2022年も大注目のバイトダンス、TikTokの成長にブレーキ、リストラ進行か?

高野悠介    2022年1月7日(金) 7時50分

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2021年の世界最多アクセスのWebサイトはTikTokだ。

米国のネット関連会社Cloudflareのデータによれば、2021年の世界最多アクセスのWebサイトはTikTokである。GoogleやFacebook、Microsoft、Appleを打ち負かした。

そしてトップ10では唯一の米国外企業でもある。ニューヨーク・タイムズによると、米国の広告主の関心は低迷するケーブルTV広告からTikTok利用のマーケティングへ移っているという。素晴らしい成功である。しかし中国国内ではさまざまな問題が持ち上がっている。

■短視頻…スマホ利用時間の70%

中国インターネット情報センターによると、中国の2021年6月時点のネットユーザー数は10億1100万人で、人口の71.6%に及ぶ。

注目は、抖音(海外名・TikTok)と「快手」に代表される短視頻(ショートビデオ)アプリだ。ユーザー数は8億8000万人に上り、初めてネット通販の8億1200万人を上回った。さらに衝撃的なのは、その利用実態である。

2020年、中国成人の1日当たり平均スマホ利用時間は100.75分だった。そしてその70%以上をショートビデオに費やしている。その他アプリのトータル利用時間は30%にも満たない。TikTokや快手は中国人の時間を圧倒的に支配しているのだ。

しかし11月中旬、バイトダンス国内事業の成長鈍化が伝えられる。証券時報によると、2021年上半期、広告収入の伸びが止まった。これは2013年の事業開始以来、初めての事態である。広告収入は全収入の77%を占める生命線だ。さらに、もう1つの看板事業、ニュースサイト「今日頭条」も損益ギリギリにあるという。バイトダンスはどうなっていくのだろうか。

■事業の調整…積極的なスクラップ&ビルド

5月、抖音を運営するバイトダンス創業者・張一鳴氏はCEOを退き、後任に共同創業者で学友の梁汝波氏を当てると発表した。日常の管理業務から退き、バイトダンスの新戦略探究、研究開発、社会的責任など、より大きな方向性、長期戦略に専念するという。

バイトダンスは、これまでも事業のスクラップ&ビルドを繰り返してきた。スクラップでは、2021年、張一鳴氏の退任前に、有料知識提供プラットフォーム「好好学習」、問答プラットフォーム「悟空問答」、買収した「堅果手機」のスマホ事業などを停止した。また9月末、傘下の不動産プラットフォーム「幸福里」がリストラに入った。同社の新築営業はほとんどの地区が損失を計上、成都重慶蘇州、福州のチームは解散に追い込まれた。11月には、北京の営業チームにも解雇通知を出した。

ビルトでは越境EC「Fanno」、ゲーム「朝夕光年」、ショートビデオ「小趣星」、フードデリバリー「心頭外売」、教育事業「大力教育」、オフィスツール「飛書」、広告投稿ツール「巨量引撃」、技術サービスプラットフォーム「火山引撃」、医学知識普及プラットフォーム「百科名医網」、国内版音楽配信アプリ「汽水音楽」などを新規投入または強化した。

■内部調整…人事、教育部門で減員

11月からは、正式に梁汝波体制に移行すると、内部調整に着手した。話題を集めたのは、人材育成部門「人材発展部」の廃止である。これは職業教育界全体に大きな波紋を投げかけた。「業績低迷により、人員整理の憂き目にあうのは、まず人事・教育部門」「大企業の主流は、頻繁な採用と配置の最適化により、社内人材育成の遅さをカバーすること」などの議論を巻き起こした。

さらに、人事調整に聖域はないというメッセージとしても受け取られた。実際に最高幹部クラスの刷新も行われた。また、当局のIT企業への逆風により、教育、ゲーム関連は縮小モードだ。「大力教育」は“双減”政策(宿題、塾の双方を減らす)を受けて、すでに大幅な減員に入った。当局によるライセンス発行停止の続くゲーム部門も厳しい。今後の見通しを、抖音とグループ全体に分けて考えてみよう。

■抖音…高齢者市場開拓の余地

抖音の今後の注目は高齢者の動向だ。2021年4月における60歳以上のクリエーターの出品したコンテンツは6億に及んだ。100歳のお婆さんクリエーター「蔡●恩(●は俊のにんべんを日へんに)」には700万のファンが、お爺さんクリエーター「済公爺爺游本晶」には1100万のファンがいる。しかし抖音の50歳以上ユーザー比率は8%だ。

ネットユーザーの総数では、50歳以上は28%を占めている。これは1年前に比べ5.2%もアップした。しかし抖音ではまだ8%に過ぎず、20%ものギャップがある。ここに大きな市場開拓余地が残っている。限界にはまだ間がありそうだ。

■グループ戦略…直営から投資へシフト

グループ戦略の今後は、直営でフルラインをまかなうのではなく、投資へのシフトが進むとみられる。2021年には、VR機器の「Pico」、コーヒーの「Manner珈琲」、酒類の「厚雪酒」、広告サービスの「微念」「懶熊火鍋」「鯊魚菲特」、スマートホーム「喵兜兜」など、多彩な企業へ投資した。テンセントグループのように、緩やかな企業連合を目指すのかもしれない。

内部調整が進み、正面からアリババ、テンセントに挑む野心的企業から、普通の事業会社化し、少し大人しくなりそうだ。そうは言っても、現在のバイトダンスは、そのあらゆる動向がニュースバリューを持つ、一時のアリババのような存在である。抖音の世界的影響力は大きく、2022年もIT界の主役を張るのは間違いない。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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