人民網日本語版 2022年12月29日(木) 17時30分
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教授と学生2人が、数年前に参加した「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」を振り返った。
夏のある日の夕方、東京都内のレストランで、数年前に参加した「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」を振り返り、日中関係という研究課題をめぐって会話する3人の姿があった。3人のうち1人は同プロジェクトの発起人である在日華人・范云涛教授で、あとの2人は中国訪問団のメンバーになった経験がある学生、御器谷裕樹さんと郭拓人さんだ。人民網が伝えた。
御器谷さんは、「当時、中国の社会や政治にとても興味があったものの、中国語が話せなかったので、勉強するきっかけがほしいと思っていた。ちょうどそんな時に、先生に誘われて、『鑑真和上 中日学生交流プロジェクト』に参加した」とし、一方の郭さんは、「僕の父親は中国人、母親は日本人なので、ずっと日中関係に関心を寄せていた。大学に入ってから、日中友好の架け橋となるために、各種社会活動に積極的に参加するようになった。『鑑真和上 中日学生交流プロジェクト』があるのを知り、すぐに申し込んで、好運にも学生代表になれた」とした。
■鑑真の足跡を訪ねたことがきっかけで中国問題を研究する道へ
慶応大学の博士課程に在籍中の御器谷さんと中国の縁は子供の頃にまでさかのぼる。初めての海外旅行で両親に連れられて行ったのが、陝西省西安市だった。そしてその時、中国はとても面白い国だと感じたという。2008年に北京五輪が開催されたことで、御器谷さんの中国に対する興味はさらに強まり、中学校に入学してすぐに、中国語を独学で始め、漢詩が好きになったという。
2015年、范教授に誘われた御器谷さんは、「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」に参加し、日本の学生と共に中国へ行き、鑑真の足跡を訪ねたほか、中国の大学生と交流した。その中国訪問により、御器谷さんは中国についてより直観的に、深く理解するようになった。
御器谷さんは、「それまでは、社会問題や経済問題を表面的に見ているだけで、一人一人の価値観などについては理解していなかった。しかし、中国の学生と交流したことで、中国に対する印象が大きく変わった。例えば、進学や就職など、両国の学生は同じ悩みを抱え、同じ問題に直面しているということが分かった。中国の学生と直接対話するというのは、とても貴重な経験で、大きな収穫があった」と振り返る。
プロジェクトに参加した翌年、御器谷さんは北京大学に留学し、中国の歴史や国際関係を学ぶようになった。「プロジェクトに参加して6、7年たったが、ずっと中国問題に関する研究を行っている。プロジェクトが僕と中国の縁を深めるとても良いきかっけとなった」と話す。
一方、中国で生まれた郭さんは、子供の頃に両親と共に日本にやってきて、その後日本に在住している。日中両国の文化の影響を受けて育った郭さんは大学卒業後、日中間の懸け橋になることを志し、カナダや中国、英国などを訪問して、中国問題を研究し、関連する学位を取得。また、各種実践活動に積極的に参加し、非営利の医療・人道援助団体「国境なき医師団」として日本で活動しているほか、日本代表団のメンバーとして2019年の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議に参加したり、日中学生会議、日韓青年会議といった青年交流活動に参加したりしている。
2017年に「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」に参加した郭さんは、「参加した理由は、鑑真和上をとても尊敬していただけでなく、その歩んだ道は将来、日中関係を良い方向に向かって発展させる上で非常に有効だと思っているから」と語る。
そして、「プロジェクトに参加した時、中国の大学生と、将来どのように日中関係を改善するかについて語り合った時のことがとても印象に残っている。『日本と聞いて』、または『中国と聞いて』、誰を連想するかという質問に対して、中国の学生はアニメのキャラクターやアイドル、芸能人などを思いついたのに対して、日本のほとんどの学生は政治家の名前を挙げた。そのため、日本の青年や学生は多くの場合、政治という角度から中国を見ているのに対して、中国の青年や学生は多くの場合、文化という角度から日本を見ているのだと感じた」と振り返り、「両国関係を理解する上で、片方の角度から問題を見るだけでなく、相手の角度からも日中関係を見るということが非常に重要だと思った。これが後に中国や英国に留学して中国問題を研究するきっかけになった」と語る。
