高野悠介 2021年11月10日(水) 18時50分
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10月末に京東がアリババ、テンセントに次ぎNFTへ参入すると伝えられた。NFTは何をもたらすのだろうか。資料写真。
最近発表された日経トレンディの2022年ヒット商品予想の3位に「NFTトレカ/アート」が入っていた。中国メディアでもNFTの話題は頻出していて、2021年はNFT元年とする見出しもある。10月末には、京東がアリババ、テンセントに次ぎNFTへ参入すると伝えられた。NFTは何をもたらすのだろうか。
NFT(Non-Fungible Token)は非代替性トークンと訳出される。改ざんの難しいブロックチェーン技術を使い、どこまでもコピー&ペースト可能なデジタル作品に唯一の本物の保証を与える。主にアート、ゲーム、音楽などをデジタル作品として登録し、NFTに変換する。購入者には、所有権を保証する。
10月末、アリババやテンセントのNFT関連サイトからNFT表記が消え、「数字蔵品」に変わった。報道によれば、アント・フィナンシャルはこれに関し、次のように表明した。「われわれは一切の数字蔵品の誇大広告や違法行為に反対し、合理的な価格形成に務める。」社会実装へ向け、ギアを上げたのだ。
■中国のブロックチェーン技術…社会実装で先行
中国政府のブロックチェーン技術へのスタンスは明確だ。暗号通貨は、取り引き、取引所開設、マイニングなど、国内での活動を全面禁止し、さら地にデジタル人民元を導入したい。ただし研究は奨励している。実際、全国28都市44カ所に「ブロックチェーン産業園」がある。
2020年4月には、国家信息中心や中国移動、銀聯カードなどが主体となって、ブロックチェーンのネットインフラBSN(Block-chain-based Service Network)の運用を始めた。これによって中小企業がLANを構築する費用は劇的に下がるという。
ブロックチェーン関連企業数は2020年に2万社を超えた。そのうち6000社はブロックチェーン関連の特許を所持している。アリババ、テンセントの2大巨頭も積極的に参画している。
すでに金融、貿易、医療、電子署名、教育、食品トレーサビリティ、慈善事業などの各分野で社会実装が進んでいる、中国はブロックチェーン先進国である。NFTはこうした中国ブロックチェーン時代をさらに革新するものと期待されている。
■アリババ…螞蟻鏈粉絲粒
アリババは他社に先行した。2021年3月下旬、サッカー欧州選手権のNFTを配布した。ロナウドやベンゼマなどのゴールを即座にNFT化した。また、1600人のユーザーに「デジタル得点王」トロフィーをプレゼントした。本物の証明書付きだが、売買することのできない、宣伝目的の試供品だ。
6月、支付宝と敦煌美術研究所は2つのNFT作品「敦煌飛天」「九色鹿」を数量限定で発売した。ユーザーは支付宝アプリ内の「螞蟻鏈粉絲粒」を通じて購入する。また、5月20日からのアリババオークション週間でも、有名作家の芸術作品を「螞蟻鏈粉絲粒」を通じて販売した。
さらに螞蟻鏈は10月末、紫禁城の瑠璃(ガラス)系の収蔵品をNFTの数量限定で販売した。4種類、1種類当たり8000枚だ。これ以外にも双11(11月11日独身の日セール)用に「数字蔵品‐宝蔵計画001期」を準備している。ここで多くのNFT作品が提供される予定だ。
■テンセント…幻核App
テンセントはアリババを追いかけている。2021年8月、自社NFT取引プラットフォーム「幻核App」をスタートした。ダウンロードして、コミュニティに参加、NFT作品を購入できる。最初に音声付きの「十三邀」という作品を数量限定で発売したが、すぐに完売した。しかしこれは、自由に売買できる体制ではなく、本物証明のスタンプラリーに近い。
その後、子会社テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME)は有名歌手アンソン・フー(胡彦斌)の20周年記念盤NFTを発売した。これは国内最初のNFT音楽作品となった。続いて同じく有名歌手ジャン・チュウ(張楚)の創作場面や映像作品、また中国の少数民族を紹介する「万華鏡デジタル民族図鑑」をリリースした。
また関係者によれば、TMEは新たにNFT暗号アートのプラットフォーム「TMEデジタルコレクション」を立ち上げるという。
■京東…JD Chain
京東は子会社「京東科技」を通じてNFTに乗り出した。2021年10月末から11月末まで、京東の年次大会の期間中、記念NFT限定版を大会参加者へ無料配布する。京東JOY(犬のキャラクター)をフィーチャーした7種である。1人招待するごとに1種手に入る仕組みだ。発行終了後は、公開鍵と秘密鍵を用いて所有権の確認、転移が可能になる。
今回は、独自のブロックチェーンプラットフォーム「JD Chain」を通して実施されるが、近い将来「NFT技術サービスプラットフォーム」を構築する予定だ。これによってNFTコレクションの保存、権利の確認、流通、トレーサビリティを保証する。
■当局…規制強化を模索
規制当局は、NFT発行企業、取引プラットフォーム企業に対する聞き取り調査に入った。調査対象にはテンセントも入っている。しかし各社はまだ試作段階であり、影響は限定的とみられている。規制側もまだ何をすべきか探る段階だろう。中国語表記の変更も規制への対応なのかもしれない。
12月末、支付宝が6月に販売した作品の転売が可能となる。その時にどのような情景が現出するのか。ここでの市場形成がターニングポイントになるとみられ、関係者は期待を込めて見守っている。日本のように取引主体は暗号資産業者ではなく、中国はIT巨頭になる。市場形成以降の発展は早そうだ。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
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