技能実習生は日本の産業を支える存在=外国人と真の共生を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年12月12日(日) 7時20分

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コロナ禍をきっかけに技能実習生が日本の産業を支える存在であることが再認識された。実習生を単なる「助っ人労働者」として見ていては、誰も日本に来なくなる。外国人との真の共生を考える時期に来たと思う。

コロナ禍をきっかけに技能実習生が日本の産業を支える存在であることが再認識されたようだ。実習生を単なる「助っ人労働者」「雇用の調整弁」として見なしていては、誰も日本に来なくなってしまう。外国人とどう共生していくのか考え直す時期に来ている。

外国人の新規入国が11月末から再び原則禁止となり、海外から技能実習生が来られなくなっている。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」に対する政府の水際対策で、禁止期間は「当面1カ月」。実習生の受け入れ先は「長期化すれば厳しい」と懸念しているという。

出入国在留管理庁によると、「技能実習」の在留資格で日本にいる人は年々増えていたが、コロナ禍で減少に転じた。20年末時点で37万8200人。前年同期から8%減少した。21年6月末時点ではさらに減り、35万4104人になっている。

実習候補生の多くは母国での仕事を辞め渡航に備えて待機している状態で、「いつ行けるのか分からない」と不安視する候補生も多いという。辞退者も出ており、このままではじり貧になると懸念されている。実習先は製造業や建築業、農業とさまざまで、「職種によっては実習生に頼らざるを得ない状況で、人手不足は深刻だ」と長引く影響を懸念する。

こうした中、政府が外国人の在留資格「特定技能」について、長期就労や家族の帯同ができる業種を広げることを検討している。人口減が進む中外国人材を生かす政策は必須だが、受け入れ体制は十分とは言えない。安心して働き、生活できる環境づくりを急ぐべきである。

人手不足の業種が多く、経験を積んだ人が長く働けることは労使双方にメリットがあると考えるが、外国人労働者の不安や不満をなくす努力が求められる。これまで技能実習制度で問題になってきた違法な長時間労働や賃金不払いなどは厳しく取り締まるべきだ。雇用主は不当な処遇が人権侵害になりうることを自覚する必要があろう。

厚生労働省によると、特定技能の資格者の賃金は2020年6月時点で月額17万4600円。技能実習より1割弱高いものの外国人労働者全体に比べると約2割低い。日本人と同様に研修の機会を提供し、スキル向上に応じて賃金を上げるべきである。

家族への支援も重要だ。日本語教師が不足しており、公的な資格を整備し人材を育てることが急務。文部科学省の19年調査によると、不就学の外国人の子どもが約2万人いる可能性がある。

今は新型コロナウイルス禍で海外からの受け入れが難しいが、官民が連携して将来に繋がる抜本策を遂行してほしい。

<直言篇184>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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