<55兆円経済対策>米欧中の成長戦略に比べ見劣り、バラマキ色強く―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年11月21日(日) 7時20分

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岸田政権が新たな経済対策を策定したが、経済成長に繋がる戦略は全体の2割程度にとどまるという。無駄を削減しつつ、環境・デジタルなど成長分野に集中する戦略が必要と思う。

岸田政権が新たな経済対策を策定した。幅広い世帯への現金給付や旅行・飲食補助などを盛り込み、財政支出で55億7千万円、事業規模で約79兆円に膨らんだ。昨年12月にまとめた追加経済対策(約40兆円)を大きく上回る。規模が膨んだ一因は、自民、公明の与党が衆院選で公約した各種現金給付が、ほぼそのまま盛り込まれたことだ。目玉とされる「18歳以下の子どもを対象にした10万円相当の給付」もバラマキ政策の典型ではないだろうか。

経済成長に繋がる戦略は全体の2割程度にとどまるという。新型コロナウイルス禍収束後の競争に向け、米欧や中国では再生可能エネルギーのインフラ整備など複数年の投資計画を策定している。日本も無駄を削減しつつ、環境・デジタルなど成長分野に集中する戦略が必要と思う。

岸田首相の看板政策である「新しい資本主義」にも、全体の4割にあたる約20兆円を充てられる。その中身は脱炭素への投資やデジタル化、大学ファンドの拡充など、これまでの政権から引き継いだ政策が大半で、「新しさ」はあまりうかがえない。国土強靱化や防衛力の強化などの「安全・安心の確保」にも5兆円弱をつぎ込む。今回まとめられた経済対策は、政策に優先順位をつけず、各分野の族議員が求めた政策を寄せ集めたとも報じられているが、実施に当たってはメリハリをつけるべきだろう。

長引くコロナ禍を背景に財政状況は急速に悪化している。ところが財源を捻出するために、既存の予算を見直したり、余裕のある人や企業に増税したりする議論がほとんどなかったことは残念である。無限に借金できると考えるかのような野放図な財政は先行き行き詰まる懸念があり、財政規律の形骸化を放置してはならない。財源を確保しつつ、成長と分配を車の両輪として進めるべきだと思う。

原油価格の上昇、米中対立を背景とした物流ボトルネックに端を発した物価上昇など、コストプッシュ型のインフレ懸念が世界各地でくすぶり始めている。スタフグレーション(景気後退と物価高)のリスクにも目配りが必要だ。

先の総選挙時に与野党が財政を拡大する公約を掲げて競い合い、これを財務次官が「バラマキ合戦」と批判した。しかし、財政規律という古い概念に立った議論である、などとして封殺された形になり、財政政策をめぐる十分な論争には発展しなかった。残念なことである。

<直言篇182>

■筆者プロフィール:立石信雄 1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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