デジタル化の進行で通信量が激増、日本含むアジア太平洋で鍵となるのは6GHz帯分割か

Record China    2022年4月15日(金) 9時50分

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世界的なデジタル化の急速な進行によって、電波によって運ばれる情報は激増している。そのため将来を予見した電波の「合理的な使い方」を創出せねばならない。注目点の一つに6GHz帯の利用法があるという。

各種「リモート」やIoT(モノのインターネット)などで「あらゆるものがつながる」状態が急速に進行する状況にあって、電波の周波数帯の割り当ては急務だ。また、近隣国との干渉を防止せねばならないので、割り当てには各国の協調も必要だ。

さまざまな周波数帯の中で、注目されている帯域の一つが5925-7125MHzの周波数域を意味する6GHz帯だ。タイのバンコクに本部を置き、アジア太平洋地域の国や地域が加盟するアジア・太平洋電気通信共同体(APT)はさまざまな会議を開催し続けているが、3月14日には6G帯に特化したオンライン会議を開催したほどだ。

通信で使われる電波は周波数によって、ローバンド、ミッドバンド、ハイバンドに分類される。この三者を分類する境界線の決め方には複数の方式があるが、6GHz帯はミッドバンドの一部と考えてよい。世界各国の電波規制当局は6GHz帯およびミッドバンド全体を最大限に活用するために、分析と議論に取り組んでいる。

IT関連メディアのテレコム・レビューによると、通信関連の戦略コンサルタントとして政府や大手企業、国際電気通信連合(ITU)、通信事業者などの国際的な団体であるGSMAに助言をしているスコット・ミネハン氏は、6GHz帯を分割して異なる分野に用いる方法を提唱する。

■6GHz帯の利用法は国により異なる、中国と韓国ではちょうど「真逆」

まず、6GHz帯の利用法としては、Wi-Fi向けと、IMT(国際的な移動体通信 International Mobile Telecommunication)向けが考えられている。ミネハン氏によると、どちらの用途で使うかは国によって異なり、例えば中国は6GHz帯のすべてをIMTサービス用に割り当てた。逆に韓国は、6GHz帯のすべてをWi-Fi用に割り当てた。

また、ITUは2年または3年ごとに世界無線通信会議(WRC)を開催して国際的な電波規制の改善を推進しているが、マレーシア、タイ、オーストラリアなどは過去数カ月の間に、2023年に開催される次回のWRC(WRC-23)に向けて500 MHz以下の周波数をWi-Fiに割り当て、700 MHz以上の周波数はIMTのために確保すると決定したという。

ミネハン氏によると、日本や香港、シンガポール、インドネシア、ベトナム、ニュージーランドなどは、それぞれの方法を評価中であり、日本と香港では関連する文書も発表された。一方でインド、パキスタン、フィリピン、カンボジアは、利用可能な選択肢を検討する初期段階にある。

ミネハン氏自身は、GSMAの勧告に従って、特にアジア太平洋地域ではWi-Fi用には5925-6425 MHz、IMT用には6425-7125 MHzと、6GHz帯を2分して割り当てるべきと考えている。それも、早期に実施すべきという。

米国は比較的余裕、アジア太平洋地域は極めて切迫

米国では3.45-3.55 GHzおよび3.7-4.0 GHzといったCバンドがIMT用に割り当てている。米連邦通信委員会(FCC)は3.10-3.45 GHzの周波数帯など、IMTへの割り当てをさらに増やすことも検討している。ミネハン氏によれば、それに対してアジア太平洋諸国では、高品質の5Gサービスや将来の6Gサービスを支えるIMT用の3.5 GHz帯が極めて不足している。しかしデータの同時伝送ができるMIMOアンテナを使えば、6GHz帯で代替できることが実証されている。

ミネハン氏はさらに、アジア太平洋地域でWi-Fiに6GHz帯の周波数を多く割り当てても、データの送受信速度は固定ブロードバンドの速度に限定されるため、意義に乏しいと指摘。

そのため、6GHz帯を全面的にWi-Fi用に特化して使うのではなく、分割してマニラ、ハノイ、バンコク、ジャカルタなど大都市でIMTサービス用に6GHz帯を利用すれば接続性が向上し、また、そのことで低周波数の700MHz帯を農村部で利用できるようになると論じた。

ミネハン氏によれば、英国のWi-Fi業界などの調査で、6GHz帯のWi-Fiサービスに500MHz帯の追加割り当てを行うことで、経済効果はほぼ確保できると分かった。一方で、Wi-Fiでは6GHz帯に700MHz帯を追加割り当てしても、発生する経済効果はわずかだった。それに対して、IMTに700 MHzを追加割り当てした場合には、経済効果が大幅に向上した。

ミネハン氏はこれらを理由に、アジア太平洋諸国では6 GHz 帯を分割してWi-Fi と IMT の両サービスに割り当ててこそ社会経済的利益をよりよく確保することができると考えている。

■今後も激増する世界の情報通信量、規制当局の長期的予見力が重要

世界的なデジタル化の進行で、通信量は激増しつつある。2020年には推定通信量が前年比で3割ほど増加した。IUTによると同年に越境データ流通量は前年比37.7%増だった。越境データ通信量はアジア太平洋地域では同42.8%増だった。

同年の通信量の急増は新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン会議などが増えたことなども影響したと考えられているが、仮にコロナ禍が去っても通信量の伸びが鈍化したり逆転することはあまり考えられず、コロナ禍は世界のデジタル化を不可逆的に加速したの見方が強い。2021年末時点で全世界における5Gの契約数は5億8000万件に達したとの推定があるが、2027年には44億件に達するとの予測がある。

ミネハン氏は「私たちは(将来に)どれだけ多くの周波数が必要かを過小評価しがちです」と警告した。2025年には5Gの改良型である5Gアドバンスト、2030年には6Gが登場する見込みだ。今後も激増を続ける通信量に対応するためには、IMTサービスにミッドバンド周波数を追加することが必要であり、そのための方策が6 GHz 帯の分割という。

電波利用の規制当局は、将来を予見し選択肢を広げるべく、長期的な周波数計画を立案し実行せねばならない。ミネハン氏は「6GHz帯を免許制のIMTや免許不要の用途に割り当てることを支持する。コミュニティーや経済に最大の効用をもたらすために、業界関係者の共同作業を指揮する規制当局の果たす役割は重要だ」と述べた。(構成 如月隼人

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