人民網日本語版 2022年12月30日(金) 7時0分
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日本の環境保全業界に挑んでいるのは、中国の若き起業家の胡浩さんだ。
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巨大な廃棄物分別処理施設では、アルミ缶やプラスチックボトル、木くず、ブロックなどさまざまな種類の廃棄物がベルトコンベアで次々と運ばれてくる。そしてそのベルトコンベアの上方部ではロボットアームが機敏に動きながら、すばやく正確に廃棄物を掴み取り、選別してそれぞれの回収カゴに投入していく。この開発に成功したばかりの廃棄物AI自動選別ロボットの生産ラインの横には一人の男性が立っており、ロボットの動きをじっと注意深く観察していた。
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この男性は中国出身で、日本の環境保全業界に挑んでいる若き起業家の胡浩さんだ。
■起業の道は険しいが、初心を忘れず、投げ出さない
胡さんは中国の高校を卒業後、留学するため来日し、早稲田大学と東京大学で学んだ後、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の工学博士号を取得した。学業で優秀な成績を収めただけでなく、起業精神にも富んでいたため、大学4年生だった2006年に、環境コンサルタント会社を初めて立ち上げ、静脈産業とも呼ばれる環境保全分野の中で廃棄物処理産業に狙いを定めた。なぜなら、環境保全は21世紀の人類にとって最重要課題の一つであり、廃棄物処理と人々の生活を切り離すことはできず、日本だけでも12兆円の市場規模があるほど大きい市場だったからだ。
しかし理想と現実の間には大きな隔たりがあった。胡さんは起業に対して憧れを抱いていたが、実際に会社を興し、知識と理解が深まれば深まるほど、起業の真の困難さを認識するようになっていったという。
最初の起業から数年間、会社は目立った発展を遂げることはできなかったものの、「努力は人を裏切らない」という言葉があるように、「弛まぬ努力を続けた結果、国家レベルの研究開発プロジェクトを請け負ったり、賞を受賞するなど小さな成果を得ることができた。そして、これらの小さな成果を得たのと同時に、励ましも得られたことが、継続していく原動力になったのかもしれない」と胡さん。
2011年、胡さんはビジネスと人生に選択を迫られていた。それは博士課程の最後の年だったという。ビジネスにおいては、ちょうど一つのプロジェクトを終え、次のプロジェクトについては全く見通しが立たない状態で、極めて大きなプレッシャーを抱えていた。その一方で、ちょっと試してみようという気持ちで受けたある大企業の採用試験では、順調に試験をクリアしていた。そのため胡さんは当時、このまま未来の見えない起業の道を歩み続けるのか、それとも企業にきっぱり就職するのか決めかねていたという。
ちょうどその時期、キャンパスベンチャーグランプリ全国大会が開催されるのを知り、チャレンジ精神に富んだ胡さんはその大会に参加することにしたのだという。大会は5つの地域に分かれ、彼のアイデアは思いがけずその地域の1位となり、地域代表として全国大会に進出し、そして全国712のチームから見事全国1位を勝ち取り、「経済産業大臣賞」と「ビジネス部門大賞」を受賞した。
そしてこの「思いがけず」勝ち得た結果が、胡さんに起業の道を進む決心を固めさせることになったという。胡さんは、「熟考を重ねた結果、やはり環境保全ビジネスは一生追求し続けるのに値する課題だろうと考えた。投資額やその見返りなどを必ず得られなかったとしても、起業の道が順風満帆でなかったとしても、追求する価値があると考えた。そして最終的にこの起業の道を進むことを決断した」としている。
胡さんの当時のアイデアは大賞を獲得し、メディアで報道されたことで一定の注目を集めた。その注目に乗じる形で資金を投入してプロジェクトを始動させ、中国でもそのプロジェクトを進めるための会社を興した。しかし現実は依然、とてもシビアであり、胡さんによれば、そのプロジェクトは約2年ほど展開したものの、最終的には失敗という形で終わることになったのだという。ただ結果的にこの失敗したプロジェクトの存在が後の起業の道につながることになった。