■中国の視点から中国を観察する研究者を目指して
御器谷さんは、「中国に留学するまでずっと日本で暮らしていたので、日本の視点から中国を理解していた。しかし、中国に行ってからは、実際にそこに身を置き、じっくり観察し、今までにない視点から見ることができ、今までにないことを感じることができ、大きな収穫を得た。そのような観察や中国の学生と直接交流することで、中国ではいろんな人が生活していて、多種多様な主体が存在し、経済や政治にもいろんな角度があり、偏った見方をせずに、全体像を見るようにしなければならないと考えるようになった」と語る。
そのため、御器谷さんの中国に対する関心は、古代文化から現代社会へと、経済問題から政治問題へと少しずつ広がっていった。そして、大学卒業後、修士課程、博士課程へと進学し、中国問題の研究に専念する道を歩んだ。
中国問題を研究する若手研究者である御器谷さんは、日中関係のあるべきスタイルについて、自分なりの考えをもっており、「日本と中国というと、人によって考えることは異なる。人の価値観は各自の心に存在し、それがその人の本性であるため、自分が相手に何かを期待したとしても、相手の価値観を変えることはできない。一人一人が自分らしく生き、自分の夢や目標に向かって努力することを願っている。中国人か日本人と『分類』されることは望まない。みんなが自分の好きなスタイルで生活し、そこからまっすぐ伸びた延長線上で交流するというのが良好な関係だと思う」と語る。
中国の視点から中国を観察し、個人の価値観という角度から日中関係を考えるというのが、中国問題を研究する若い御器谷さんの独自の視点となっている。
■「世界の気候変動問題解決のために日中が協力できるよう役に立ちたい」
中国人民大学の修士課程に通っていた際、郭さんの研究課題は「再生可能エネルギー政策において中日間の戦略的互恵関係を築く」だった。
郭さんは、「日本は技術大国。ここ10年、日本が再生可能エネルギーの分野で取得した特許は、2位の米国の1.5倍で、断トツとなっている。しかし、市場シェアの低さが日本のウィークポイント。一方、中国の市場シェアは非常に高いものの、パーフェクトというわけではなく、技術という面でウィークポイントが存在している。もし、日本の技術と中国の市場をうまく結び付け、心を一つにして世界共通の課題を解決できるように取り組むことができれば、ゼロカーボン社会の実現を後押しできる」との見方を示す。
そして、「日中関係における歴史認識問題や領土問題は一朝一夕で解決できる問題ではない。両国関係を改善するために、両国の指導者は自国の利益や第三者との関係を含むさまざまな要素を考えなければならず、乗り越えなければならない障害も多い。そのため、日中両国の民間企業間の交流、学術分野の緊密な協力が今後、さらに重要になるだろう。将来、学術の分野で何か貢献できればと思っている」と語る。
また、「日中関係がもっと良くなることを切実に願っている。そして、日本の国民と中国の国民がもっと仲良くすることを願っている。それを自分の生涯の仕事とし、両国関係を改善するというのが、自分の比類のない使命、職責だと思っている。そのため、例え取るに足らない分野であってもいいので、何か特定の分野で日中関係の第一人者と言われるようになりたい」とし、「これまでずっと、日本の視点から日中関係を見ていた。今後は視点を変えて、中国の視点から日中関係を見るようにしたい。ダブルマスターコース取得を目指す期間、日中関係の他に、気候変動や難民などの問題も研究したい。今後、日中関係やそれらの問題解決のために、自分の観点で役に立ちたい。また、日中両国の緊密な協力を促進し、気候変動といった世界共通の課題を解決するための未来の基礎を築く一員になりたい」と語る。
范教授は、「若手研究者たちは、日中間の緊密な交流を守り続けるのと同時に、双方向で客観的な学術研究を展開しなければならない。また、双方がそうした精神を持ち続けなければならない。しかし、そのような精神はどこから来たのかというと、それこそが鑑真の精神であって、鑑真が残した教訓だ。どのような困難や挫折に直面しても、自分の信念を終始確固として貫き、不屈の精神をキープしなければならない。そのようにすることができれば、必ず日中間で友好を実現することができる」との見方を示した。(提供/人民網日本語版・編集/KN)
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