中国共産党第20回全国代表大会を前に、かつて党指導者の故・毛沢東を演じ、国家安全部のアンバサダーに任命された中国の著名俳優リー・イーフォン（李易峰）に持ち上がった買春スキャンダルは中国全土に衝撃を与えた。事件発覚後、党の宣伝、出演作品、イメージキャラクター、中国最大級の視聴者評価賞「華鼎賞」の二つの賞をはじめとする賞に至るまでリー・イーフォンは全面的に「消去」された。ある分析によると、芸能界に対する一貫した整頓の他、リー・イーフォンの個人的な一部行為は毛沢東へのあてこすりとみられたかもしれず、党のイメージを損ねた。敏感な日に向けた「政治的手配」が行われることも排除できないという。

現在35歳のリー・イーフォンは2007年にオーディション番組でデビューし、ヤン・ミー（楊冪）、ウィリアム・チャン（陳偉霆）、ジリアン・チョン（鍾欣[シ童]）といった人気スターと共演した14年の「古剣奇譚」で大ブレーク。中国のトップ俳優として党公式の映像作品にも多く出演し、人民解放軍の建軍90周年を記念して制作された17年の映画「建軍大業」では中国工農紅軍第八軍軍長、第九軍団政治委員の何長工を演じた。また、昨年は人民解放軍に身を投じた大学生たちを描くドラマ「号手就位」に出演。香港政府の林鄭月娥・前行政長官が「若い俳優らが出演し、とても前向きで励まされる」と推薦したこともある。

リー・イーフォンは近年、その整った顔立ち、健康的なイメージで国家安全部、人民検察院、中国共産主義青年団（共青団）などの「イメージ大使」に起用され、国家宣伝作品にたびたび登場してきた。中国共産党創立100周年をテーマにした映画「革命者」では主演として青年時代の毛沢東を演じている。

だが、今回のスキャンダルでリー・イーフォンは「不徳芸能人」と呼ばれることになり、名声は地に落ちた。党や中国版ツイッター・微博（ウェイボー）、映像プラットフォームなどは次々に「絶交」を繰り広げ、リー・イーフォン関連の作品、広告が削除されるなどした他、「リー・イーフォン」という名の検索結果が「ゼロ」になるという状況まで現れた。全ての広告主がリー・イーフォンとの提携をストップし、そのイメージキャラクター活動を取り止めると表明している。

リー・イーフォンは8月末から9月初旬にかけて当局に身柄を拘束されたとのうわさがある。また、5月中旬にも事件が起きたとも暴露され、ちょうどその数日のオンラインイベントは中止になっている。

事情を知る人物によると、当局は買春客や性労働者のスマートフォンの記録を調べて標的を探し出すことが多いため、リー・イーフォンの買春発覚は意外な収穫だったようだ。（RR）