■ダイバーシティ・チーム立ち上げ、技術イノベーション通じた業界変革に挑む
2017年、胡さんのビジネスはついに転換点を迎えた。AI画像識別技術が新たな発展を遂げたことで、新たなチャンスを見出したためだ。日本の廃棄物処理産業はまだまだ伝統的で、多くは人の手による工場の運営管理が行われているため、胡さんはAI/IoT等の先進技術を活用したAI管理の実現を図る余地が多く残されていると考えた。
そこで胡さんと彼のチームは、技術イノベーションを通じた業界変革に挑戦するためのプロジェクト企画書を作成。それは日本の廃棄物処理産業に対するAI/IoT及びロボティクス等の先進技術を活用した人工知能による環境保全ソリューションに関する企画書だった。
そして程なくして、日本の廃棄物処理業界大手の企業がこのプロジェクト企画書に関心を示した。この伝統的な業界において、胡さんの計画は間違いなく前例のない試みだったからだ。こうして業界大手企業の支援の下、2度目の起業を決心した胡さんは2018年に新たな会社を設立した。
しかし現実がシビアであることに変わりはなく、業務の拡大に伴い、如何に人材を確保するかが最重要課題となった。胡さんは、「起業の道においては、プロジェクトや資金、技術、マーケット等多くの難題が存在し、これらの難題は互いに絡み合っている。ただ最も重要なのはチームであり、頼もしいチームさえあれば、解決できない難題はない」と言い切る。
中国から留学のために来日し、起業した一人の若者にとって、多くの日本企業の中から頭角を現すことは一層の困難を極めたことは想像に難くない。しかし、胡さんはこの不利な状況をアドバンテージに変えた。ベンチャー企業は企業文化と技術の多様性が求められ、環境保全企業にとってグローバル化は不可欠であると考えたのだ。「日本国内で活躍する海外出身の優秀な人材をまとめあげたことはまさに自分の最大のアドバンテージだった」と胡さん。選りすぐりの人材だけを集めたグローバルチームは、中国、日本、米国、フランス、ベトナム、バングラデシュ等の国籍の人材で構成され、それぞれ環境保全やエネルギー、AI/IoT、ロボティクスなどの各分野のエリートを集めた。
その一方で、起業家としての胡さんの人格的魅力は、彼がこの優秀なチームを立ち上げることができた大きな要因の一つだったと言える。会社の主要メンバーの一人で、常務執行役員であり、日本の環境業界のスペシャリストでもある小林均さんはその出会いを振り返り、「胡代表との出会いは20年前にさかのぼる。当時、彼はまだ学生だった。その後、交流はあったものの、基本的にはそれぞれの仕事に打ち込んでいた。しかし2020年8月のある日、突然胡代表が会いに来て、開口一番、2018年末にAI/IoT分野のベンチャー企業を興して、現在少しずつ成果が出始めており、これから廃棄物業界での業務拡大を図るため、ぜひとも会社幹部として迎えたいと言われた」とした。
当時の小林さんはすでに32年間にわたる環境保全分野での業務経験があり、別の会社を興そうと奔走していたところだったため、今後も情報交換を続けていこうと一度はその申し出を断った。しかし熟考を重ね、2021年、小林さんは自ら胡さんの元を訪ねて、共に仕事をしたいと申し出たのだという。
小林さんは、廃棄物業界と胡さんについて、「廃棄物処理分野は独特な業界で、運営効率を高めるための産業アップグレードの実施、新たな業務の開拓、AI/IoTおよびロボティクスの活用は今後一層の必要を迫られると予想されている。胡代表の挑戦はこの業界に対し、重要かつ意義のある課題を提示したと言える。またその一方で、胡代表のチームへの加入を決心させたのは、彼との長年の付き合いから感じた温和な人柄だけでなく、ビジネス面においても明確な目標を持って実際の行動に移し、熟考することを厭わない、経営者にふさわしい素質を備えていると考えたからだ」とした。
■研究成果実り、中国市場への還元を志す
