〈私が見た新疆ウイグル自治区5〉新疆の民族構成は?

小島康誉    2021年12月4日(土) 16時20分

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新疆・伽師での「訪恵聚」プロジェクトに微力協力し街路灯設置や幼稚園修繕を終えてウイグル族の子供たちと。筆者左は新疆日報社党書記の許新江氏(撮影:楊新才氏)

新疆ウイグル自治区に関する報道が度々流れている。新疆を訪問したこともなく、その研究者でもない方々も各種発信されている。そこで、新疆に関する基本情報を150回以上訪問した者として、細やかな体験を交えつつお伝えしている。10回連載の第5回は民族構成。

中国は多民族国家。漢族が最も多く91.51%をしめ、他の55民族が8.49%(「百度」)。総称して中華民族とされている。新疆ウイグル自治区2585万人(2020年第7次全国人口調査)中、ウイグル族が44.96%、漢族が42.24%、その他が12.80%(『人民中国』21年8月号)。その他はカザフ族・モンゴル族・回族・キルギス族・満州族・シボ族・タジク族・ダフール族・ウズベク族・タタール族・ロシア族などで、漢・ウイグル合わせて計47民族が居住している。極少であるが、政府により認定されていない民族もあると聞く。

「何故、これほど民族数が多いのか」と疑問を持たれるであろう。所在する位置に関係している。新疆ウイグル自治区は中国の最西部であると同時に、中央アジアの中央に位置している。古来より「西域」と呼ばれ交通の要衝として東西南北の文明文化が行き交った。前2世紀頃から現在に至るまで、文化・経済・宗教・政治など多方面で影響を与え合った。

一例をあげれば、6世紀中葉に日本へ伝わった仏教もこの道を通ったのであり、9世紀中葉にウイグル族もこの道で新疆へ入ったのであり、中華民国時代の新疆などを舞台に不凍港を求め南下戦略をとったロシア帝国と勢力拡大のため英領インド帝国から北上戦略をとった大英帝国が繰り広げた「グレートゲーム」であり、その名残が新疆タシュクルガンタジク自治県と国境を接するアフガニスタン・ワハン回廊である。日本の大谷探検隊など独・露・英・仏・米などの探検隊も「グレートゲーム」と切り離せない。

これらの交易路を19世紀末にドイツの地理学者リヒトホーフェンが「シルクロード」と称した。国道1号線のような1本の道でなく、複数の道の概念である。習近平国家主席は2013年「シルクロード経済帯」「21世紀海上シルクロード」を提唱した。合わせて「一帯一路」である。2014年には新疆のキジル千仏洞など6遺跡も構成資産とする「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」が世界文化遺産となった。中国・カザフスタン・キルギスの共同申請であり、シルクロ-ドの広範さを示している。

このように幾多の文明文化を運んだのは東西南北の諸民族であり、結果として新疆は多民族となった。上記以外の少数民族はトンシャン族・サラ族・パオヤン族・チワン族・チベット族・ミャオ族・チー族・朝鮮族などである。ちなみに日中共同ニヤ遺跡学術調査・日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査では中国側隊員として漢・ウイグル・キルギス・回・シボ族などが参加した。

■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
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