吉田陽介 2022年6月28日(火) 13時30分
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中国のインターネット通販大手「京東集団」の創業記念日である6月18日は、「ダブル11」のようなインターネットショッピングイベントが行われる。写真は美的のエアコン。
中国のインターネット通販大手「京東集団」の創業記念日である6月18日は、「ダブル11」のようなインターネットショッピングイベントが行われる。中国メディアの報道によると、6月18日午後11時59分時時点で、「6.18」の累計注文金額は3793億元を超え、最高を更新し、2万7000社超の提携ブランド、3万社超の提携店舗の取引額は前年同期比5倍増となった。「6.18」が活況を呈したのは、中国人の「リバウンド消費」が始まったことを意味する。
3~5月、上海や北京で新型コロナの感染再拡大が起こり、前者は事実上のロックダウン措置がとられ、後者は労働節(5月1~4日)の連休中に行動制限が出され、同月いっぱいは制限が継続された。ただ、6月に入ってからは、「低リスク」と認定された地域で行動制限が解除されたため、「リバウンド消費」の条件が整った。
ただ、行動制限が解除されたものの、感染再拡大のリスクが消え去ったわけではない。オミクロン株は感染力が強いため、「感染チェーン」を断ち切ることは難しい。そのため、再び行動規制が課せられたら、消費が減少する恐れがある。
また、物流は概ね回復しているが、一部の地域では「リスクが高いので送れない」という現象も見られるため、完全回復にはまだ時間が必要だ。
■家電消費が好調の陰には企業の販促政策あり
今回の「6.18」では、家電製品の売り上げも多かった。6月18日に、共同購入のシステムを持つ中国のECプラットフォーム「拼多多」の発表したデータによると、5月23日にイベントが始まってから、同社が扱う家電製品は売れ行きがよく、全商品の売り上げ規模は前年同期比103%に達した。同社データによると、「美的」のエアコン、ハイアールの冷蔵庫と洗濯機、小米のテレビ、格蘭仕のマイクロ波電子レンジなどの売れ行きが良かった。
6月20日付の北京晩報によると、5月23日に「6.18」は好調な滑り出しを見せ、最初の24時間で、家電企業の取引量は爆発に増加した。6月18日午前0時時点で、今年の家電業界全品目の販売規模は前年同期比103%増と倍増した。
家電製品の売り上げが増加した要因は、プラットフォーム企業が消費者の購入意欲喚起策をとったことが大きい。
「拼多多」は売り上げを伸ばすために、購入金額が300元を超えたら50元を還元する、1つ購入したらもう1つプレゼントなどの方法で消費者を引きつけた。また、多くの家電メーカーがプラットフォームに出品することを選び、「拼多多」とともに「6.18」の「ブランド特別会場」で、「毎日1ブランド」の大促進キャンペーンを実施し、格蘭仕の商品は期間限定で50%オフといったようなやり方で1日平均1ブランドのトップ家電ブランドの商品を手頃な価格で販売した。
■「買いだめに備える」ために冷蔵庫を購入
この期間中、リアル店舗でも電気製品の売れ行きが良かった。第一財経の報道は、「冷蔵庫、箱型冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機、衣類乾燥機のオフライン販売が大幅に伸び、全体の販売台数が1割超減少したオフライン家電市場の中で目立った結果をあげた」と報じた。
6月15日付の第一財経の報道によると、冷蔵庫や箱型冷蔵庫・冷凍庫の売れ行きが良かった要因は、コロナ禍の買いだめ需要に刺激されたと指摘する。
2022年1~4月の中国国内の家電市場は活況を呈していなかったが、買いだめ需要もあり、冷蔵庫小売売上高は前年同期比6.9%減、箱型冷蔵庫・冷凍庫小売売上高は前年同期比41.3%増だった。大容量冷蔵庫の販売は増加を続け、2022年第1四半期には500リットルサイズ以上の冷蔵庫のオフライン小売量が43%、オンライン小売量が23.5%に達した。
筆者の住む北京でも4月後半にコロナの感染再拡大の懸念から、買いだめをする人が少なくなかった。筆者は、北京は大丈夫だと思っていたが、上海の例もあったので、万一を考えて真空パックの豆腐製品やビスケットなどをいつもより多めに買った。
スーパーでは、インスタントラーメンなど保存のきくものを買っていた人もいたが、肉を大量に買っていた人、豆腐を5パック以上買っていた人もいた。封鎖の恐れがあるとはいえ、腐りやすいものを5パック買うというのはどうかと思ったが、それを保存する術があるのだろう。伝統的なワンドアの冷蔵庫ではできない芸当だ。冷蔵庫の売れ行きが良かったのは、前述のプラットフォーム企業の販促キャンペーンの影響もあるが、こうした「買いだめ心理」も根底にあると思う。
北京で買いだめが起こっていた時、中国版ツイッター「微博」には、大きな冷蔵庫に買いだめした大量の食べ物をアップして、「これで準備万端だぜ」という書き込みもあった。
北京や上海などの大都市での感染再拡大が一段落し、社会経済活動が正常を取り戻しつつある時期にも冷蔵庫需要が旺盛なのは、北京でも行動制限緩和後にクラスターが出たように、「また再拡大するかもしれない」という心理が人々には少なからずあり、それが購入を促進する要因の一つになっていると考えられる。
中国メディアの報道によると、「6.18」で売れ行きがよかったのは、伝統的なワンドアの冷蔵庫ではなく、マルチドアだという。それは、消費者がより良いものを望むというニーズの高度化もある。購入の主体が「90後」の若い層が多いことから、普段は仕事をしているので、頻繁に買い物に行けないという事情もあろう。
いずれにしても、消費の拡大は経済の発展にプラスとなる。
現在は行動規制によって抑えられていた需要が喚起される時期で、消費が拡大しやすい。この流れを維持することが重要だ。そのためには、雇用を安定化し、賃金水準を下げない努力が企業に求められるだろう。
■筆者プロフィール:吉田陽介
1976年7月1日生まれ。福井県出身。2001年に福井県立大学大学院卒業後、北京に渡り、中国人民大学で中国語を一年学習。2002年から2006年まで同学国際関係学院博士課程で学ぶ。卒業後、日本語教師として北京の大学や語学学校で教鞭をとり、2012年から2019年まで中国共産党の翻訳機関である中央編訳局で党の指導者の著作などの翻訳に従事する。2019年9月より、フリーライターとして活動。主に中国の政治や社会、中国人の習慣などについての評論を発表。代表作に「中国の『代行サービス』仰天事情、ゴミ分別・肥満・彼女追っかけまで代行?」、「中国でも『おひとりさま消費』が過熱、若者が“愛”を信じなくなった理由」などがある。
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