Record China 2023年1月16日(月) 10時0分
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BBCは、中国から「拒絶された」状態のボーイング社の状況と、中国は大型旅客機のC919(写真)を開発したことで、航空機製での「天下三分の計」が可能になるかを論じる記事を発表した。
英国メディアのBBCは13日付で、中国から「拒絶された」状態のボーイング社の状況と、中国で大型旅客機に位置づけられる自国で開発されたC919の投入などで、世界の航空市場の大部分が米国、EU、中国の3つの国と地域で開発された旅客機で占められる「天下三分の計」の状態になる可能性を論じる記事を発表した。
ボーイングは先日、2022年に納入した民間航空機は480機だったと発表した。ライバルであるエアバスは同年に661機を納入した。ボーイングの納入機数は4年連続でエアバスに及ばなかった。ボーイングがエアバスに差をつけられた大きな原因の一つは中国企業への納入で、エアバスは同年に100機以上を納入したが、ボーイングの納入は8機のみだった。
また、22年7月には、中国の三大国有系航空会社(中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空)がエアバス機292機を購入することで合意した。さらにショルツ独首相が同年11月に訪中した際には、航空機リース会社の中国航空器材集団公司が、エアバス製のA350 を8機とA320シリーズを132機の、計140機の旅客機の大型購入契約を締結したと発表した。契約総額は約170億ドル(約2兆1700億円。23年1月14時点の為替レートで算出。日本円相当額の算出方法は以下も同じ)相当という。
一方のボーイングは、新鋭機であるB737MAXがインドネシアで18年10月に、エチオピアで19年3月に墜落事故を起こしたことで、中国では19年3月以来、同機種に対する飛行禁止処分が続いている。ボーイングは22年10月、中国の航空会社向けに製造した航空機138機が納入を待っていたが、中国の航空会社が短期間内に受け入れる兆しがないことから、他の航空会社への転売を開始したことを明らかにした。
ボーイング社のデーブ・カルホーン最高経営責任者(CEO)は、最終的には中国に向けてより多くの航空機を納入したいと述べた上で「中国の状況が変化して、われわれに有利な方向に事態が進展するシグナルを見出すことは、実に困難だ」と述べた。ボーイングにとっては、米国政府が航空宇宙分野や電子関連を含むハイテク分野について、中国への輸出制限を行っていることも逆風とされる。
ただし、中国南方航空の公式アプリは、23年1月13日に運航した広州(広東省)-鄭州(河南省)便と広州-武漢(湖北省)便を、B737MAXを使って運航したと表示した。表示に間違いがなければ、中国で19年3月以来、B737MAXが初めて商用飛行したことになる。
中国側のボーイング排除は、事故の影響だけではなく「米国切り捨て・EUに接近」という外交上の理由があり、米国と欧州を「利益が対立する状態」に導こうとする意図があるとの見方もある。米国のレイモンド商務長官は21年時点で、中国政府は自国の航空会社がボーイング機を購入することを阻止していると不満を述べた。
エアバスのA320とボーイングのB737は、旅客機として世界で最も需要が旺盛な2機種だ。中国の航空会社の受注は世界市場の需要の約4分の1を占めている。しかし新型コロナ感染症の影響で22年の国際線輸送量は19年実績のわずか5%だった。
中国では、22年11月に感染症対策を緩和し、23年1月には入国制限も緩和した。さらに春節(旧正月、23年は1月22日)も近づいたことで、観光業の落ち込みには一服感がある。中国の公式発表によると、23年の元旦連休中の国内旅行者は延べ5271万3400人で、19年元旦連休の42.8%までに回復した。また、中国では多くの航空会社が、国際便の本数を急増させている。このような状況もあって、旅客機購入の需要も高まると考えられている。
中国の旅客機市場で、大きな影響を持つもう一つの状況は、中国商用飛機(中国商用航空機)が開発したC919が22年12月初旬に中国東方航空に引き渡されたことだ。中国東方航空は安全確認や運用方式を確立するために100時間以上の試験飛行を行わねばならないが、早ければ23年春には、同機を使った営業運航を始めるとされる。
同機は当初予定では16年内に航空会社への引き渡しを始める予定だった。さまざまな問題のために予定は大幅に遅れたが、同機は22年9月下旬に中国当局による型式証明を取得した。今後は製造についての審査に合格せねばならないが、合格後は同機は大量生産が可能になる。C919の航続距離は最大で5500キロで、乗客座席数は158-168席の、A320やB737と競合する機体だ。
ただし、C919を登場させたことで、中国が旅客機製造市場で米国やEUと鼎立(ていりつ)する「天下三分の計」を出現させられるわけではない。
例えば、商業的に成功するためには、C919はまた安定した維持管理システムを構築し、維持管理員の訓練、管理システム、航空材の保障システムなどの構築を高める必要がある。無から有への建設は大量の資金や時間の投入を必要とする。そして、航空業界はその仕事の性質上、「錯誤」を許さない業界だ。設計や維持で問題が発覚すれば、該当する機種、さらには製造した企業は、極めて深刻な「信用の失墜」に見舞われることになる。
また、主要な国際航空路線で広く使われるためには、欧州航空安全局(EASA)と米連邦航空局(FAA)による認証を取得せねばならない。ロイターは、中国企業がボーイングとエアバスの独占的な地位に挑戦できる状況になるには10年間が必要とする専門家の意見を紹介した。ただし逆に言えば、C919がEASAやFAAの認証を取得できれば、非欧米諸国で開発されたジェット旅客機として初めての出来事であり、中国は航空機製造で米国やEUの主たる競争者としての地位を獲得することになるという。
なお、C919は現状では、米国企業とフランス企業が共同開発したジェットエンジンのLEAP-1Cを搭載するなど、主要部品で西側企業に大きく依存している。中国も独自にC919に搭載することを念頭に「長江-1000A(CJ-1000A)」航空エンジンを開発中だが、同エンジンは中国国内でもまだ認証を取得していない。
中国が旅客機開発で保持している大きな強みの一つが国内の巨大市場だ。C919は初めて納入された時点で、公開された事例だけでも、中国の主要航空会社や航空機リース会社から、1000機を超える注文を受けていた。
また、C919には価格競争力にも強みがあるとされる。中国東方航空はC919の1機当たりの購入価格は9000万ドルであり、同クラスのエアバス機とボーイング機の価格は1億1000万-1億2000万ドル前後と紹介したことがある。
また中国商用飛機は、中国の航空会社が保有する航空機の数は41年には1万機を突破し、世界で運航される旅客機の21.1%に達すると予測している。中国の航空市場は世界最大となり、世界で最も多くの新型機を受け入れる市場になるという。(翻訳・編集/如月隼人)
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