改めて明らかになったファーウェイの発想と中長期展望―東京都内でイベント開催

Record China    2022年4月29日(金) 13時50分

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ファーウェイ・ジャパンは27日に「ファーウェイ・アナリスト・サミット2022・オブ・ジャパン」を開催、ファーウェイ全体の現状と将来展望を具体的な事例とともに紹介した。

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華為技術(ファーウェイ)の日本法人であるファーウェイ・ジャパンは27日、東京都内で「Huawei Analyst Summit 2022 of Japan(ファーウェイ・アナリスト・サミット2022・オブ・ジャパン。以下、HASジャパン)」と題したイベントを開催した。HASジャパンはファーウェイが19年連続で開催している「グローバルアナリストサミット」の“日本向けバージョン”として、初めて開催された。会場では、同社の現状と将来展望が具体的な事例とともに紹介された。同社の「中長期的青写真」である「スマートワールド2030」についても詳しい説明があった。

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■既存技術の単純な応用に甘んじていたのでは、「人類の未来」は到来せず

HASジャパンでは、ファーウェイ・ジャパンの王剣峰会長のあいさつ、ビデオアーカイブを利用したファーウェイの胡厚崑輪番会長らによる同社の現状や将来展望の説明、ファーウェイデバイスの楊濤日本・韓国リージョンプレジデントによる講演などが行われた。

ビデオアーカイブでは、既存技術あるいは既存技術の単純な応用だけに甘んじていては人類社会の将来展望が成立しないことが、繰り返し強調され、「既存の技術にとらわれてはならない」ことを示す実例も多数紹介された。

例えば広く注目されるようになった量子コンピューティングについても、かつては必ず突破せねばならない壁として「量子の保存の実現」があった。1993年には「理論上は可能」という研究が発表されたが、それでも実現性は疑問視されていたという。しかし2005年ごろには量子の1種である光子を「縛って閉じ込める」ことで、その保存が可能になった。

また、HASジャパンでの説明によれば、現在のコンピューティング技術では、「無駄」が多く存在する。例えば生物の脳の情報処理は、スーパーコンピューターよりもはるかに効率がよい。生体内の情報処理も「自然科学の法則」に基づいている以上、人類の技術によってコンピューティングの飛躍的な効率向上を実現できる可能性はある。

ファーウェイは実際に、従来型の「線形型」というアルゴリズムのパターンの枠を超え、「非線形」という手法を導入することで、計算量を45%低減することにも成功したという。

■既存の基礎理論は限界に達した、技術系企業として「耐えて突破する」が必要

ファーウェイによれば、情報の取り扱いを徹底的に効率化しないと、多くの人が「実現できるだろう」と思うようになった「人類社会の未来図」でも、実際には実現が覚束ない場合は多い。例えば、自動運転のために車両にカメラを12台取り付けただけでも、現在の5Gによる通信では、情報伝達がパンク状態になってしまう見込みという。

ファーウェイは、すぐに応用することが可能に思われる分野だけでなく、理論の基礎分野で「世界的頭脳」を招き入れることに熱心だ。研究成果がすぐにビジネスとしての実績に反映されるわけではないが、企業としては「忍耐力」が必要であり、人類社会の未来のためには基礎分野における「突破」がどうしても必要との考えという。そのためには、基礎分野の研究者に「興味本位」で仕事をしてもらうことも欠かせないとの認識だ。

ファーウェイは、現行の基礎理論はすでに限界に達したと認識しており、基礎理論、ソフト、アーキテクチャーの全ての階層にわたって「突破」が必要と判断している。そのために今後も、企業として厳しい環境にあっても、研究開発費を減らすことはしないという。

ファーウェイは世界の技術系大企業の中でも、研究開発への投入が大きい会社として知られる。2021年度決済の場合、売上高が落ち込んだこともあるが、研究開発費は売上高の22.4%と、過去最高の比率に達した。研究開発費の額そのものも前年より増やした。

■ファーウェイの中長期展望「スマートワールド2030」

HASジャパンでは、同社の中長期展望と言える「スマートワールド2030」も詳しく説明された。「スマートワールド2030」は、同社との関連性が強い分野として、「健康」、「食」、「住」、「交通機関」、「都市」、「企業」、「エネルギー」、「デジタルトラスト」の8分野を取り上げ、それぞれ現状と2030年に向けた予想、さらに「洞察と展望」と題して技術革新の方向性と道筋を論じたものだ。

まず興味深いのは「2030年の状況」について、自社による予測が数多く盛り込まれていることだ。そして次に、実現のための課題や対策が示されている。

「遠隔治療」、「自動運転」、「スマートシティー」など、多くの人が相当に具体的なイメージを描く分野も多いが、「スマートワールド2030」には、「具体的な数字の予測」が多く盛り込まれている特徴がある。

例えば、2030年における全世界における計算能力については「汎用コンピューティングパワーは2020年の10倍の3.3ZFLOPS」、「AIコンピューティングパワーは2020年の500倍の105 ZFLOPS」との予測が示された。そのような状況によって、「健康」分野では、「潜在的な問題をコンピューターを使って特定し、治療から予防に焦点を移す」、「クラウドエッジデバイスの相乗効果を活用した、患者の自宅に医療サービスを届ける“ホームドクター”を出現させる」などの展望が成立し、またその実現を目指すという。

■革新的技術の実用化が「意外な効用」をもたらすことも

農業分野ではこれまで「ベテラン農家の長年の経験」が非常に重要だったが、これからは「正確なデータを使って農作業を導く」方向になるとの指摘があった。例えば、トウモロコシの場合には1ヘクタール当たり300-600キログラムの増収につながるという。

門外漢にとっては、少々意外な紹介もあった。例えば農薬については、雑草が生え始めた場所だけに絞って散布することで、使用量を90%も削減できた事例があるという。またファーウェイによると、3Dプリントの技術を用いて、植物由来の素材を動物の筋肉や脂肪の組織に近い状態にすることで、本物の肉の食感や風味に大きく近づけることができる。また、人工牛肉の価格も、本物の牛肉の価格に近づいていくという。

食肉については、「穀物などを食べる場合と比較して、栄養の利用効率が著しく悪い。世界全体の食糧確保を考えても肉食は減らすべき」との主張があるだけに、「人類にとって農業の開始以来の食材確保の大革命」となる可能性を秘めた技術と言えるだろう。

自動運転についても興味深い指摘があった。自動運転の技術向上と普及で通常まず考えられるのは「人件費節減」、「運転に伴う疲労の軽減と時間の有効活用」、「ヒューマンエラーをなくすことによる安全性の向上」などだろう。

しかし「スマートワールド2030」によると、自動運転により渋滞を解消することや輸送に必要なエネルギーを削減することも可能だ。例えば、現在は安全な車間距離を決める大きな要因は人の反応速度だ。機械の反応速度は人よりもはるかに速いので、「車間距離が1メートル以下でも十分に安全」という状況もありえるという。そうすると現在の渋滞のかなりの部分は解消されることになる。

「スマートワールド2030」は、「米国では2019年に交通の混雑で880億ドルの損失が発生した」と指摘。また、車間距離を縮めれば、車が受ける空気抵抗も小さくなり、走行に必要なエネルギーも減少する。自動運転はこれらの「無駄」を削減する技術でもあるという。

「スマートワールド2030」はそれ以外にも多くの実例を紹介し、「2030年における私たちの生活」に何が生じるかを細かく示した。ファーウェイは、さまざまな分野における将来を具体的に予想し、現状における課題を綿密に抽出し、解決のための「最適解」を導いていく決意という。(取材 /構成 如月隼人

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