<ウクライナ危機>繰り返す80年前の歴史=戦闘の推移、独ソ戦に相似―無謀な戦いエスカレートも

長田浩一    2022年4月21日(木) 7時50分

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ロシア軍がウクライナに侵攻する3日前の2月21日に当欄で配信した「独ソ戦と現代」で、筆者はウクライナなどをめぐる国際情勢が1940年代初めの独ソ戦開戦前に酷似していると指摘した。

ロシア軍がウクライナに侵攻する3日前の2月21日に当欄で配信した「独ソ戦と現代」で、筆者はウクライナなどをめぐる国際情勢が1940年代初めの独ソ戦開戦前に酷似していると指摘した。侵攻から2カ月近くが経過した今、事態は一段と80年前に似てきているように見える。ヒトラー率いるナチスドイツと、スターリン独裁のソ連が激突した独ソ戦では、両国合わせ3500万人ともいわれる死者を出した(民間人含む)。歴史はどこまで80年前を繰り返すのか。今回のウクライナ侵攻と独ソ戦(及びその直前の状況)がどのように似ているのか、改めて整理してみたい。

◆バルト3国と同様にクリミアを併合

前回記事でも指摘したが、今回のウクライナ侵攻の前哨戦というべき2014年のロシアのクリミア併合は、1940年のソ連によるバルト3国(ラトビア、エストニア、リトアニア)併合にそっくりだ。国際社会が併合を非難したが、実効性のある制裁ができなかったところも同様だ。

不倶戴天の敵と見られていたドイツとソ連は、1939年8月に不可侵条約を結んで世界に衝撃を与えたが、条約に付属する秘密議定書で、両国は北欧、東欧におけるそれぞれの勢力圏を定めた。ソ連は同議定書に基づき、40年8月に相次いで3国を併合。3国はもともと帝政ロシアの一部であり、住民にもロシア人が多いというのがソ連の主張。3国側としては全く受け入れがたいが、圧倒的な国力差を背景に、目立った抵抗もできず飲み込まれた。

2014年、ロシアはウクライナの親露政権が崩壊した機をとらえて、クリミア半島を強引に併合した。プーチン大統領は、かつてソ連がクリミアをウクライナに割譲したのは違法であり、また同地のロシア人を守る必要があるなど、バルト3国併合と同様の理由を並べた。国際社会は非難したが、実効ある制裁には踏み切れず、事実上容認した形となった。

◆開戦の仕方がフィンランド侵攻にそっくり

ソ連は、独ソ戦前の1939年にフィンランドに戦争を仕掛けたが、そのやり方が今回のウクライナ侵攻にそっくりだ。ロシア人のケンカの仕方は80年経っても変わらないのか、と思ってしまう。もっとも、スターリンはロシア人ではなく、グルジア出身だが…。

ソ連は、前述の秘密議定書で自らの勢力圏とされたフィンランドに対し、領土の割譲や基地の提供などを要求。フィンランドが要求を拒否すると、ソ連はそれを理由に大軍を動員して攻め込んだ。ソ連は、短期間のうちに征服できると見て、傀儡政権の樹立も計画していたという。ソ連は最終的に勝利するが、フィンランドの激しい抵抗にあい、大苦戦した。

今回も、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を求めるなど、無理な要求を突きつけ、拒否されると戦端を開いた。プーチン大統領は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領を失脚に追い込んだ後、意中の人物を後任とする考えと言われるが、この点も同じだ。

◆首都に迫るも退却、別の目標へ

戦闘の推移も、独ソ戦を思い起こさせる。具体的には、開戦後のロシア軍の動きに、80年前と似た部分があるのだ。ただ、現在のロシア軍に似ているのは当時のソ連軍ではなく、ドイツ軍の方だ。

1941年6月、ナチスドイツは独ソ不可侵条約を破ってソ連に侵攻を開始。9月にはキーウ(キエフ)を占領、レニングラード(現サンクトペテルブルク)を包囲し、11月には首都モスクワまで20~30キロまで迫った。しかし12月初めにソ連軍が反攻を開始。冬将軍の到来もあってドイツ軍は退却を余儀なくされた。翌42年、モスクワにまた攻めてくるとのスターリンらの予測を裏切って、ドイツ軍はソ連南部の油田地帯を目指して攻勢を開始。ソ連最高指導者の名前を冠したスターリングラード(現ヴォルゴグラード)などで激戦が展開された。

今回のロシア軍も、ウクライナの首都キーウに向けてベラルーシ方面などから攻め込み、キーウ近郊まで迫った。しかしウクライナ軍の激しい抵抗もあり、現在はキーウ周辺からは撤退。代わりにウクライナ東部で攻勢を強めている。

◆独裁者の無謀な戦い

そして何より懸念されるのが、80年前と同様、独裁者による無謀な戦いがエスカレートするのではないか、という点だ。

独裁者ヒトラーは、「ドイツは東方へ拡大し、スラブの下等人種を犠牲にして『生存圏』を獲得することによってのみ生き残れる」という自らの信念に基づき、広大なロシアを征服するという暴挙に出た。占領地では過酷な収奪や暴力が横行し、ソ連兵捕虜を虐待した。捕虜の約半数が死亡したと言われる。

一方でソ連側も、敵と同様の獣性で対抗。戦争終盤、ドイツに攻め入ったソ連軍は略奪、暴行、強姦の限りを尽くしたという。独裁者スターリンはまた、兵士の生命を顧みない無謀な命令を繰り返し、勝利した側であるソ連軍の戦死者はドイツ軍の5~6倍に上る。

そして現在。バイデン米大統領はプーチン氏を「独裁者」と呼び、大量虐殺(ジェノサイド)という言葉を使ってロシア軍の行為を非難した。国際政治学者の藤原帰一氏はNHKのインタビューで、「ロシア軍が、抑制が効かなくなっているおそれがある」として、化学・生物兵器や核兵器使用への懸念を表明した。独裁者の無謀な戦い、無謀な命令がこれ以上、エスカレートすることのないよう、願うばかりだ。

■筆者プロフィール:長田浩一

1979年時事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任。現在は文章を寄稿したり、地元自治体の市民大学で講師を務めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中国との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外国の地は北京空港でした。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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