亜洲週刊 2022年7月18日(月) 8時0分
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香港誌・亜洲週刊は、日本では安倍晋三元首相が殺害されたことで、安倍元首相の悲願だった憲法改正への動きが加速すると論じる、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。以下は、同記事の主要部分の要約だ。
香港誌・亜洲週刊はこのほど、日本では安倍晋三元首相が殺害されたことで、安倍元首相の悲願だった憲法改正への動きが加速されると論じる、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。以下は、同記事の主要部分の要約だ。
■国内経済、防衛強化、同盟外交の形成に尽力
安倍元首相は戦後日本の保守政治の最も重要な担い手として、第二次政権以降で成熟して柔軟な内政や外交の手腕を見せた。国内経済では金融緩和政策を中核とするアベノミクスを打ち出すなどした。当初は9000台だった日経平均株価指数は3万近くにまで上昇させた。外交関連では、戦後体制からの脱却と日本国憲法の改正という政治目標を掲げ、日本におけるの政治の実質的転換を推進した。軍事では、戦後日本の専守防衛の壁を初めて突破し、集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法を国会で成立させ、事実上の憲法改正に向けた重要な一歩を踏み出した。防衛予算では成長を堅持し、また武器輸出三原則を緩和した。
安倍元首相は米国のオバマ元大統領とトランプ前大統領、特にトランプ前大統領と親密な首脳関係を築くことで、日米同盟をさらに強固にした。2016年には「自由で開かれたインド太平洋構想」を初めて提唱し、国際社会の戦略的関係の再編をリードした。米国は同構想を受け入れただけでなく、米太平洋軍司令部をインド太平洋司令部に名称変更することまでした。欧州主要国も相次いでインド太平洋戦略の策定に追随した。
安倍首相は日米同盟を強化する一方で、地球儀を俯瞰(ふかん)する多国間同盟形成のための外交を積極的に推進した。第二次政権発足以降には80の国と地域を歴訪し、累積外遊回数は176回に達した。移動距離は地球40周分に達し、日本の国際的な政治・外交影響力を大きく高めた。
■参院選では死去した安倍元首相に対する「同情票」効果も
安倍元首相は日本の憲政史上通算最長の首相在任記録を樹立した後、20年9月16日に勇退した。バトンを渡されたのは菅義偉前首相、続いて岸田文雄首相だった。しかし安倍元首相は日本の政治経済と安全保障についての重大な意思決定を司る存在であり続けた。
安倍元首相にとって憲法改正は常に政治的悲願であり、そのために野党との戦いを繰り広げた。安倍元首相は退任後も憲法改正の早期実現に旗を振り続けた。自民党岸田政権は今回の参議院選挙で、憲法改正と防衛費をGDPの2%に増やすことを公約に掲げた。この2点は初めて、選挙の正式な焦点の一つになった。
安倍首相の死は参院選の争いにあって世情の嵐を揺るがした。日本では岸田首相を含む多くの要人や各政党の党首が一斉に、民主主義の根幹を揺るがしたとして犯人の卑劣な行為を非難する声を上げた。日本国民は暗殺テロ行為に憤り、元首相の死去に深い哀惜と同情を示した。日本の各テレビ局は、安倍首相が銃撃され死亡したことに関する最新情報を流し続けた。
安倍首相が襲撃されて死亡したのは投票の2日前だった。そのため、同情票が発生するのは必然だった。10日投票の参院選では、安倍首相が所属した与党自民党が圧勝した。自民党は改選125議席のうち8議席増の63議席を獲得し、今回の改選で獲得した議席で単独過半数に達するという事前予想以上の勝利を果たした。
ある緊急世論調査によると、安倍元首相の殺害で、それまで考えていた投票先を変えた(自民党に乗り換えた)人が13%存在した。この数字は、自民党の議席が急増した割合とほぼ一致する。また、今回の選挙の結果、参議院における改憲勢力は、可決に必要な3分の2を超えた。衆議院の改憲勢力はすでに3分の2を超えていた。すなわち、憲法改正法案の国会での成立に向けた足がかりが確立された。
■自民党は「鉄は熱いうちに打て」と憲法改正の動きを加速か
岸田文雄首相は、勇気を持って大きな課題に挑戦し、安倍首相の遺志を引き継ぎ、早期に国会で憲法改正の議論を推進し、安倍元首相が実現できない憲法改正の難題の克服に取り組むと明言した。また、最新の世論調査を見ると、憲法改正に賛成している人は50%程度存在する。
国内外の情勢がいずれも日本の憲法改正論者に有利である上に、安倍首相の突然の死に対する多くの民衆の同情など特殊な感情と相まって、政権与党自民党は「鉄は熱いうちに打て」との考えで、日本の憲法改正の推進を加速するだろう。
ただし、安倍元首相ほどの求心力は持たない岸田首相らが自民党内を効果的かつ強力にまとめられるかどうか、公明党や維新の会などとの合意形成に向けた改憲案の調整ができるかどうかは見守らねばならない。また、憲法改正案が成立するためには最終的に、国民投票で有効投票の過半数以上を獲得せねばならない。開示された憲法改正案が国民の支持を得られるかどうかも問題になる。
■中国に対する圧力と抑止力は強化の方向
安倍首相の遺志である憲法改正に向けた動きが加速する中、岸田政権は日米同盟をさらに強化しつつある。岸田首相は安倍元首相の弔問として来日したブリンケン米国務長官にも、日米同盟の強化を訴えた。このことは、岸田首相が米国に向けて、日米同盟を強化し続けることを切実に期待する政治的シグナルである。
岸田首相はまた、防衛計画の大綱など3つの重要文書を前倒しで修正している。敵基地に対する反撃能力の保有を達成し、5年以内に防衛費をGDP比2%に引き上げ、各種中・長距離防空対艦ミサイルの調達と研究開発を強化し、電子戦やサイバー戦、宇宙などの分野で軍事能力を強化する考えだ。
自衛隊と米軍は台湾で突発的な事態が発生した場合の新たな共同作戦計画草案を策定している。その中核部分は中距離・遠距離にある対敵基地打撃能力の構築と強化だ。そのため、米軍は沖縄、岩国、福岡、北熊本などに機動性のある中距離ミサイル部隊を配備する。日本側にはF-15J戦闘機12機を改造し、射程約1000キロのJASSM-ERミサイルを搭載できるようにする。日本側はさらに、F-35Aステルス戦闘機を改造し、中距離ミサイルのJSMを2発搭載できるようにする。
日米は共同で中長距離ミサイルの攻撃能力を高め、作戦半径を1000キロにまで拡大する。台湾海海峡地区、中国福建省、東シナ海などの地域がカバーされることになり、中国に対する軍事的圧力と抑止力はますます強くなるはずだ。(翻訳・編集/如月隼人)
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