八牧浩行 2014年6月11日(水) 6時10分
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11日、中国研究者の遠藤誉・筑波大名誉教授の著作『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』(朝日新聞出版)の中国語版が「チャーズ―出口なき大地」として台湾で発刊された。
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2014年6月11日、中国研究者の遠藤誉・筑波大名誉教授の著作『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』(朝日新聞出版刊)の中国語版が『チャーズ―出口なき大地』(楽果文化刊)として台湾で刊行された。
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旧満州国の長春で製薬工場の経営者の令嬢として生まれ育った著者の苦難の運命を描いたノンフィクション。日本の侵略戦争、ソ連軍の侵攻、国民党軍と八路(共産党)軍が支配を繰り返す壮絶な内戦。著者の父親は工場経営継続を要請され家族と共に満州にとどまることになるが、長春は八路軍によって包囲された。一家は長春の外へ逃れたが、そこは国民党軍と八路軍の緩衝地帯、「チャーズ」だった。ところがチャーズの出口は八路軍によって閉鎖され、想像を絶する“生き地獄”が待っていた。父母と共に地面に布団を敷いて寝起きしたが、その地面の下には夥(おびただ)しい遺体が埋まっていた…。
この時、著者は7歳。体験した人だけがわかる極限状況での人間の崇高さや卑しさを迫真の筆致で描き切っている。日中戦争の苛烈さと当時の国共内戦のすさまじさ、戦争の悲劇にメスを入れた歴史書と言える。人の心の清らかさと邪悪さなど通常の平和な世の中では経験できない壮絶な体験も盛り込まれ、人間とは何かに迫る哲学書としても一級品である。
遠藤氏は中国語版の中国大陸での公開を希望したが実現せず、台湾での出版となった。「肉親を失った苦しい思いには、筆舌に尽くしがたいものがある。私はこの日のために生きてきたのだと感慨深い思いでいっぱいです」と語っている。
◆惨劇を繰り返すな
戦争の悲惨さを描いた作品は世界に数多いが、その中でも秀逸。戦争はどんなに崇高な目的があろうとも、多くの人を不幸に追いやり、文化を破壊してしまう。本書ははこのような惨劇を繰り返してはならないことを教えてくれる。英語版も計画されており、世界各国で読まれれば世界の平和実現に資することになろう。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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