が不適切だから」が目立つ。

今回の世論調査では、お互いの軍事的な脅威だけが議論され、国民間に不安がある中で政府間の外交が機能せず、さらにコロナ禍で国民間の直接交流がないこと、また歴史認識問題が再び中国で話題になっていることなどが明らかになった。

双方共に今後の日中関係に関しても悲観的な見方が強まっており、両国の国民感情は注意を要するゾーンに入ったと懸念せざるを得ない。

こうした中、「世界経済の安定した発展と東アジアの平和を実現するために、日中両国はより強い新たな協力関係を構築すべきだ」と考えている中国人は7割を超え、日本人でも4割以上が同じ見解であることが分かった。さらに、日中両国やアジア地域に存在する課題の解決に向けて、日中両国が協力を進めることについて、日本人の6割近く、中国人の7割以上が「賛成」している。

さらに、米中対立の影響が日中関係にも及ぶ中での、日中協力のあり方について、日本人の4割、中国人の半数近くが米中対立下でも日中協力を促進すべきだと考えていることが明らかになった。日中の平和友好に向け心強く思う。

これらの調査結果は、来年の日中国交正常化50周年に向けて、政府間の積極的な外交努力や民間同士の粘り強い取り組みが必要であることを示している。

<直言篇178>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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