Record China 2022年6月23日(木) 6時0分
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日本で「糖質ブーム」の火付け役になった「糖質オフ大全科」の中国語翻訳版が中国で、ミリオンセラーになった。読者が納得しやすい説明や提案があるだけでなく「健康先進国・日本」のイメージも関係したようだ。
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最近の中国人は、自国の発展に伴って大いに自信をつけたとされる。海外の文化やトレンドについても、かつてのようにむやみにありがたがったりはしなくなったという。しかしそれでも、「これはよい」と思ったことならば、多くの中国人がすぐに取り入れる。日本で2019年に刊行されて「糖質ブーム」の火付け役になった「糖質オフ大全科」(水野雅登監修、主婦の友社)の中国語版は、発売後18カ月の2022年4月時点で発行部数が100万部を突破した。多くの中国人読者がネットに、同書を役立てようと「決意」を書き込んでいる。
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中国は今や、「飽食の時代」を迎えたと言ってよい。肉食などの増加で、たんぱく質の摂取も増えたが、中国人の日常の食生活は、米飯あるいはマントウ(中国式蒸しパン)のような糖質を多く含む主食類を「ガッツリ」と食べて、多少のおかず類を食べる方式だった。
21年に発表された「中国居民栄養与慢性病報告(中国住民栄養および慢性疾患リポート)によると、中国の成人住人(満18歳以上)の34.3%が「前肥満」状態で、16.4%が「肥満」状態という。中国は肥満について世界保健機関(WHO)の基準を採用しており、「前肥満」とは身長と体重に基づいて算出するBMIが25以上30未満の状態を指す。「普通体重」より「肥満気味」の状態だ。BMIが30以上の場合「肥満」に分類される。
中国人成人の「前肥満」と「肥満」の合計の割合が人口の半数以上になったのは初めてだった。すべての年齢を含めた「前肥満」と「肥満」の人の合計は6億人とみられている。太っていたのでは見た目が悪くなりがちだし、なにより健康や美容に悪いことは知られている。例えばカロリーを過剰に摂取する状態が続けば、糖尿病にかかるリスクが高まる。
ただし、過食を避けようと食べる量を単純に減らしたのでは、今度は体にとってどうしても必要なたんぱく質や各種ビタミンやミネラル、食物繊維の摂取量が不足しかねない。「健康のため」を思って始めたダイエットも、方法を間違えれば健康状態を悪化させてしまう。ちなみに中国では摂食障害、いわゆる拒食症患者が9000万-1億2000万人程度存在するとの推定もある。
多くの中国人が「食べ過ぎてはいけない。かといってダイエットにもリスクが伴う」と認識していた中で発売されたのが、極端に苦しむことなく健康的な食生活を実現できると紹介する「糖質オフ大全科」を中国語訳した「減糖生活」(刊行・北京快読文化伝媒)だった。糖分摂取を上手にカットすることで健康的な食生活が実現できると説く同書は、まさに「中国人が欲しかった情報」を提供したと言える。発売後約1年で、「ミリオンセラー」となった。
同書についての感想を読むと、「言及している減糖の理念や健康的な食生活は非常に理にかなっている。ダイエットを指導する本ではないが、従えば必ずダイエットの効果がある」(遼寧省在住、女性)、さらには「1日思うがままにしてしまっても(思うがままに食べてしまっても)それで失敗というわけではない。明日からまた続ければ、あなたは前進の道の途上にある」(上海市在住、女性)と、自分の体質改善に前向きに取り組もうという意見が目立つ。
また「原理が分かりやすく、イラストが多いので単調にならない」との声もあった。原書のよさを生かそうと努力した中国語版編集者の努力も、読者の評価につながったと考えてよい。
炭水化物(糖分)を多く含む主食を減らすのが難しいと感じる人のために、同書は「カリフラワー60グラムを細かく刻んでご飯に入れて一緒に混ぜるとか、卵白とおからと糸こんにゃくを細かく刻んでご飯に入れるなどの方法を提供している」(四川省在住、女性)と、具体的な提案があることを紹介する書き込みもある。
中国では日本について「健康大国」のイメージが強い。日本人の平均寿命が男女ともに世界のトップレベルである理由を考察する記事は、繰り返し発表されている。日本人が衛生を重視することもよく知られている。例えば中華料理を複数人で食べる場合は、各人が自分の箸で大皿の料理を取り、親愛の情を表すために、「自分の箸で大皿の料理を相手の小皿に入れる」ことも普通にあった。感染症のリスクがあるとして、政府が習慣を改めるよう呼び掛けた際には「日本人は大皿の料理を取るのに自分の箸を使わない。必ず公共用箸(取り箸)を使う」と紹介する記事が盛んに発表された。
日本に「健康リスクを引き下げる工夫の歴史がある。健康先進国だ」とのイメージがあることも、同書が広く受け入れられ評価された背景にあるようだ。少なくとも健康問題についての日本の情報発信力、すなわち一種のソフトパワーは今も健在と言ってよいだろう。
同書の翻訳を手掛けたフォルトゥーナ(本社・東京都)は17年に、生活習慣病対策に役立てられる日本の書籍の中国版翻訳出版のプロジェクトを開始した。それ以来の4年間で書籍11冊を北京快読文化伝媒に仲介してきたという。(翻訳・編集/如月隼人)
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