テレワークの次にくるものは何? コロナがDXを「7年前倒し」に急加速

Record China    2021年10月29日(金) 8時0分

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「ウィズ・コロナ」や「アフターコロナ」の世の中が見えてこないこと不安を持つ人は多いだろう。そんな中で、「明日の世界」を考えるヒントになるイベントが開催された。

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新型コロナウイルス――。日本では10月下旬現在、新規感染者数が減ってきている状況だが、それでも今後に不安を持つ人は多いだろう。いわゆる「ウィズ・コロナ」や「アフターコロナ」の世の中が見えてこないことは気になる。そんな中で、「明日の世界」を考えるヒントになるイベントが開催された。華為技術(ファーウェイ)が日本企業などを対象に10月26日と27日に東京都内で開催した「HUAWEI CONNECT 2021(ファーウェイ・コネクト2021。以下、コネクト2021)」だ。

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ファーウェイと言えば、携帯電話のメーカーとの印象を持つ人もいるだろう。しかし同社は現在、全世界におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)を大きな着眼点として、むしろB to Bに重心を据える企業だ。日本法人であるファーウェイ・ジャパンによると、携帯電話による売り上げの割合はすでに、全事業の売り上げの5分の1程度にまで縮小した。

このDXとは、デジタル技術あるいはIT技術を徹底的に浸透させることで、社会をあらゆる面で根本的に変革することを意味する。単純な効率化ではなく、暮らしや産業の従来型パターンを根底から変革するということが、重要なポイントだ。

コネクト2021に足を運んで、同社は「コロナ禍」を単なる「厄災」とは考えていないと強く感じた。まずDXを、古代から現代に至るまでの人類の歴史における大きな変革の一つと位置付ける。その上で、「コロナ」はDXを一気に加速したと見なしている。

コネクト2021での説明によると、新型コロナウイルス感染症の影響で、世界のデジタル化が一気に7年分前倒しされたとの調査結果がある。アジア太平洋地域では影響がさらに大きく、10年分の前倒し効果があったという。例えばコロナ発生前には多くの人が「未来のこと」と考えていたテレワークなども、すっかり「日常茶飯事」になった。

会場ではさまざまなセミナーが催されたが、講師を務めた一人である慶応大学の中村修教授も「コロナが後押し」と指摘。技術者は相当以前からテレワークの実現などに言及していたが、それほど注目されなかった。しかしコロナがきっかけで一気に普及した。そして5Gなどの技術について、「こんなこともしたい。できないか?」といったユーザーからの要望が旺盛になったという。

■DXは経済効率を向上、ただし取り組まねばならないことがある

ファーウェイ・ジャパンの陳浩社長は、「通信ネットワークの『価値』は接続されているシステムの数の2乗に比例する」というメトカーフの法則などを引き合いに出し、DXが経済効率を向上させると改めて強調した。企業などとしては自社の競争力を向上させるためにも、コロナが劇的に加速させたDXの流れに、さらに本腰を入れて取り組むことが「喫緊の課題」という。

ファーウェイ・ジャパンの陳浩社長

DXの加速に伴って、コンピューティングや通信の総量が劇的に増加するのは必然だ。そのことに対応するためには、関連するインフラの大幅な変革が必須だ。ファーウェイによると、例えばDXに伴う光ファイバー利用の爆発的な増加を念頭に、開発を進めて来た。

光ファイバーの重要性が増す理由は、通信量の激増だけではない。現在は一般的に使われているLANケーブルによる伝送距離は最大で100メートル程度だ。会社内でも工場内でも、DXの一環として通信を多用することになる。情報の伝送距離は劇的に増大する。施設内が通信ケーブルの「超タコ足状態」にするのは、どう考えても「スマート」な解決法ではない。光ファイバーならばキロメートル単位の送信が可能であり、配線をすっきりさせることができる。ファーウェイはさらに、電源供給も可能な光・電気ハイブリッドケーブルも独自に開発したという。

問題はまだある。光ファイバーを全面導入したとしても、「接続箇所」はどうしても増える。解決のために開発されたのが、光ファイバー1000本分以上を用紙A4大のナノポリマーフィルムにプリントする技術だ。接続に際してのコストやスペース、エネルギーを大幅に削減することが可能という。また、関連機器の所定の場所にフィルムを挿入すれば接続が完了するので、手仕事に頼る作業が大幅に簡素化される。かつては個別のトランジスターなどをはんだ付けして回路を作っていた時代があった。そんな状況にプリント基板が登場したことによく似た大きな飛躍だ。

■DXが描き実現する「脱酸素化」への道のり

ファーウェイがもう一つ注力していることに「脱炭素」への取り組みがある。陳社長は、「世界のカーボンニュートラルのペースは加速している」と指摘し、子々孫々のことを考えても喜ばしいとした上で、「その鍵は新エネルギー主体の電力システムを構築し、伝統的なエネルギーについてのデジタル化を加速させること」との考えを示した。

