Record China 2022年11月6日(日) 21時30分
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中国が世界各地で展開してきた孔子学院は、目的は政治宣伝と主張する声が高まり、行き詰まりを見せている。中国は現在、別組織である「魯班工房」により、海外での職業訓練事業に注力している。
中国は2009年から、海外の大学と提携して、中国語や中国文化について教える組織の「孔子学院」を設置してきた。しかし孔子学院には、中国側の政治宣伝を行っているとの批判も高まり、閉鎖される事例も相次いでいる。米国の政府系メディアであるボイス・オブ・アメリカは6日付で、中国は、発展途上国での設置に力を入れている職業訓練校の「魯班工房」を、「孔子学院」に取って代わる存在と考えている可能性があると紹介する記事を発表した。
米国には4年前に118校の孔子学院があったが、現在までに104校が閉鎖された。中国の政治宣伝を行っているとの見方が強まったためだ。そのような流れの中で、「一路一帯」沿線の発展途上国などで事業を展開している教育組織が「魯班工房」だ。
「魯班工房」とは、紀元前5世紀の春秋時代の中国で活躍した伝説的な工匠である公輸盤にちなむ。公輸盤は公輸盤班とも書かれ、現在の山東省辺りで活躍したので魯班と呼ばれることが多い。
魯班工房を立ち上げたのは天津市政府だ。教授する内容はメカトロニクス、応用電子技術、オートメーション、ロボットなどさまざまで、現地の人材育成のニーズに合わせて設定されている。
例えばタイに設立された「魯班工房」では、学生が天津渤海職業技術学院の教師から、応用電子技術を学んでいる。アフリカのマリでは学生が、天津医学高騰専門学校の教師から、中国伝統医学を学んでいる。また同じくアフリカのジブチでは、天津鉄道職業学院の教師が学生に商工業について教えている。将来的にジブチの港湾とアジアとの貿易活性化に役立てるためという。
先進国でも中国による職業訓練の動きがある。英国に開設された「魯班工房」では、中国料理の調理人が、学生に本格的な中国料理の作り方を教えている。
初の魯班工房はタイで2016年に開設された。現在ではエジプト、エチオピア、インド、パキスタン、ポルトガル、中央アジア諸国など世界19カ国で「魯班工房」25校が活動している。オーストラリア国立大学グローバル・マネジメント・カレッジのダーク・ファン・デア・クレー研究員は、「現状の規模では、魯班工房の所在国に対する貢献も、地政学的あるいはソフトパワーのツールとしての役割も限定的だ。しかし魯班工房の開設が規模を拡大し続ければ、状況は変わる可能性がある」との見方を示した。
魯班工房と孔子学院の海外進出方式は基本的に同じだ。魯班工房の事業を立ち上げる際には、まず現地の協力パートナーを探す。合意が達成されれば現地の教育機関内に魯班工房を設立し、中国標準の関連技術を教える。学生は修了後、現地で就職する。
魯班工房は天津市政府による事業であるにもかかわらず、習近平国家主席は国際的な場で、魯班工房に関連する発言を繰り返している。22年には、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、キルギスのジャパロフ大統領と会談した際に、それぞれの国での魯班工房設立に言及した。
魯班工房の事業は中国にとって、比較的少ない資金投入で、相手国の対中感情をよくする効果を期待できる。さらに、現地の若者に職業訓練を施すことで、中国が相手国内で展開するプロジェクトの費用対効果を改善することもできる。
また、中国標準の技術を知る人材が増えれば、相手国がプロジェクトを展開する際に、中国をパートナーの第一候補と見なす確率も高まる。
「魯班工房」は相手国にとって、早急に必要としている分野での技術を無償で提供していることになる。英国のノッチガム大学現代中国研究学院のジョナサン・サリバン准教授は「魯班工房」について、「受け入れる発展途上国を責めることはできない」との見方を示した。中国が唯一の支援提供者であれば、相手国側が受け入れるのは当然だからだ。事実、中国による「魯班工房」の推進は、多くの国で喜ばれているという。
クレー研究員は、先進7カ国(G7)や日米豪印戦略対話(クアッド)は、「魯班工房」に似た仕組みで、透明性がより高く、相手国の雇用事情とより合致するプロジェクトを展開すべきとの見方を示した。その背景には、世界的にみて職業技能を持つ人材の不足が深刻である状況があるという。(翻訳・編集/如月隼人)
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