激動の2021年、日中関係の最大の変化は?…中国駐大阪総領事に聞く

日本華僑報    2022年1月10日(月) 13時20分

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中国駐大阪総領事館の薛剣総領事が日中関係の舞台で一躍脚光を浴びている。

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百年来未曾有の世界的大変動に翻弄された2021年が幕を下ろし、収束の見通しが立たないまま、激動の2022年が幕を明けた。この歴史的瞬間に、薛剣(シュエ・ジエン)中国駐大阪総領事が日中関係の舞台で一躍脚光を浴びている。日本のメディアは「薛剣総領事は視点が明確で、はっきりものを言う」「これまでの中国の外交官が言わなかったことを言い、しなかったことをする」と評し、「戦狼外交官」と呼ぶ。中国を敵視する者たちは、中国のあらゆる事物、あらゆる人物にレッテルを貼って概念化し、言説の主導権を手中に収めているかのようだ。今日の多様化する世界で、また、グローバルに民主化が進む時にあって、一国が世界を決定する時代は潮の如く後退している。われわれはメディアとして、この世界的大変動の中で、一人の中国人外交官がなぜ存在感を放っているのかを知りたいと思った。

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年の瀬も押し迫った2021年12月21日午後、中国駐大阪総領事館に薛剣総領事を訪ね、インタビューを行った。(聞き手は日本華僑報の蒋豊編集長)

■ご存じの通り、中国駐大阪総領事は大使級総領事です。そのため、薛剣総領事は2021年6月に中国駐大阪総領事就任後、管轄圏内をはじめ日本社会の各界から注目を浴びています。2021年を振り返って、中日関係の最大の変化は何だったでしょうか。また、その変化をもたらした要因は何でしょうか。

総体的に見て、2021年は中日関係に大きな変化は見られませんでしたが、依然として低空飛行の状態です。岸田新政権発足直後に行われた習近平国家主席と岸田文雄新首相の電話会談では、国交正常化50周年を契機に、初心を振り返り、互いに歩み寄り、新時代の要請に見合った中日関係の構築を推進するという重要な共通認識に達し、両国関係発展のための方向性を示しました。しかしながら、両国関係は依然として複雑かつ深刻であり、新旧の問題が絡み合って顕在化し、「進まずんば則ち退く」の重要な岐路に立たされています。

中日友好の道は難しくて長い、大事にしながら進むべし

さらに、この一年で両国関係にとってのマイナス要因の増加が続いたことにも留意すべきです。日本の国内世論と政治環境は悪化の一途にあり、一部の政治勢力は政治的利益や中国に対する不可解な被害妄想に駆られ、両国によって確立された重要な原則や自国が交わしたコミットメントを顧みることなく、台湾、新疆、香港など中国の主権と領土保全に関わる問題に因縁をつけ、競うようにして極端な反中的主張を表明し、両国関係を害しています。こうした火遊びのような一線を越えた言動が、中日関係の停滞・悪化の要因になっています。日本国内の状況を見ると、現在の中日関係は、洋々たる海を漂流する大船のようであり、波風と海賊に襲われ、不安が尽きない状態です。

一部の日本人の間では、成長を続ける中国と友好的に付き合う考えはなく、敵対的態度をとり、中国の発展を日本の将来の悪夢と見なし、それを遅滞させ封じ込めようとしています。さらに、中国と単独で対峙するのでなく、外国の応援も取り付けて、集団で中国と対抗しようとしています。それには主要同盟国であるアメリカだけでなく、100年以上前に中国を侵略した八カ国連合軍の他のメンバーも含まれています。先日、『文芸春秋』の取材を受けた際、孫文先生が1924年に神戸で行った講演『大アジア主義』の「西洋覇道の鷹犬となるか、或は東洋王道の干城となるか、それは日本国民の詳密な考慮と慎重な採択にかかるものである」の一節を引用しました。日本が歴史的な過ちを繰り返さないよう注意喚起したかったのです。

天安門広場にある孫文の巨大肖像画

現在、中国問題に関しては、多くの日本人が、軍備を拡張して抑止力を強化すれば解決できるのではないかと考えているようですが、目的と行動が相反していて、問題を大きくするだけです。人類文明が大きな歴史の転換点にある今、中国をライバルさらに敵に回すことが日本の後世にどのような影響を及ぼすのかを、日本の皆さんは真剣に考えるべきでしょう。習近平主席は岸田文雄首相との電話会談で「仁に親しみ隣に善くするは、国の宝なり」と語りました。日本の先輩政治家たちも平和友好は最も信頼できる安全保障であると教え諭してきました。今日の日本政治家には、これらを忘れないでほしいと思います。

■2021年は名古屋での「ピンポン外交」50周年に当たりますが、それによって中日関係が大きく改善されたかといえば、そうではありません。現在、日本人の2022年の中日国交正常化50周年に対する情熱や期待値も高くありません。2022年、中日関係に改善の見込みはあるのでしょうか、どう予測されていますか。