デジタル技術による「省エネ」として紹介された興味深い事例の一つが、中国の黒竜江省ハルビン市で行われた暖房についての取り組みだ。中国では北部を中心に、比較的大型のボイラーで発生させた熱を地域や職域に配分する集中暖房が実施されている。暖房を供給される床面積は130億平方メートルに達するが、これまでは無人の部屋などにも熱を供給するなどで、無駄が多かった。しかしハルビン市内でデジタル技術を応用して、無人の部屋への暖房をストップさせたところ、二酸化炭素の排出を12.1%削減できたという。

交通についても、例えば車の通行量によって表示を調整するインテリジェンス信号の導入により交差点などの通行状況を最適化することで、エネルギー消費を低減させることができる。その他にも農業など、さまざまな分野でデジタル技術を利用することで大幅な省エネが可能という。

なお、前出の中村教授は、「自動車目線」ではなく「道路目線」の交通関連のDXを紹介した。自動車に取り付けた装置が個別に信号を“視認”するのではなく、道路状況によって信号の表示を決定し、同時に自動車に信号を伝える方式だ。ちなみに、歩行者や自転車に乗る人が持つスマートフォンからの情報を道路側が認識して自動車に伝えることで、飛び出しなどによる事故を防止することも期待できるという。

■IT業界自身も変革する、キーワードの一つは「モジュール」

IT業界自身にも、省エネの波は押し寄せている。基本的な考えは、「1ビット当たりのエネルギー消費を減らすこと」だ。

例えば、情報の取り扱いが劇的に増えることが確実なデータセンターだ。ファーウェイによると、ハードディスクを撤廃して記憶媒体をオール・フラッシュ化し、さらにモジュラー化することにより、コストダウン・信頼性の向上・省エネを実現したデータセンターのモデルを構築した。さらにはデータセンターの宿命とも言える発熱対策についても、自然換気と水の蒸散熱を利用した冷却をコンプレッサー使用の冷却装置と組み合わせ、温度状況に応じて最適な冷却方式を自動的に選択して運転コストとエネルギー消費を低減させるシステムを作り上げた。

「新エネルギー主体の電力システム」についてファーウェイは、「スマート太陽光発電」の分野に力を入れている。2020年9月には青海省における世界最大の単一太陽光発電所の建設を支援し、送電網への接続に成功した。2021年10月にはサウジアラビアに建設される太陽光発電所に付設される世界最大の1300メガワット時のバッテリー貯蔵システムについての契約を結んだ。

ファーウェイによると、同社の蓄電施設の特徴の一つは、使用ユニットがモジュール化されており、施設としてセ氏マイナス40度から60度までと、極めて過酷な環境にも耐えられることだ。

この「モジュール化」は、データセンターについても登場したキーワードの一つだった。光ファイバー接続についてのフィルム方式の導入も「モジュール化」の一種と考えてよい。「モジュール化」は「汎用化」にも通じる。DXが進行すれば必然的に、生活や経済活動の場に、高度に進化した機器が大量に出現することになる。さまざまな機器をさまざまな環境で使えるように「汎用化」すれば製造コスト、ひいては導入コストなどが低減し、使い勝手もよくなる。「モジュール化」や「汎用化」は、DXにおいて目指すべき方向性の一つと考えられる。

■「一瞬も止められないシステム」だけに強く求められる信頼性

最後に、展示場で自社製品を説明する多くのファーウェイ・ジャパン関係者が、自社製品について異口同音に「信頼性」を強調したことにも触れておきたい。欧米系の高性能コンピューター製造会社での勤務経験があるという技術者を含めて複数のスタッフが、欧米企業は出荷の際に製品のサンプル検査をするだけなのに対し、自社ではすべての製品をテストしてから出荷すると説明した。

東京都内で開催されたファーウェイ・コネクト2021

DXが加速する世界にあっては、DXをより早く、よりよく実現した国や企業が新たな競争力を獲得することになる。そして、そのためのハードやソリューションを提供する企業にとっては、極めて大きなビジネスチャンスが出現したことになる。そしてDXとは、生活や経済活動にとってデジタル技術がこれまで以上に欠かせない存在になることを意味する。各種のシステムは「一瞬たりとも止まってはならない」宿命を持つ。提供側の企業にとって、性能や価格だけでなく、「信頼性」がこれまで以上に強く求められることになることも、必然の流れだ。

今回のコネクト2021では「目からうろこ」と言いたくなる事例を多く知ることができた。これから何度も、新たな技術の出現に驚嘆することはあるだろう。今、こうしているこの瞬間にも、これまではだれも想像していなかった技術が開発されつつあるはずだ。

DXが目指すものとはそもそも、経済面でより繫栄し人にとっても地球環境にとってもやさしい世の中だ。すべてが効率化し、多くの分野で最適自動化が実現する。そして人は、人にしかできないことに、より専念できるようになる。コロナ禍でDXが加速されたことで、そんな世の中がより早く実現すると信じたい。(取材・構成/如月隼人

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