レトロな太陽熱給湯・暖房、再評価を!=原油価格高騰の今こそ―効率は太陽光発電の2倍超

長田浩一    2022年1月19日(水) 7時20分

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原油価格高騰の影響で、ガソリンや灯油などの石油製品が高止まりしている。効率的で安全、地球にやさしいレトロな太陽熱給湯・暖房を見直すべきである。

原油価格高騰の影響で、ガソリンや灯油などの石油製品が高止まりしている。12月中旬時点で、東京郊外の筆者の自宅周辺では灯油が18リットル2180円程度で販売されており、妻は「去年は1800円くらいだったのに」とこぼしていた。電気・ガス料金のさらなる値上げも予定されており、コロナ禍で苦しむ家計をさらに圧迫しそうだ。

日本はじめ各国が備蓄原油の取り崩しに動くなど、消費国側は事態の打開に躍起になっている。しかし、コロナ後の経済活動活発化をにらんだ需要増が値上がりの背景にあるほか、石油輸出国機構(OPEC)など産油国側は増産に慎重姿勢を続けており、早期の値下がりは期待しにくい状況だ。

◆効率的で安全、地球にやさしい

一方で石油製品の値上がりは、他のエネルギーの競争力を相対的にアップさせるという側面を持つ。地球温暖化対策の一環として二酸化炭素(CO2)の発生を抑制するため、再生可能エネルギーの利用拡大を目指す観点からは、絶好のチャンスという見方もできる。

再生可能エネルギーといえば、多くの人が思い浮かべるのは太陽光発電や風力発電ではないか。もちろんそれらの利用拡大に異論はないが、同時に筆者は太陽熱を利用した給湯・暖房システムを見直すよう提唱したい。古臭い時代遅れの技術と思われがちの同システムだが、日本にとって(そして恐らくは中国、韓国など温帯に位置する他のアジア諸国にとっても)効率的で安全、かつ地球にやさしいエネルギーの利用方法と考えるからだ。

◆家庭のエネ需要、給湯・暖房で54% 

改めて説明する必要もないかもしれないが、太陽熱給湯・暖房システムは、住宅の屋根などに設置したタンクなどの集熱装置で水や空気を温め、それを給湯や暖房に利用するもので、太陽熱温水器が代表的存在だ。

このシステムのどこが優れているのか。真っ先に挙げられるのが効率性の高さ。業界団体のソーラーシステム振興協会によると、太陽光発電では集めたエネルギーの15~20%しか活用できないが、太陽熱温水器では40~60%を利用できる。装置の設置費用も太陽光発電に比べ安い。確立した技術であり、安全性も高い。一度設置すればCO2をほとんど放出せずに太陽の恵みを享受できるという究極の省エネ機器といえる。

もう一つ強調したいのは、このシステムが家庭のエネルギー需要にフィットしている点だ。日本エネルギー経済研究所によると、家庭で使うエネルギーの用途別使用量は、給湯が27.7%、暖房が26.7%、冷房が3.2%、キッチン関係が9.0%、その他が33.4%となっている(2018年度実績)。同システムがもっとも威力を発揮する熱需要(給湯と暖房)で54%を占めているのだ。活用しない手はない、と考えるのは私だけだろうか。

◆政策的支援の充実を

ところが、現実は逆方向に動いている。2021年8月3、4日付朝日新聞によると、1980年ごろには年間80万台も売れた太陽熱温水器が、最近は1万台ほどだという。メーカーの幹部は同紙に対し「高い省エネ性能が忘れ去られている。…手厚い政策的支援がある(発電用の)太陽光パネルとは勝負にならない」とコメント。屋根にタンクを置くのは恰好が悪いといった理由で使える装置を撤去する人もいるほか、レトロな技術であるため成長戦略として見栄えが悪く、政治家や役所の反応が鈍いとの指摘もあるという。オール電化が最先端のライフスタイルともてはやされる近年の風潮も影響しているのかもしれない。

しかしもう一度考えてほしい。電気は確かに便利で高品質な万能エネルギーだが、その分手間とコストのかかるぜいたく品でもある。原子力・火力発電では、放射性廃棄物やCO2などのやっかいな副産物も生み出す。大事な電気は、ほかのエネルギーで代替できない用途で使用するのが賢いやり方で、熱需要を満たすために使うのはもったいない。ここは有害物質の排出なしに効率的にお湯を沸かしたり、部屋を暖めたりできる太陽熱の出番だ。

潮流を逆転させるためのヒントは、先のメーカー幹部の発言に隠されている。太陽熱給湯・暖房システムを設置する際の政策的支援を、太陽光パネル並みに充実させればいい。そのためには、同システムの利用拡大が、環境面でも経済面でもプラスが大きく、しかも確立された技術なのでリスクがほとんどない点を多くの国民に理解してもらう必要がある。日本社会が電気依存の傾向をますます強めている中、決して簡単な課題ではないが、関係する皆さんが地道にアピールを続けるよう期待したい。

■筆者プロフィール:長田浩一

1979年時事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任。現在は文章を寄稿したり、地元自治体の市民大学で講師を務めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中国との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外国の地は北京空港でした。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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