「ピンポン外交」の舞台は日本でしたが、主役は中国とアメリカでした。日本の友人たちの積極的な協力の下、中国側が主導した形でこの歴史的出来事を記念しました。その狙いは、異なる国同士が如何にして政治体制やイデオロギーの壁を越えて、平和友好の関係を築くべきかを提起することでした。われわれはこの物語を語ることで、中国が全人類共通の価値を発揚し、協力・開放、互恵ウィンウィンの立場を堅持することを伝え、日本と長きにわたる友好関係を築きたいという善意と誠意を示したかったのです。「ラブコール」と言ってもよいでしょう。しかし、日本側がそれにどの程度着目し、理解し、受け入れてくれたのか、率直に言って、誰も確証を持っていません。

「ピンポン外交」の舞台は日本

国交正常化50周年は、半世紀にわたって両国が困難を恐れず邁進し、さまざまな試練を経て迎えた大きな節目であり、双方が両国関係を振り返り、考える貴重な機会でもあります。われわれは国交正常化50周年だからといって、中日関係を不利な状態から逆転できるとは思っていませんし、それは非現実的です。しかし、このような重要な歴史的契機を無駄にすることなく、人類の共同進歩と両国の長期的な発展という観点から、来年の記念活動を立案して推進していく必要があります。

来年の中日関係は依然として楽観できませんが、重要なのは、われわれが両国関係を改善、発展させたいという確固たる信念と意欲を持っているかどうかです。そうした条件があって、実際に行動することで、少なくとも中日関係のさらなる悪化は防ぎ、大局を維持することができます。それを土台とすることで、われわれは中日関係改善の可能性を高めるために努力し、深刻な自信喪失状態から脱却し、徐々に堅固で強靭で成熟、安定した次の50年を迎えることができるのではないでしょうか。

■明らかに、中日関係は単純な二国間関係ではなく、少なくとも大国間の駆け引きの影響を受けています。百年来未曾有の世界的大変動に遭遇している今、中日関係の障害となっているものは何でしょうか。また、この障害を取り除く方途はあるのでしょうか。

今日の中日関係は国際政治の影響下で、必然的に形成されたものです。今おっしゃった大国間の駆け引きとは、主に中国とアメリカです。アメリカが中日関係に与える影響の大きさは、その他のいかなる外部要因も比べ物になりません。日本とアメリカは同盟関係にあり、日本はアメリカと対等な互恵関係を確立したいと主張していますが、実際には、日米同盟は依然として一方的な依存関係です。同盟国でありながら、多くの日本人は本当のアメリカのことを理解しておらず、アメリカのきらびやかな面だけを見て、覇権国家としての唯我独尊の面は見過ごしているのです。夢の中でアメリカの悪口を言うことさえ罪に感じ、日米同盟を宗教のように信仰する者もいます。日米同盟を基軸にと言いながら、実際、マストと見なしているのです。そのため、日本社会には、何か事が起これば無意識にアメリカに倣う政治の空気と思考習慣が形成されるのです。それは、貿易戦争、テクノロジー戦争、サプライチェーンや産業チェーンの分断、知的財産権保護などの問題だけでなく、いわゆる「人権外交」、「価値観外交」などにも表れています。近年、日本ではアメリカとの整合性を保つため、中国の利益を犠牲にしても構わないと高言する者までいます。

もうひとつの大きな障害は、日本が中国の発展を快く思わないことです。中国が日本を抜いて世界第2位の経済大国になって以降、日本では「中国脅威論」、「中国崩壊論」などのさまざまな否定的論調が見られるようになりました。多くの人々は、あえて中日関係の発展や中国の巨大なマーケットの成長が日本にもたらすチャンスをないがしろにして、わざと中国と距離を置き、中国依存に陥りながら抜け出せないことを恐れているのです。このことは、日本に冷戦思考が存続し拡大していることを明確に表しています。

歴史的観点から見ると、日本は米ソ冷戦の最大の受益者です。冷戦のおかげで、侵略歴史の清算から逃れ、アメリカの庇護の下で瞬く間に戦後の復興を遂げました。その過程で、日本はいかなる代価も払わず、いかなる損失も負いませんでした。この超成功体験が災いし、日本の戦略的視野と戦略に制約を来たし、身がグローバル化の21世紀に入っても、頭は20世紀のままで、冷戦思考の泥沼にどんどん沈んでいくことに気づかないでいるのです。

中日関係の障害を取り除くためには、日本はまず、世界の大勢を見極める必要があります。人類文明にはパラダイムシフトが起こっています。日本にとって言えば、現在の世界情勢は明治維新前と変わらないものでしょう。日本の発展には新しい戦略的思考が必要であり、自らコンフォートゾーンから一歩踏み出し、新しい時代を勇敢に受け入れるべきで、いわゆる先進国として振る舞ったり、民主国家になりすましたり、新時代を拒絶するような態度は改めるべきです。

青木松風庵が作った薛剣総領事のモットーが入った「月化粧」お菓子 中日友好は見た目も味もいいように

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