Record China 2021年11月7日(日) 10時10分
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中国の書店で今、とにかく売れているのがファーウェイの関連本だ。かつては松下幸之助氏や稲盛和夫氏が「経営の神様」とされたが、今ではファーウェイ創業者の任正非CEO「一辺倒」の状態だ。
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■「とにかくファーウェイという企業を知りたい」…中国で熱い視線
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中国でも、空港や大きな駅には書店がある。そんな書店で今、とにかく売れているのは華為技術(ファーウェイ)の関連本だ。かつては日本の松下幸之助氏や稲盛和夫氏が「経営の神様」とされたが、今ではファーウェイ創業者である任正非CEO「一辺倒」の状態だ。
中国の老舗出版社の一つである三聯書店で編集者を務める曾誠氏によると、同社は「ファーウェイ本」専属の編集者を配しており、2016年からはほぼ毎年、関連書籍を出版している。どの本も刷り数が数十万冊以上であり、電子メディアが勃興した現在としては素晴らしい売り上げという。
■改革開放が始まって、日本人の「経営の神様」が相次いで出現
中国で改革開放が始まったのは1978年だった。最初に「経営の神様」とされたのは、パナソニックの創業者・松下幸之助氏だった。戦争で壊滅状態になった日本を世界屈指の経済国に押し上げた立役者の一人として、中国の個人経営者などの熱い視線を集めた。
2001年の世界貿易機関(WTO)加盟は中国経済にとって画期的だった。波に乗って巨大化する中国企業も出現した。しかし大企業の管理法については暗中模索だった。そんな中で注目されることになったのは、京セラなどを立ち上げ、日本航空の再建にも成功した稲森和夫氏だった。
メディアは、稲盛氏を紹介する記事を次々に掲載した。稲森氏が説く「利他」の精神に、「会社を飛躍させるために必要な理念だ」と共鳴する中国人経営者も多かった。
稲盛氏の「哲学」を若い経営者に伝えるために発足した「盛和塾」は、2017年ごろには塾生数が1万人以上だったが、3分の1程度に相当する約3600人が中国人だったという。
■「中国国産の経営の神様」になったファーウェイ・任正非氏
一方で、巨大化に成功する中国企業が出現する状況にあっては“国産の経営の神様”の出現も必然だった。注目を集めることになったのは、ファーウェイ創業者である任正非CEO(最高経営責任者)だ。
任氏やファーウェイを読み説く専門家に楊愛国氏がいる。大手中国企業での勤務経験も豊富で、2012年には本格的なファーウェイ研究を始めた。2015年には任氏とファーウェイを研究する「藍血研究」という組織を立ち上げた。
楊愛国氏は、任氏が注目された理由の一つに、「徒手空拳の創業者」だったことが共感されたことがあると指摘した。任氏は軍を除隊して会社に就職したが、だまされて会社に損失を出したことで辞職に追い込まれた。自らの事業を立ち上げたのは1987年で、すでに40代だった。そして、資金が乏しい中で設立した会社を、世界有数の大企業にまで成長させた。
■「愛国感情」がファーウェイ支持を後押し、ただしそれだけではない
ファーウェイは成長を遂げたが、米国は安全保障などを持ち出して同社に対する取引禁止などの措置を強化していった。そして任氏の娘でありファーウェイの最高財務責任者(CFO)を務める孟晩舟氏は2018年12月に、「対イラン経済制裁に違反して金融機関を不正操作した容疑がある」との理由で、米国の要請によりカナダで逮捕され、その後も軟禁状態が続いた。
しかしファーウェイは成長を続けた。例えば2000年のフォーチューンのグローバル500では前年は72位だった順位を大幅に上昇させて、過去最高の49位になった。
