中国の古い自然観に似る西洋思想もある―「文明の対話」専門の中国人教授が解説

中国新聞社    2022年1月25日(火) 23時20分

拡大

東洋思想と西洋思想の発想の違いは大きい。しかし西洋思想にも、中国思想に近い部分がある。写真は明朝期と清朝期に皇帝が天に対する祭祀(さいし)を行った北京市内にある天壇。天の崇拝は中国思想の重要な部分だ。

(1 / 2 枚)

東洋思想と西洋思想の発想の違いは大きい。しかし西洋思想にも、中国思想に近い部分がある。米ハーバード大学客員研究員なども務める武漢大学哲学学院「文明の対話高等研究所」の呉根友院長(教授)はこのほど、中国メディアの中国新聞社による取材に応じて、中国思想と西洋思想の共通点と相違点を解説した。以下は、呉院長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

その他の写真

■西洋が到達した「中国人としても評価できる自然観」とは

中国思想でもとりわけ重要な概念は「天人合一」、すなわち天と人、さらに言い方を変えれば自然と人は一体という考え方だ。この考え方は「人は自然に適応し、自然の法則に従う」と理解されやすいが、それは人があまりにも無力だった過去の発想だ。現代における「天人合一」の理解とは、人がただ単に自然に身をゆだねるのでなく、科学的な思考のもとで自然の法則を十分に利用して、全人類の生活と命の質を高めることであるはずだ。その際に、過度な利用で自然を損ねてはならないことは、言うまでもない。

西洋も長い哲学の歴史を持つ。西洋にも自然を尊重する思想観念が数多く存在したが、全体的に見て、中国の「天人合一」に類似する思想はなかった。古代ギリシャ哲学は非常に豊かな内容を持つが、自然や天は人が征服すべき対象だった。

西洋では中世になると約1500年間にわたり、キリスト教思想に支配された。重要だったのは神と人の関係で、人と自然の関係は副次的なものになった。17世紀に発生した啓蒙思想は、自然を野蛮で原始的な状態として否定した。ルソーは文明社会の私有制には悪が伴うと考え、自由がある自然な状態を肯定したが、人は自然な状態を永続させるべきとまでは考えなかった。

マルクスとエンゲルスは、まず「人は自然の一部である」と断定した上で、人が認識したり働きかける自然は「人化した自然」と説いた。私個人の考えではあるが、この考えは中国の「天人合一」に対応している。西洋ではそれ以降も現在に至るまで、自然についての思索が続いているが、この考えよりも進歩した自然観は今も提出されていないように思える。

■キリスト教に反発した西洋啓蒙思想に中国思想に似た面が出現

西洋の啓蒙思想は人権や個人の自由という概念以外にも、平等、博愛、公平、正義などの価値観を樹立した。これらは儒学の中核にある価値観と基本的に一致している。

さらに具体的に説明しよう。啓蒙思想はキリスト教神学や教会が「人の真実」を低く見たことに反発して、ヒューマニズムを打ち出した。この考えは儒学の考えと極めてよく似ている。

次に啓蒙思想は理性と科学技術について、人類の幸福と生活の改善のために意義があると主張し、一方で大自然にはそれ自身の秩序があると考えた。この点は、儒家が「鬼神は敬して遠ざける」などとして理性を精神の中核に据えた一方で、自然のリズムと法則を尊重したことと、極めてよく似ている。

次に、啓蒙思想は人の平等を主張した。儒家は「匹夫、志を奪うべからず(身分の低い者でも、その志を奪ってはならない)」(論語)と論じ、相手の身分が低いという理由だけで、その志を妨害してはならないなどと説いた。これは平等思想に通じる考えだ。

■西洋式の自由や人権は人類史に貢献、ただし不十分な面も

啓蒙思想から導きだされた人権や自由の概念が、人類の文明に貢献したことは事実だ。しかし、儒家が道徳の尊厳を説き、道家が個人の思想を説いて、両者が補完しあった中国の状況に比べれば、西洋思想はまだ初歩的だ。人権は各人の社会的責任感や義務感と共に存在せねばならず、自由は各人の道徳や向上する努力と共に存在せねばならない。そうでなければ、いずれも社会に悪い結果をもたらす。

世界にはさまざまな文明圏が存在するが、どの文明に所属する人も受け入れられる「黄金の言葉」がある。それは「おのれの欲せざるところを、人にほどこすことなかれ」、「おのれ達せんと欲して人を達す(自分が達成したいと願っていることは、他人も達成したいと願っているのだから協力の手を差し伸べよ)」だ。この言葉は、さまざまな文明が交流する際の、対話の基礎となるはずだ。(構成 / 如月隼人

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携