Record China 2022年12月26日(月) 6時0分
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中国では新型コロナウイルスの感染が「スパイラル状の激増状態」になっており、専門家からは今後数カ月の前途について「非常に非常に困難」との見方も出ている。写真は北京市内の病院の様子。
米国政府系メディアのボイス・オブ・アメリカは24日付で、中国では新型コロナウイルスの感染が「スパイラル状の激増状態」になっているとして、今後数カ月の前途は「非常に非常に困難」とする専門家の意見を紹介した。
■中国政府の発表では、実態をつかみきれない
中国政府は、毎日の新型コロナウイルスの新規感染者数や死者数、完治した人数などを公表している。しかし、そも感染の検査を減らしており、さらに軽症症例の報告を停止しているため、現在の感染拡大が具体的にどの程度の規模なのか把握することは困難だ。
感染者数が急増した河北省の保定市と廊坊両市と周辺地域では、AP通信の記者が病院の集中治療室がすでに満床であることや、救急車で搬送した患者の多くが医療施設から受け入れを拒否されるのを目撃したという。また、中国各地で、会社職員などの欠勤、解熱薬の不足、火葬場での従業員の時間外労働が広く報道されていることも、新型コロナウイルスが各地に広がっていることを示唆している。
世界的に見て、オミクロン株の流行で、大きな被害を受けた地域の一つが香港だ。香港は2022年になりオミクロン株感染が爆発的に広がった。香港衛生署によると、人口約740万人の香港で22年になってから1万1000人が、新型コロナウイルス感染症で死亡した。その95%以上が、60歳を超えていたという。ウイルス学を専門とする香港大学李嘉誠医学院の金冬雁教授によると、80歳以上でワクチン未接種の人の死亡率は15%だったという。
■高齢者を中心にブースタ接種は少ない状態、優先順位に批判の声も
中国では人口の90%がワクチンを接種しているが、ブースター接種を受けた人は人口の約60%にとどまっている。さらに、新華社通信によると中国大陸部では80歳以上の人900万人がブースター接種を受けていないなど、高齢者を中心に感染しやすい状態の人が多い。
中国ではワクチン接種が加速されており、現在までに1日当たり100万回以上の摂取を実施するようになった。インドのベローレ医科大学でウイルス学を研究するガガンディープ・カン博士は、高齢者のワクチン接種を優遇することがカギになると指摘した。
しかし米疾病予防管理センター(CDC)駐中国事務所のレイ・イップ主任によれば、中国は他国と異なり、より流動性の高い若者へのワクチン接種を優先している、12月になってから60歳以上を対象とした接種キャンペーンが行われたが、どの程度成功したかは不明という。
イップ主任はさらに、中国では「すべての人がすべての段階にわたりワクチンで保護されることを確実にするのに十分な注意を払われていなかった」と述べ、さらに「彼らがこの特別な追い上げ努力をどのように成し遂げるかによって、いくつかの決定的な結果が生まれるかもしれない」と指摘した。
■中国政府発表の集中治療病床の追加に疑問の声
中国政府・国家衛生健康委員会は、中国では11月22日時点で、人口10万人あたりの集中治療病床が4床しかなかったが、12月9日には人口10万人当たり10床に達し、総数は13万8000床になったと説明した。しかし武漢大学人民病院呼吸内科の余昌平医師は「数字がこんなに短期間でこれほど上昇することはありえない」と、政府の説明に疑問を示した。
仮に、人口当たりの集中治療病床の急増が事実としても、治療体制が拡充されたとは限らない。世界におけるこれまでの経緯からしても、集中治療を必要とする患者に対応するのに十分な数な専門医療スタッフがいるかどうかが決め手になるからだ。
中国・国家衛生健康委員会によると、中国で集中治療施設に勤務する医師は8万人強で看護師は22万人だ。看護師は17万7700人を追加することができるが、医療スタッフ数はそれでも不足している。さらに余昌平医師によると、このところ新型コロナウイルス感染患者は増加しつづけており、余医師の勤務先では、ほとんどの医師が感染したという。医療スタッフは短期間に大量の患者を受け入れることで、重圧にさらされているという。
■死亡者は200万人に達するとの予測も、専門家「非常に非常に困難」
科学の専門家らは、死亡率はワクチン接種率や人々の行動様式、病院の能力強化に向けた取り組みなどさまざまな要因に左右されるため、今後の推移については予測が困難だ。
米ワシントン州シアトルに本部を置くワシントン大学の健康指標・評価研究所は、中国でウイルスの完全拡大が制御不能になった場合、23年末までに死者数が100万人に達する可能性があるとの予測を示した。ただし同研究所のアリ・モクダッド教授(健康指標科学)は、中国政府が人と人の接触を規制する措置を復活させることで、死者数を減らせる可能性があるとの見方を示した。
米ハーバード大学T・Hチャン公衆衛生大学院感染症ダイナミクスセンターのビル・ハナージ共同所長は12月14日時点で、中国では200万人が死亡するとの予測を示し、中国における今後の推移について「非常に、非常に困難だ」と述べた。ハナージ共同所長によれば、ワクチン接種率が少ない場合には、状況はさらにひどいことになるという。
ウイルスとは、生物の細胞に入り込んで、細胞の活動を変化させて自らの増殖に利用する。ウイルスの変異は、増殖の際に起こりうる現象だ。すなわち、感染者が増加すれば、ウイルスの変異株が出現しやすいことになる。米マサチューセッツ大学医学部のジェレミー・ルバン教授は、中国における感染の大幅な拡大により、「より危険な変異株が出現する可能性が高まった」と指摘した。ルバン教授は、中国では警戒すべき変異株がまだ出現していないとして、現状では「心配する具体的な理由はない」と述べた上で、「もちろん、多くの感染者が出ることは、常に悪いことだ」と付け加えた。(翻訳・編集/如月隼人)
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