池上萬奈 2022年5月7日(土) 5時20分
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身元保証人に名乗りを上げたママ友の熱意が伝わってきた。滞在先が決まらないと日本に来られない。写真はオデーサの銅像。
身元保証人に名乗りを上げたママ友の熱意が伝わってきた。滞在先が決まらないと日本に来られない。誰か住居提供を!の呼びかけに応じ、我が家の離れでウクライナ人の母と子ども二人(13歳男子・12歳女子)を約1カ月間預かることになった。就職先が決まっての来日はまれなケースだそうで、就職先の地元自治体が住居提供・学校などの受け入れ準備を完了させるまでの期間である。
◆スマホとSNSが大活躍
空爆に脅えながらの生活に別れを告げた彼女たちは、ロケット弾が上空を飛んでいる列車に揺られながらキーウからワルシャワに向かった。日本大使館でのビザ取得に3日~14日かかると言われたが、幸運なことに手続き後3日でビザを取得。さて次はPCR検査。陰性が判明されたら航空券を購入だ。そんな中、カードが使えなくなる事態が発生しPCR検査が受けられない。お金がなければPCR検査もできず日本に行くことはできない。身元保証人(以後保証人)が送金しようとしても機能しない。
そんな状態の時、ワルシャワでボランティアをしているYuji さんという若者がSNSで情報発信していることを知り、私の娘がテレビ電話で連絡を取り立替依頼。40分後には彼女のもとに駆けつけてくれたYujiさん、検査先まで連れて行ってくれ、最終的には、飛行機離陸まで見送ってくれることになった。日に日に値上がりする飛行機の搭乗券を保証人が購入し、彼女にネットを通じて渡す。その間、SNS機能が大活躍、保証人親子、娘と私、ウクライナ人の家族、Yujiさん、一緒にチャット機能を使ってビデオ通話もした。事前に顔見知りになっておくのはお互い安心だ。
◆避難民一家受け入れのための協力体制作りが必要
我が家では、娘の友人たちが離れの掃除をしてくれ、ウクライナ国旗の色(青と黄)の花が咲いている植物をプランターに植え、国花のひまわりの花を飾り、PCR検査による陰性証明を得るまでの待機期間中に必要だと思われる数日間の食料品を購入し、迎え入れの準備をした。
いよいよ来日。彼女たちは、イスタンブール経由で深夜に羽田到着、保証人や娘たちが出迎える。保証人が予約した近くのホテルで宿泊、翌朝、保証人が検索して見つけたボランティアの行政書士さんがホテルに見えて、日本滞在のための書類申請記入を手助けしてくれた。その後、保証人の車で我が家に向う。脱出してきた3人の持ち物は小さいスーツケース2個のみ。
保証人はその一家のために住民登録、在留カード、健康保険、健康保険小児用、児童手当書類の申請を役所で行う。そして日本財団の金銭支援のための申請を行う。娘は友人に向けてSNS を通じて義援金を募る。何か役に立ててと多くの義援金が集まった。ママ友の娘同士で、PCR検査場の予約、滞在3日目のPCR検査場往復の運転と翌日の厚労省への陰性結果報告を担当した。これで外出が自由になった。まずは一緒に衣類と携帯電話を買いに行こうと娘が提案した。キリル文字に対応できるパソコンも調達できた。
一家族を迎え入れるために大勢の協力を得、たくさんの善意に感謝していると述べる保証人。保証人家族と私の娘が物理的時間と労力をかなり費やしているが、それを支える周りの協力体制がうまく機能している。
◆軍事侵攻、「深刻な問題」として実感
情報通信の急速な進歩に感激している。メッセンジャーでウクライナにいる友人と話している子どもたち。破壊された家の前にいる友人の映像を見せてくれた。英語もわからない子供たちと意思疎通を図るにはスマホサイズの自動翻訳機が大活躍。そして彼女が作ってくれる美味しいウクライナ伝統料理、ボルシチやお米が入ったロールキャベツは人と人の心を近づけてくれる素敵なツールだ。
言語が通じなくても子供同士は遊んでいる。しかし、欧州で働いていた彼女の夫、つまり子供たちの父親は国を守るためにウクライナに戻った。この家族に心から楽しそうな笑顔が戻ってくるのはいつのことだろう。身近にウクライナ人の家族が滞在していることで、ウクライナへのロシア侵攻問題をより深刻な問題として感じている。
■筆者プロフィール:池上萬奈
慶應義塾大学大学院後期博士課程修了、博士(法学)、前・慶應義塾大学法学部非常勤講師 現・立正大学法学部非常勤講師。著書に『エネルギー資源と日本外交—化石燃料政策の変容を通して 1945-2021』(芙蓉書房)等。
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