急速な発展遂げ世界と共に未来を目指す中国民間航空界とは―最高学府学長が紹介

中国新聞社    2022年11月13日(日) 22時0分

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中国の民間航空産業は急速に発展している。例えば旅客機の開発でも、比較的大型のC919(写真)が年内にも商用飛行を開始するとされる。民間航空産業の現状と目指す方向はどうなのだろうか。

中国の民間航空産業は急速に発展している。例えば旅客機の開発を見ても、乗客が最大で170人程度搭乗できるC919は、年内に商用運航を開始するとされている。同機は世界的に権威を認められている米連邦航空局(FAA)の型式証明取得は念頭に置いていないため、中国以外での導入は限定的との見方が強いが、それでも幹線路線用の旅客機を自主開発できた意義は大きい。中国における民間航空関連の人材を育成する最高学府が中国民航大学だ。航空関連工学の専門家であり同大学学長の丁水汀氏はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、中国の航空産業界の現状と今後の方向性について説明した。以下は丁学長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■過去10年は急速な発展期、機体設計やエンジン開発で長足の進歩

過去10年間は、中国の民間航空の急速な発展期だった。それ以前、例えば機材については、中国では主に、欧米製の機材の運用や保守整備が行われていた。例えばエアバス機やボーイング機やその搭載機器、さらに空港設備や航空管制施設関連についてだ。しかし中国での航空関連の機材や施設の運用管理は、極めて良好な状態になった。

そのため高い効率や安全な運航が実現し、さらに航空輸送量も米国に次ぐ世界第2位になった。中国は今や、民間航空大国だ。さらに、中国では航空機製造業も発展してきた。例えば、最大で座席数が100席程度のARJ21は、すでに商用運航している。さらに大型のC919も、間もなく商用運航が始まる見通しだ。

航空エンジンの開発も急速に進んでいる。AES100ターボシャフトエンジンは2年内に認証を取得する可能性が出てきた。C919は今のところ、米仏合弁会社が開発したエンジンを搭載しているが、代替用の国産エンジンであるCJ-1000Aの開発も順調に進んでいる。

■民間航空の発展トレンドは環境関連とAI、それらが実現する業界の姿とは

現在の国際民間航空業の発展の方向性にはいくつかの重要なテーマがある。それらは中国民間航空の第14次五カ年計画発展計画と極めてよく合致している。

まずは環境保護と持続可能性だ。私が国際民間航空機関(ICAO)のイベントで行った報告のテーマは、新エネルギー航空機の安全性認証と商業的成功を促進する方法だった。同業者の間では国際的に、植物などバイオマス由来原料や、飲食店や生活の中から排出される廃油などを原料にする持続可能な航空燃料(SAF)がカーボンニュートラルを達成するための最善かつ最速の道筋だとの見方が一般的だ。SAFの利点は既存の航空機やエンジンの構造、さらに既存の空港の燃料貯蔵・輸送システムを変える必要がないことだ。

国際航空カーボンオフセット・排出削減スキーム(CORSIA)では、航空分野の炭素排出削減が2027年に強制的に実施される。これは国家の生存権と発展権の問題にも関わるもので、中国の民間航空業はこれに対して布石を打ち、壁を突破すべきだ。

もう一つの重要なテーマは人工知能(AI)などの利用で、民間航空の安全性と経済性を高めることだ。例えば、AIを利用して航路を最適化して省エネや排出削減を図る。また、リアルタイムでシステム全体の安全性を確保することも可能になる。

さらに、航空業界の新たな分野の勃興も考えられる。例えば電動ヘリコプターや、都市における3次元的輸送を可能にする無人機または有人機だ。これらは、将来的に人々の生活様式を変える可能性がある。

C919

■新たな国際ルールづくりに中国はもっと関与すべきだ、そのために必要なこととは

民間航空は国際化された業界であり、完全に閉鎖的な独自のルールを作ることは不可能だ。中国は次世代の国際規約の発展傾向に照準を合わせ、世界と共に試練に直面せねばならない。

欧米諸国も新構造あるいは新エネルギー航空機への挑戦を行うだろう。これらの新分野では、皆が同じスタートラインに立っているので、中国も国際規則についての自らの案を提出することがしやすい。また国際民間航空機関が提供するプラットフォームを利用して交流し、ルールづくりに参与する過程で国際的な発言権を形成することができる。

われわれの研究チームは、中国工程院(中国工学アカデミー)の支援を受け、すでに中国における航空エンジン自主規則の構造と未来技術群の方向性についての研究作業を完了した。この成果により、関連モデルを新エネルギー航空機、持続可能エネルギーなどの認証に拡張できる。国際交流を通じて海外の仲間と協力し、共通認識を形成し、その成果を将来の国際ルールに活用したいと考えている。先はまだ長い。中国は民間航空分野でもグローバル・ガバナンスにもっと関与すべきだ。そのために最も基本的で大切なことはコミュニケーションだ。

もちろん、革新的な研究の実力と基盤がなければ、海外の多くの関係者に納得してもらえる国際的なルールや基準の提案は難しい。運輸業および関連行政と製造業を深く融合させなければ、次世代の国際規制の“チャイナ・ソリューション”を形成することは不可能だ。今、最も求められているのは、この運輸関連と製造業が力を合わせることだ。

中国の民間航空製造業の発展速度はますます速くなるだろう。ここで注目すべきは、工業全体の業界構造や人材システムが徐々に形成されつつあることだ。私は中国の民間航空製造業に自信を持っている。

私が奉職している中国民航大学は21年に創立70周年を迎えた。中国の民間航空業界に絶えず、トップクラスの人材を提供してきた教育機関だ。中国民航大学では70年の歴史を通じて、「RSR」という人材育成の理念が定着した。最初の「R」は「尊重(respect、リスペクト)」だ。生命に畏敬の念を持ち、職責に畏敬の念を持ち、規則に畏敬の念を持つことだ。学生に、そのような考え方をしっかりと持たせる。このことが、中国民航大学の根底にある。

次の「S」は「suspect(サスペクト)」、つまり疑念を持つことだ。わが校の学生は新たな要求に直面した場合に、さまざまな疑問を想起できるように習慣づけられている。最後の「R」は「research(リサーチ)」すなわち研究だ。学生が自らの未来を勝ち取るため、民間航空業界が、業界の未来を勝ち取るためには、常に研究を続けねばならない。中国民航大学の校風には、この「RSR」がしっかりと定着したと自負している。(構成 / 如月隼人

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