〈私が見た新疆ウイグル自治区10〉新疆と日本との縁は?

小島康誉    2022年1月8日(土) 18時30分

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今年は日中国交正常化50周年。北京冬季オリパラ標語は「一起向未来」(共に未来へ)。日中双方が「相違を認めあい主張しつつ協調しあう」事を切望。写真は北京冬季オリパラ展で挨拶される孔鉉佑大使(撮影:筆者)

2022年は日中国交正常化50周年の喜ばしい年である。1972年9月29日、両国は「共同声明」に署名した。筆者はその直後10月初め香港(当時は英国領)と中国を結ぶ鉄橋を歩いてわたり、着剣した人民解放軍兵士が両側に並ぶ中、中国へ第一歩をしるした。ジュエリー専門店チエーン社長として広州交易会で宝石類を買い付けるためであった。交易会へ参加する日本人諸氏と列車に乗り込むと『毛沢東語録』日本語版が配布され唱和。その延長線上で1982年新疆を訪問。以来、150回以上訪れ多民族諸氏と世界的文化遺産保護研究や各種仲介・博物館建設など多数の活動を実践し、相互理解促進に微力を捧げてきた。

新疆ウイグル自治区に関する報道が度々流れている。中国側と日本や米国など欧米側では大きく異なり、判断に困っておられる方も多いであろう。新疆ウイグル自治区を訪問したこともなく、その研究者でもない方々も各種発信されている。そこで、新疆を長年見てきた者として同自治区に関する基本情報をお伝えしている。10回連載の最終回は日本と新疆ウイグル自治区との縁を思いつくまま記したい。


1972年9月29日、日中国交正常化。筆者はその直後10月初め英領香港(当時)と中国を結ぶ鉄橋を歩いてわたり、中国へ第一歩をしるした。写真は広州交易会開幕式(撮影:堀尾宝氏)

仏教:インドで生まれ主に新疆などを経て、日本に538年(異説あり)伝来した仏教は日本文化に多くの影響を与えてきた。「仏説阿弥陀経」「妙法蓮華経」などを訳出した中国四大訳経家の鳩摩羅什三蔵は新疆クチャ出身である。 正倉院:五弦琵琶は世界で唯一、正倉院に収蔵されているが、クチャ西方のキジル千仏洞(2014年世界文化遺産)壁画に鮮やかに描かれている。同石窟の修復保存には「日中友好キジル千仏洞修復保存協力会」が大きな役割を果たした。 法隆寺壁画:1949年火災で焼損した金堂壁画の画法は「鉄線描」と言われている。その源流は中国と言われてきたが、いくたの戦乱などで失われ、西安などにも残存していなかった。新疆タクラマカン沙漠に残存するダンダンウイリク遺跡で「日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査隊」が2002年発掘した「西域のモナリザ」などの壁画が「鉄線描」の源流実物資料「屈鉄線」壁画と注目されている。

友好都市:西瓜の縁で富山県入善町と新疆ハミ市、葡萄の縁で山梨県甲州市と新疆トルファン市が結んでいる。なお筆者は新疆政府の希望を受けて、佐藤観樹自治大臣・横路孝弘北海道知事へ大臣室で北海道との姉妹提携を要請したが、実現しなかった。 ブドウ・トマト・綿製品:新疆から大量に輸入されていたが、昨今の欧米諸国での報道を受けて減少あるいは中止されているようだ。 大谷探検隊:1902~14年3回実施され新疆各地から多数の文化財を持ち帰り、東京国立博物館・龍谷大学などに収蔵されている。独・英・仏・露・米などの探検隊と競い合った。19世紀末から20世紀初頭にかけ、新疆などを舞台としたロシア帝国と大英帝国の「グレートゲーム」につながる。

テレビ番組:NHK・CCTV共同制作「シルクロード」が1980~81年放送された。神秘につつまれていた新疆などシルクロード各地を12ヵ月にわたって特集し人気を呼んだ。「シルクロード症候群」と言われるほどの社会的現象となった。「ならシルクロード博覧会」も680万人が参観するなど人気を博した。新疆・敦煌・西安・北京・上海など中国各地への観光客が急増した。1991年フジTV系「新シルクロード考・沙漠に降りた飛天たち」、2005年NHK「新シルクロード」、09年テレビ東京系「封印されて三蔵法師の謎」、16年フジTV系「天山を往く-シルクロード物語」、17年にはNHK「シルクロード・壁画の道をゆく」なども放送され人気を呼んだ。一部は筆者が仲介し出演もした。テレビ番組は大きな影響力を持っている。日中国交正常化50周年の2022年、新たな番組を是非!例えば「タクラマカン沙漠一周鉄路2700kmの旅」とか。 

国交正常化以降の50年、日中関係はギクシャクを繰り返してきた。ここ数年も米中対立激化や領土問題などで両国関係は停滞中、いや悪化中である。北京冬季オリンピック・パラリンピックの標語は「一起向未来」(共に未来へ)であり、また国交正常化「共同声明」の前文には「日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず…両国間の国交を正常化し、相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである」とある。これらの精神に沿い、双方の人々が「相違を認めあい主張しつつ協調しあう」姿勢であればと、一市民ながら願っている。北京冬季オリパラへ積極参加するなど改善へ進んで欲しい。

コロナ禍で2年余新疆を訪問していない。2022年は筆者の中国訪問50周年、新疆活動40周年でもある。必ず訪れ多民族諸氏と新疆大学奨学金・新疆文化文物優秀賞・シルクロード児童育英金など国際協力実践を通じて「日中相互理解」促進へ老残微力務めたい。「21世紀は共生・国際協力の世紀」と確信している。灰は第二の故郷・新疆タクラマカン沙漠へ。

皆様も「大美新疆」(美しい新疆)を是非お訪ねください。ご自身の肌で目で新疆をお確かめください。そして新疆の姿を発信ください。47もの多民族が違いを乗り越え「共に未来へ」日々奮闘されておられる。新疆ウイグル自治区に更なる栄光あれ! 拙コラムご愛読に感謝します。合掌三拝

ご参考:1980年代の新疆を知るには拙著『シルクロードの点と線-新疆ウイグル自治区への誘い』(プラス1988)、2000年頃の新疆を知るには新疆ウイグル自治区人民政府外事弁公室編・山口昭ほか訳『シルクロードの十字路 新疆概覧』(文芸社2003)、2010年代の新疆を知るには王麒誠著・本田朋子訳『新疆物語-絵本でめぐるシルクロード』(日本僑報社2015)、をお勧めします。

■筆者プロフィール:小島康誉 1942年名古屋市生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、日中理解実践家。66年宝石専門店を起業し上場企業に育て上げ、96年創業30周年を機に退任。1982年より中国新疆を150回以上訪問し、世界的文化遺産保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在、佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府文化顧問。編著『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』など。日本「外務大臣表彰」・中国文化部「文化交流貢献賞」・中国人民対外友好協会「人民友好使者」ほか受賞多数。 ブログ「国献男子ほんわか日記」 書籍はこちら(amazon)

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