Record China 2022年11月18日(金) 11時0分
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香港メディアの香港01は17日、福島の(処理する前の)核汚染水の中には64種の放射性物質があるが、私たちは心配する必要があるのだろうかとの記事を掲載した。
記事はまず、昨年4月に日本政府が福島第一原発にたまった100万トンを超える汚染水を処理した上で太平洋に放出することを正式に発表して以降、トリチウムと呼ばれる放射性物質が広く議論の的になったと説明。「だが、トリチウムは海洋および人体にとって危険なのだろうか」と提起した。
そして、インペリアル・カレッジ・ロンドン元教授で、チョルノービリ原発事故を長年研究してきたGeraldine Thomas氏の話を紹介。同氏は「トリチウムは軽度の放射性を持つ水素で、重水素とも呼ばれ、医療用現像剤の製造や避難用夜光塗料の原料などに一般的に使用されている」とし、「他の放射性物質と同様に、人体に影響を及ぼし、高線量の体内被ばくはがんを引き起こす可能性がある」とした。
一方で、「トリチウムから放出されるベータ線は最も弱いものでは羽毛のようで、人体の皮膚すら通り抜けることができず、体内に取り込まれたときだけ人に影響を及ぼす。水の状態で人体に入ったとしても半減期(放射能が弱まり、半分になるまでの時間)はわずか10日。水を470ミリリットル飲んだらすぐにトイレに行きたくなるが、トリチウムが体内を通過するのはそれと同じくらいの時間だ」と述べた。
記事は、東電がトリチウムを含んだ処理水を100倍以上に希釈し、世界保健機関(WHO)が定める飲料水基準の7分の1以下にするとしていることに言及。Thomas氏は「海水中のトリチウム濃度がWHOが定める上限値と同じと仮定すると、1年間に毎日2リットルの水を飲み続けてようやく0.1ミリシーベルトの放射線量を受けることになる。これは、一般に人が2週間の間に浴びる自然界の放射線量に相当する」とし、「正常な人がこれほどの量の海水を飲むとは考えにくい。飲み終わる前に病気になるだろう」と述べたという。
記事は続いて、海産物を経由して人体に入る可能性に言及。米ウッズホール海洋研究所の海洋化学者Ken Buesseler氏は「トリチウム以外の63種の放射性物質は重視する必要がある」と述べた。同氏は18年にサイエンス誌に掲載した記事の中で、トリチウムの放射線係数は実際には64種の物質の中で最も低いと指摘していたといい、記事は「他の放射性物質の中には海底に沈着しやすく、魚の体内に蓄積しやすいものもある。例えば、炭素14の濃縮係数はトリチウムの5万倍、コバルト60とルテニウム106はそれぞれ30万倍、40万倍だ」とした。
Buesseler氏はこうした物質が太平洋上を移動することなく日本近海に堆積していくことになるとする一方、食物連鎖を経て人体に影響を与える可能性については「はっきりとは分からない」とし、「分かっているのはこれらが海産物の中に入る可能性は高いが、含有量の多さは完全に排出計画によって決まるもので、汚水の浄化度がどれだけ高いかによる。トリチウム以外の放射性物質については注意深く見ていく必要がある」と述べたという。
記事は、「東電が提出した計画では、この64種の放射性物質による人体への被ばく量は自然界での被ばく量の3000~3万分の1にすぎない。この数字は国際原子力機関(IAEA)が定めた評価方法に基づき、海で泳いだり業界類を食べたりして内部や外部から被爆する可能性、日本の1人当たりの魚介類摂取量を考慮して算出したものだ」と紹介した。
Thomas氏は「これらの計算モデルはいずれも最悪のシナリオを想定してのものだ。東電は現在、廃水の線量目標値を年間0.05ミリシーベルトに設定しているが、これはあなたに何の影響もない。東京からロンドンまで飛行機で10時間ほど飛ぶ間に0.07ミリシーベルト被ばくすると言われるため、このような低い線量で心配するのは理にかなっていない」と語ったという。
記事は「恐怖は誇張されている」とし、Thomas氏が長年、原発事故問題の研究に携わる中で「チョルノービリ原発事故でも福島原発事故でも、最終的に放射線の影響を受けてがんになり、死亡する人数は人々が思っているよりもずっと少ない」と述べたほか、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が2008年にチョルノービリ原発事故について「皮肉なことに、私たちの放射線に対する恐怖は、実際には放射線そのものの健康被害よりもずっと大きい」と報告されたことを紹介。また、IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長も「海洋放出が現実的な選択肢であり、国際的な慣行に合致する」との考えを示したことを伝えた。
一方で、日本の専門家からは「希釈濃度と排出量の制御が重要であり、影響は小さいがリスクがゼロであるとは言えず、そこが論争になっている」との見方も出ていると説明した。また、Buesseler氏が、監督する立場であるIAEAが公開するデータが十分ではなく、排出計画の詳細を外部から判断することができない点を批判していることにも言及。福島の漁業は近年、ようやく回復の兆しが見え始めてきたが、来春に処理水の海洋放出が始まれば再び懸念が再燃する可能性があるとし、「日本は透明性を持ち、プロジェクトのモニタリングの詳細を公開することで、国民の疑念を解いていく必要があるかもしれない」と結んだ。(翻訳・編集/北田)
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