4年にわたる奮闘の末、胡さんが率いる日本の環境保全業界のスペシャリストと多国籍のエリート技術者から構成されたチームは、2回目の起業の道を堅実な足取りで出発し、すでに廃棄物処理工場プレス機防火システム、廃棄物運搬車両自動配車システム、そして廃棄物AI自動選別ロボットという3種類のコア製品の開発に成功している。
この3製品に対し、日本の大手廃棄物処理企業の一つである大栄環境グループが関心を示した。大栄環境グループは胡さんのチームを提携パートナーとして迎え入れ、現在グループの各施設においてこの3製品の導入を進めている。株式会社大栄環境総研の取締役である壺内良太さんによると、廃棄物回収処理現場でのリチウムイオン電池の爆発と引火は大きな難題となっており、胡さんのチームが開発した防火システムは、火事の検知と処理に有効で、現場の作業員から高く評価されているという。また、自動配車システムに関しても壺内さんは高く評価しており、規模の大きい大栄環境グループでは、各施設が処理する廃棄物は多種多様にわたり、それに対応する多種多様な運搬車両が求められるため、配車ルートの最適化が難度の高い課題となっているとし、胡さんのチームが開発したアルゴリズムを用いることで、複雑な制約条件でも機敏に対応が可能となり、試運転を経て、今後正式にグループ内で運用を始める予定なのだという。これらの成果を受け、廃棄物AI自動選別ロボットにも壺内さんは高い期待を寄せているとした。そしてロボットはすでに実験段階を終え、現場に設置する段階に入っているため、実際の現場の声を参考にした上で、いち早く商品化が実現できることを信じているとした。
胡さんとそのチームが研究開発したAI自動選別ロボットには他の機関も関心を示している。2022年6月に廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス(AEPW)は「廃棄プラスチックをなくし、循環型経済を実現する」という国際的な目標を達成することを目指し、日本で第一陣となるスタートアップ企業11社を選んだ。そして胡さんの会社もその中に選ばれた。しかし、彼はこうした現状に満足することなく、次のステップとして広大な中国市場に狙いを定めている。そして胡さんは、「環境保全企業にとってグルーバルな発展は不可欠であり、日本で起業した中国人の私にとって、中国市場を見据えることは当然であり、次のターゲットは中国市場だ」としている。
日本の非常に完備された廃棄物処理制度と廃棄物処理工場の運営規範が、正確な問題点の発見を容易にし、この条件下でのAI/IoTソリューションの利用は企業のイノベーションに非常に有利であると胡さんは考えている。彼はすでに中国の科学研究院や企業と提携し、徐々に日本での研究成果を中国の環境ガバナンスと環境市場に応用させ始めている。そして彼は中国市場が今後の重要な発展の方向になるとしている。
胡さんによると、彼らは中国科学院広州インテリジェントソフトウェア研究院と早稲田大学と共に2019年に人工知能環境保護共同実験室を創設し、建築廃棄物処理やその他の環境保全分野におけるAIの活用を対象とした技術交流を図っている。また、吉林大学と大連理工大学では、廃棄物AI自動選別ロボットやIoT活用の課題に関する講座を開設し、これらの大学の教員や学生たちが来日し、胡さんの企業を訪問している。同時にシステム開発をめぐって、彼のチームは中国国内の大手IT企業と委託契約を結び、低コストで高い効率を誇るオフショア開発を長期的に展開している。
インタビューの最後に胡さんは、「ビジネスの角度から見た場合、私たちのビジネスはまだ始まったばかり。ただ今日まで歩んでこられたのは、短期的なアドバンテージに頼ったわけではない。例えば優れた考えや革新的なアイデアというものは、十数年にわたる環境保全業界での頑張りと蓄積に裏付けられており、それにより私たちは地に足をつけた成長を遂げてきた。もし順調に進めば、近い将来私たちは飛躍的な発展を遂げることができるだろう」と自信をのぞかせた。
日本の環境保全業界で挑み続ける中国の若き起業家が、日中両国、ひいては世界で活躍することが期待されている。(提供/人民網日本語版)
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