W杯、アジア勢は次回も活躍できるか―出場枠増で中国にもチャンス?

長田浩一    2022年12月20日(火) 8時0分

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カタールで開催されていたサッカーのワールドカップはアルゼンチンの3度目の優勝で幕を閉じた。

カタールで開催されていたサッカーのワールドカップ(W杯)はアルゼンチンの3度目の優勝で幕を閉じた。この大会は、歴史的な名勝負となった決勝戦を筆頭に好試合が多く、1970年メキシコ大会からW杯を見続けてきた私にとっても印象に残る大会だった。アフリカ勢として初めて準決勝に進出したモロッコの躍進が注目を集めたが、日本が一次リーグでドイツとスペインを破るなど、アジア勢の奮闘を称賛する声も聞かれた。そこで、いささか気が早いかもしれないが、アジア勢は2026年の次回大会でも活躍できるのか、予想してみた。

◆3カ国が決勝トーナメント進出

今回、アジア予選を勝ち抜いてW杯に出場したのは日本、韓国、オーストラリア、イラン、サウジアラビアの5カ国で、これに開催国枠のカタールを加えアジアから6カ国が出場した。このうち日韓豪の3カ国が一次リーグから勝ち上がり、16カ国で争う決勝トーナメントに進出したが、いずれも1回戦で敗退した。

ちなみに、前回ロシア大会で16強に進んだのはアジアでは日本だけで、前々回のブラジル大会ではゼロ。このため、一部メディアは「アジア勢の躍進」と報じたが、その後のモロッコの4強入りでやや影が薄くなった。「躍進」はほめすぎで、「活躍」がいいところだろう。

とはいえ、カタールを除く5カ国が少なくとも1勝を挙げるなど、アジア勢が過去2大会に比べ存在感を放ったのは間違いない。その理由としては、地の利、通常の6~7月開催ではなく11~12月開催となったことなどを挙げる向きもあるが、決定的な要因とは考えにくい。地の利や開催時期が理由なら、その恩恵を最も受けるはずの中東勢がすべて一次リーグで姿を消したからだ。私は、アジア勢全体の若干のレベルアップと、幸運が味方した結果と考えている(特に韓国、オーストラリア)。

◆出場枠、8.5へ増加

では、初の3カ国共催(米国、カナダ、メキシコ)で行われる26年の次回大会はどうなるのか。4年後(次回は通常通り6~7月開催なので、厳密にいえば3年半後だが)を占ううえで最も重要な要素が、参加国が32カ国から48カ国に増え、それに伴い大会形式も大きく変わるという点だ。

全体の参加国増に伴い、アジアからの出場枠は今回の4.5から8.5に増える(0.5は他大陸とのプレーオフ)。近年のW杯では、アジアからの参加国は今大会の予選を勝ち抜いた5カ国に独占されていたが、増枠により、カタール大会予選でアジア最終予選まで進出したオマーン、中国、ベトナム、アラブ首長国連邦(UAE)、イラク、シリア、レバノンといった国々にもチャンスが広がる。

国際サッカー連盟(FIFA)は、中国市場を意識して参加国増加を決めたとも言われる。その真偽はともかく、中国にとっては、2002年日韓大会以来のW杯出場を果たす絶好のチャンスだ。中国サッカーについては、4月4日付当欄でいささかネガティブなことを書いたが、ポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。習近平主席の悲願を実現できるのか、大いに注目したい。

◆”草刈り場“となる恐れも

アジアからの参加国は増えるが、本大会で活躍できるかどうかは別問題だ。次回大会の開催形式は確定していないが、グループステージでは48カ国を3カ国ずつ16グループまたは4カ国ずつ12グループに分け、決勝トーナメント進出を争うことになりそう。どちらの形式になるにせよ、強豪国が集中しないようにFIFAランクに基づいてグループ分けが行われるはずだ。3チームで1グループの場合、原則としてFIFAランクの上位16カ国、中位16カ国、下位16カ国からそれぞれ1チームが入る。

日本やイラン、韓国のFIFAランクは、カタールW杯直前の時点で20位台だったが、予選で敗退したアジア諸国のFIFAランクはほとんどが70位台かそれ以下(中国は79位)。これら各国は、本番までによほど国際試合で好成績を残してランクを上げない限り、アジア予選を突破できたとしても、グループステージでは明らかに格上の複数の相手と同居することになる。

こうしてみると、増枠の恩恵を受けるアジアのチームには、本大会で厳しい試練が待ち構えているのは間違いない。下手をすれば今回3戦全敗となったカタールのように、上位チームの“草刈り場”となりかねない。アジア勢が次回も存在感を発揮するには、日本はじめ常連国の頑張りが不可欠となる。

◆日本は“サッカー自虐史観”脱却を

最後に、日本代表チームの実績について一言申し上げたい。今大会の結果、日本は21世紀の6回のワールドカップのうち、4大会で16強に勝ち進んだ。実は、今世紀に4回以上決勝トーナメントに進んだ国は、ブラジル(6回)、アルゼンチン、スペイン、イングランド、メキシコ(以上5回)、フランス、ドイツ、オランダ、ポルトガル、米国、日本、スイス(以上4回)の12カ国だけという事実をご存じだろうか。

強豪のベルギーや優勝経験国のウルグアイも、今世紀では3回しか決勝トーナメントに進出していない。過去優勝4回のサッカー大国イタリアに至っては、最近2回は欧州予選で姿を消したこともあり、16強に残ったのは2002、06年の2回だけ。クロアチアも前回と今回だけだ。世界で最もポピュラーなスポーツの世界一の座を懸けて、各国が死に物狂いで戦うW杯での16強入りというのは、それだけ難しく、重い。

日本は、過去4回の決勝トーナメントではいずれも1回戦で敗退(うち2回はPK負け)。また、カタールでドイツやスペインに勝ったといっても、内容的に優ったわけではないので、「世界のベスト12に入った」などと言うつもりはない。とはいえ、1回や2回ならともかく、2002年からの20年間に4回グループリーグを勝ち抜くには、一定レベル以上の代表チームを安定的に保持する必要があり、偶然や幸運では説明できない。サッカー冬の時代と言われた1970年代から、コツコツと底辺を拡大してきた関係者の努力が、好選手の継続的な輩出という形で実を結んだのではないか。

カタール大会のグループ抽選会でドイツ、スペインとの同居が決まったとき、サッカージャーナリストと称する人たちから「絶望」「勝てるわけがない」といった悲観論が噴出した。アジアでも勝てず、W杯など夢の舞台だったJリーグ発足以前の意識を引きずっているようだった。しかし、21世紀のW杯での成績を踏まえると、そうした“日本サッカー自虐史観”とでも言うべき観念を捨てる時期に来ているのではないか。少なくとも過去20年間の実績には自信を持っていいし、選手はもっとリスペクトされていい。

■筆者プロフィール:長田浩一

1979年時事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任。現在は文章を寄稿したり、地元自治体の市民大学で講師を務めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中国との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外国の地は北京空港でした。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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