ファーウェイ・ジャパンによると、米国による制裁が本格化した3年前には18万人程度だった従業員を19万7000人にまで増やした。研究開発のための人材を補充したことが最大の要因で、開発要員は全従業員の53.4%に達した。ファーウェイは会社が厳しい状況にあっても、技術力を向上させてこそ会社の未来があると判断した。
米国による圧力が長期化しても「へこたれない」として、多くの中国人がファーウェイに喝采した。孟氏は結局、約3年後の2021年9月24日に自由を回復した。帰国の様子はテレビやインターネットで同時中継された。中国中央広播電視総台(CMG)の慎海雄台長(局長)によると計4億人が視聴し、CMGの各プラットフォームに寄せられた「いいね」も4億に達した。
中国における任氏やファーウェイに対する称賛や支持の背景に米国への対抗心、あるいは「愛国心」が存在することは間違いない。しかし、それだけではない。会社が進んで来た道そのものが「学ぶべき点が実に多い」と評価されているのだ。
■研究開発費はグーグル、マイクロソフトに次ぐ世界第3位
楊愛国氏はファーウェイの発展について、1990年ごろから技術が急発展した通信産業を手掛けたことは大きな要因と指摘する。楊氏によれば、任氏は、かつては外国の先進的企業が「案内人」だったと発言したことがある。その上で、今ではファーウェイが「案内人」の立場になったと述べたという。
楊愛国氏は、ファーウェイが過去10年間に投じた研究開発費は7200億元に達したと指摘した。現在の為替レートでは約12兆8300億円の計算だ。研究開発に投じる資金はサムスンやアップルを抜いた。楊氏はファーウェイを、今やグーグルを傘下に置くアルファベットやマイクロソフトに次いで研究開発に多額を投じる「世界三大企業」の一つと表現した。
楊愛国氏は、任氏の戦略的視点にも注目している。例えばファーウェイが「前途洋々」であるように見えた2001年に「ファーウェイの冬」と題する文章を発表し、自社が抱える問題や将来について強い危機感を示し、その打開策を分析してみせた。その時期に着手したチップや独自OSの開発が、現在では米国による圧迫を緩和する助けになっているという。
例えば同社が開発したハーモニーOSの場合、ファーウェイが力を入れているIoTあるいはデジタル・トランスフォーメーション(DX)関連の事業でも重要な役割りを果たしている。ファーウェイが6月2日にリリースしたハーモニーOS2は、10月23日時点でユーザー数が1億5000万人に達した。
任氏は会社幹部を育成する点でも、ぬかりがなかった。楊愛国氏は(登用に当たっての)「標準」、「プロセス」、「評価」、「激励」の方式を確立し、報酬や業績考課、さらに社員持ち株制についての権利授与などで合理的な方式を導入と指摘した。
その結果、ファーウェイでは強い使命感を持つ管理層が形成され、能力が高く実戦力にあふれた幹部人材が輩出しているという。
任氏は、ファーウェイの変革について、「1人あるいは数人の影響力に依存しなくなった時が、真に変革した時だ」と述べている。楊愛国氏は、任氏のこの言葉は現在、基本的に達成されたと評価した。
■外国人経営者が「中国式経営術」に学ぶ可能性も増大中
任氏そしてファーウェイは、どんな状況にあっても技術開発に尽力して製品の質を向上させ、西側企業風の厳格な企業管理を導入した上で、中国人従業員が納得する方式に練り上げてきた。さらに「ブレない」点も重要だ。ファーウェイ・ジャパンの関係者によると、同社が社員持ち株制を採用し、株式上場していないことが、経営方針の持続性につながっているという。
そんな任氏の経営論にまっさきに飛びついたのが、中国の企業人だ。と言うことであれば、個人の能力だけに頼らずに発展を続ける「第二のファーウェイ」が中国で出現する可能性も高い。
遠くない将来に日本をはじめとする西側の経済人が「任正非流経営法」あるいは「ファーウェイ式経営法」、さらには「中国式経営法」を競って学ぶ状況が出現する。そんな予想も不自然ではなくなってきた。(取材:佐藤大輔 その他 / 構成:鈴木秀明)
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