京の師走の風物詩「顔見世興行」本格開催を喜ぶ=内外観光客復活に期待―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年11月28日(日) 7時10分

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歌舞伎公演「吉例顔見世興行」が12月2~23日に、日本最古の劇場・南座で本格開催される。この興行を前に歌舞伎俳優の名が書かれた看板を劇場正面に掲げる「まねき上げ」が行われ、テレビなどで報じられた。

古都に年の瀬の訪れを告げる歌舞伎公演「吉例顔見世興行」が12月2~23日(7、15日休演)に、日本最古の劇場・南座で本格開催される。この興行を前に出演する歌舞伎俳優の名が書かれた看板を劇場正面に掲げる「まねき上げ」が行われ、テレビニュースなどで報じられた。

まねき上げは京都に師走の到来を告げる風物詩として親しまれている。「まねき看板」は、縦約180センチ、横約30センチのヒノキ製。大入りの縁起を担ぎ、太く丸みを帯びた文字「勘亭(かんてい)流」で東西の人気役者の名が書かれている。南座正面には足場が組まれ、深夜に取り付け作業がスタート、翌朝に最後の1枚となる人間国宝・片岡仁左衛門さんの看板が掲げられた。計54枚の看板が揃い、清めの塩が撒かれた。

今年の顔見世興行は2020年11月に亡くなった人間国宝・坂田藤十郎さんの「三回忌追善」と銘打ち、藤十郎さんの代表作だった「曽根崎心中」などが上演される。こうした伝統行事が残っているのは伝統を大切にする京都らしい。

京都で育った私は、京の町並みや風情に温かさを感じる。近代的な建物が増えたが、超高層ビルはほとんどない。山の緑や川面のせせらぎの中、広がる瓦屋根の民家の風景に、やすらぎを憶える。京都はお寺が多い。そのためか四季を愛でることがたやすくできる。

1月は初詣、2月は節分、天神の梅花祭、3月は涅槃会、4月は都をどり、5月は葵祭、7月は祇園祭、8月は大文字、10月は時代祭、12月は顔見世で始まり、最後は大晦日(31日)のお寺参りで新しい年を迎える。まさに文化の凝縮した町なのである。

ところが、新型コロナウイルスが蔓延した昨年以来、伝統的な行事が中止や縮小を余儀なくされたのは残念なことだった。新型コロナウイルスは疫病の一種。長い歴史に中で京都は多くの流行病に脅かされてきた。7月の祇園祭は平安時代の869年に疫病退散を祈った祇園御霊会が起源とされる。京都三大祭りの一つで、ハイライトとなる山鉾巡行には例年多くの観光客が訪れるが、2年連続で中止された。

通常なら一段と華やかさを増すのが師走の12月。その最大行事が、わが国最古の劇場・南座で行われる「吉例顔見世興行」。筆者も毎年のように出かけていた。こうした中、京の師走の風物詩「顔見世興行」が関係者の努力で全面開催されるのはうれしい出来事である。

有数の観光地を抱える京都には通常毎年8500万人前後の観光客が訪れ、日本人を含む観光客が市内で支払った宿泊代や飲食費などの「観光消費額」は2018年には約1兆3000億円以上に達した。コロナ禍で訪日客や県外客は激減し、ホテル旅館や土産、飲食店は大きなダメージに見舞われている。

来年はコロナ禍が収束し、激減した内外の観光客が戻ることを切望したい。四季折々におりなす文化をいつまでも抱擁する京都であってほしいものである。

<羅針盤篇62>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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