林芳正外相に期待=「したたか外交」駆使し、日中首脳会談実現を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2022年1月23日(日) 6時40分

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今年は日中国交回復50周年に当たる。「知中」派と目されている林芳正外相は「したたか外交」を標榜している岸田首相との二人三脚で、平和友好に向け、まずトップ同士の首脳会談を実現してほしい。写真は林外相。

今年は日中国交回復50周年に当たる節目の年。林芳正外相が日本の外交のリード役を担う。中国を熟知した「知中」派と目されているが、国内には対中強硬勢力が根強く存在し、「弱腰」と受け取られる言辞や行動を封印せざるを得ないようだ。

林外相は、ハト派の伝統がある宏池会に所属、日中友好議員連盟会長を務めるなど、一部からは「親中派」とも言われている。昨年11月の外相就任に当たり、「職務遂行にあたって無用な誤解を避けるため」として同連盟会長を辞任した。「米国の中で知日派という言葉があるように知中派であってもいい。媚中ではいけない」と述べ「知中派」を名乗っているという。

林外相が先日、日本記者クラブで行った記者会見は興味深い。中国との関係について、「隣国であるがゆえに様々な問題があることを踏まえた上で対処する必要がある」と指摘。中国の南シナ海や東シナ海での行動や軍事力拡大や人権問題など、「主張すべきは主張する」と強調。その上で、日中関係は両国だけでなく地域・国際社会の平和と繁栄にとってますます重要になっている」と指摘し、対話を重ねて責任ある行動を強く求めていく方針を明らかにした。

また対中外交方針について、「大国間の大人の関係」を提唱。中国は経済的にも大きくなり大国としての責任ある行動が求められると語った。「大人の関係」の手本として、「安倍政権の時に日中が『戦略的互恵関係』を結んだこと」を挙げた。「戦略的互恵関係」は日中両国がアジア及び世界の平和・安定・発展に対して共に建設的に貢献する責任を負うとの認識の下、2国間、地域、国際社会での協力を通じて、互いに利益を得て共通利益を拡大し、日中関係を発展させる関係を指す。

もう一つ「外交理論」として紹介したのは、宏池会(岸田派)の創始者、大平正芳元首相が提唱した「楕円の理論」。林氏は「何とか一つの楕円にする努力しなければならない」と語り、米中の覇権争いが激化する中で、日本としてバランスをとる必要性をアピールした。

大平氏が唱えた「楕円の理論」は調和の道を探る外交理論。林氏は「外交はほとんどの場合、相矛盾するような課題が出てくるが、大平総理は、両立の難しいことを(別々の)二つの円にたとえ、一つの楕円にする努力をしなければならない。好きな言葉だが、外務大臣になって、言葉の重みをかみしめている」と語った。

林氏は自身の座右の銘を「不易流行」と紹介。「変えるべきことを変え、しかし変えてはならないところを守る。その境目をどうやってしっかりと見極めるかが大事だ」と語った。その上で「変化の激しい世界情勢の中では重心を低くして(全方位に)対応する必要がある」として「低重心外交」を目標とする方針を明らかにした。

逆風が吹き荒れる中、まさに正念場である。相手国に対する深い理解と豊富なネットワークをもつ林外相は、相手国を熟知している「特技」を生かし、不退転の決意で真の平和友好を推進してほしい。「したたか外交」を標榜している岸田首相は日米首脳会談(テレモート)を行った。次は「日中国交回復50周年」の今年、長らく途絶えている日中首脳会談会談を実現する必要があろう。

<直言篇190>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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