中国のミナトが大躍進、世界ベスト10に7港=コンテナ港急拡大―アジアの時代、日本復活に期待

山本勝    2022年11月27日(日) 12時0分

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1990年代からの中国をはじめとするアジアのコンテナ港湾の大躍進は驚異的だ。グローバルな物流の拡大を見据えた大規模投資とコンテナリゼーションの特性を生かした港湾のセールス力がその背景にある。

1990年代から中国をはじめとするアジアのコンテナ港湾の大躍進は驚異的だ。グローバルな物流の拡大を見据えた大規模投資とコンテナリゼーションの特性を生かした港湾のセールス力がその背景にある。競争力強化による日本の港湾の復活に期待したい。

1966年米国から始まった海上貨物輸送の革命「コンテナリゼーション」は、瞬く間に在来貨物船を駆逐して世界の海を席巻した。いまや2万個(TEU=20フィートの海上コンテナに換算した荷物の量)積みのコンテナ船を最大クラスとして、全世界でフルコンテナ船の可積載量は約2000万TEUに達し、世界の隅々の港に運ばれている。

コンテナに積まれる貨物は、コンテナに収まる限りの工業製品・部品、衣類、建設資器材、家具、おもちゃ、IT・電気製品、食料などなどで、世界の人口の増加とグローバル経済の拡大とともに人々の生活向上の欲求、嗜好の多様化にこたえる形で国際間の貿易量が増大していった。

経済の成長、拡大の中心はなんといってもアジアで、とりわけ1990年代からの中国の発展はめざましく、周囲のアジアの国々を巻き込みながらコンテナ物流が急増、拠点となるコンテナ専用港湾の建設が東・東南アジアの諸港において急ピッチで進んだ。

◆日本最大・東京港は39位

1980年のコンテナ取扱量のトップはニューヨーク・ニュージャージー港で2位がオランダロッテルダム港、3位香港、4位神戸港でトップテンにアメリカが4港も入っていた。20年後の2001年では香港がトップに立ち、シンガポール港、釜山港と続き、上位5港はすべてアジア。ヨーロッパはその後塵を拝し、神戸港は25位に沈没、東京港がやっと18位に浮上する。8年後の2019年には上海港が一番に躍りでて、2位のシンガポール港と6位の釜山港のほか9位まですべて中国の港が占め、10位にやっとロッテルダム港が顔をだす。わが国の港では東京がトップだが、世界の順位は39位とさらに低下した。

ちなみに、2019年の世界の港湾のコンテナ取扱量は8億1000万TEUで2010年比1.4倍に増加、同じく日本以外のアジア諸港は4億TEUで1.5倍増、日本は2200万TEUで1.1倍と、1990年以降のアジア、世界のコンテナリゼーションの急拡大の中で日本の港湾が相対的に低迷している事実が浮き彫りになる。

今はインターネットで世界の港湾の現状を映像で見ることができるので読者のみなさんもぜひ検索してみてほしいと思うが、世界一位の上海港をはじめとする中国各港、2位のシンガポール港、6位の釜山港のコンテナターミナルの規模の大きさに驚愕する。2019年の取り扱いコンテナ数量でみれば、世界一の上海港は日本1位の東京港の10倍、シンガポール港は8倍、韓国の釜山港も5倍で、取扱量はコンテナターミナルの規模にほぼ比例するとみれば、各港がいかに巨大な拠点を築いているかがわかる。

筆者は現役時代、コンテナリゼーションが始まって暫くしたころの上海、シンガポール、釜山を訪れた経験がある。各港とも既存の港の一角をコンテナ船専用バースとして確保する一方、近傍あるいは新たな埋め立て地をコンテナターミナルとして大々的に造成する計画が進んでいて、コンテナリゼーションにかける意気込みが伝わってきたのを覚えている。それから40年、後背地の経済圏の発展に応えるため、あるいはアジア全体の経済ネットワークを利用するかたちでコンテナの集積地としてさらなる取扱量の獲得を狙って、港湾の整備を着々と進め、競争力の強化を図ってきた各国、各港湾の胆力と努力に畏敬すら感じる。

◆日本のコンテナ貨物輸出入、6割以上がアジア域内

世界全体のコンテナの荷動き量は、2020年1兆6400万TEUで、アジア―北米、アジア―欧州を基幹航路とするものの(両航路で約30%を占める)、近年では東・東南アジア域内の方が圧倒的に多くなっている。ちなみにわが国のコンテナ貨物の輸出入はともにアジア域内が6割以上を占め、北米、欧州はそれに次いで10%~10数%である。

アジアの港湾の大躍進の背景にあるのはもちろん後背地の経済の発展であるが、さらにアジアと北米、欧州間の輸送を大型母船による基幹航路として、アジア域内のコンテナを拠点となる港湾に比較的小さな船で集積し母船に積み替えるという、航路網のスポーク・アンド・ハブ化がすすんだことにもよる。迅速な積み下ろしを可能とするコンテナ輸送の特性を生かし、輸送全体の効率化(基幹航路の母船の大型化によるTEU当たりの輸送費低減、寄港地減など)をねらったもので、ハブ港の地位を獲得した港湾はスポークとして結ばれる港からフィーダーされてくる基幹航路向けの大量の積み替えコンテナも扱う(これをトランシップと称す)ことになり、その規模は一挙に拡大する。

シンガポール港は東西交易の結節点という地の利を生かして昔から中継型ハブ港として発展してきた歴史があり、直近でもトランシップコンテナの比率は9割に達する。近年ハブ港として注目されるのは韓国の釜山港だ。トランシップの扱い量は50%に迫る勢いで、全体のコンテナ取扱量でも世界6位の大港湾である。

◆釜山港に奪われたハブ機能

日本の港湾が低迷する原因の一つには、日本の主要港湾のハブ機能が釜山港に奪われたことにあるともいわれる。主要航路の一つのアジア―北米を例にとると、中国をはじめとするアジアの貨物が日本に集積され母船に積み替えられてアメリカに向かうという物流が逆流しているというわけだ。

釜山港の大型コンテナ船の入出港コストは横浜港の7割ほどとされる。コストとセールス力の両面で国際競争力を強化することに尽きるが、コロナ禍で混乱した世界の海上物流も通常に戻りつつある今後、日本の港湾の復活に期待したい。

■筆者プロフィール:山本勝

1944年静岡市生まれ。東京商船大学航海科卒、日本郵船入社。同社船長を経て2002年(代表)専務取締役。退任後JAMSTEC(海洋研究開発機構)の海洋研究船「みらい」「ちきゅう」の運航に携わる。一般社団法人海洋会の会長を経て現在同相談役。現役時代南極を除く世界各地の海域、水路、港を巡り見聞を広める。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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