中国自動車市場、日系メーカーはセダン頼みでEV化遅れ、中国メディアは後進性を指摘

高野悠介    2023年3月10日(金) 7時0分

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2022年の中国の自動車販売台数は2688万4000台で、前年比2.1%の微増だった。詳しい分析から、日系ブランドの2023年を占ってみよう。

中国汽車工業協会によると、2022年の中国の自動車販売台数は2688万4000台で、前年比2.1%の微増だった。車型別では、セダンが3.5%増の1019万4000台、MPVが12.6%減の94万3000台、SUVが1.9%増の940万6000台、新エネルギー車(EV車、燃料電池車、PHEV)が90.0%増の567万4000台だった。セダンが強く、新エネルギー車が激増している。以下、さらに詳しい分析から、日系ブランドの2023年を占ってみよう。

■2022年の自動車販売…外資系苦戦

メーカー別の販売台数を15位まで挙げてみよう。

1位 BYD比亜迪)、180万4624台、149.4%増

2位 一汽大衆、177万9077台、増減0、フォルクスワーゲン合弁

3位 長安汽車、127万4208台、14.2%増

4位 上汽大衆、124万3460台、14.7%減、フォルクスワーゲン合弁

5位 吉利汽車、123万4746台、1.8%増

6位 上汽通用、103万6851台、18.8%減、GM合弁

7位 広汽豊田、97万1462台、15.6%増、トヨタ合弁

8位 東風日産、89万7924台、20.9%減、日産合弁

9位 一汽豊田、79万9305台、5.6%減、トヨタ合弁

10位 上汽通用五菱、78万6284台、18.7%減、GM合弁

11位 長城汽車、75万8691台、20.0%減

12位 広汽本田、72万2362台、6.2%減、ホンダ合弁

13位 奇瑞汽車、71万7688台、19.8%増

14位 華晨宝馬、65万3976台、0.4%増、BMW合弁

15位 東風本田、65万2406台、17.8%減、ホンダ合弁

外資系の不振が目立つ。上記の外資合弁企業10社のうち、前年実績をクリアしたのは華晨宝馬だけだった。

■日系3大ブランド…セダン中心

日系3大ブランドも苦戦した。トヨタ系は前年比0.2%減の190万600台で、ここ10年で初のマイナスだった。ホンダ系は前年比12.1%減の137万3100台、日産系は前年比22.1%減の104万5200台に終わった。総崩れだ。車種別ランキングは以下の通り。

1位 シルフィ、日産、42万0665台

2位 カローラ、トヨタ、24万9870台

3位 カムリ、トヨタ、24万2225台

4位 アコード、ホンダ、22万0771台

5位 CRV、ホンダ、21万0126台*

6位 レビン、トヨタ、19万1785台

7位 RAV4、トヨタ、16万2724台*

8位 シビック、ホンダ、15万0822台

9位 キャシュカイ、日産、14万8202台*

10位 ハイランダー、トヨタ、14万0574台*

日本人には一昔前のラインナップに見える。セダン6車種、SUV4車種(*印)だが、上位はセダンばかり。日本車は中国セダン市場をけん引していた。

■新エネルギー車…日系は出遅れ

新エネルギー車の販売台数は567万4000台だった。これは日本の総新車販売台数の420万1321台(前年比5.6%減)を大きく上回る。メーカー別販売台数は以下の通り。

1位 BYD、179万9947台、208.2%増

2位 上汽通用五菱、44万2118台、2.5%増

3位 テスラ中国、43万9770台、37.1%増

4位 吉利汽車、30万4911台、277.9%増

5位 広汽埃安、27万3757台、115.6%増

6位 奇瑞汽車、22万1785台、126.5%増

7位 長安汽車、21万2277台、177.6%増

8位 哪吒汽車、14万8661台、113.4%増

9位 理想汽車、13万3246台、47.4%増

10位 長城汽車、12万3920台、7.5%減

トップ10に外資系は上海通用五菱とテスラ中国だけだ。上海通用五菱はGM合弁とはいえ、EV車は2人乗り宏光mini、3万2800元~(約64万円~)など国内モデル主力で、輸出はこれからだ。純外資系のトップは14位に初めて登場する。

14位 一汽大衆、9万9760台、41.7%増

15位 上汽大衆、9万1761台、50.3%増

19位 華晨宝馬、5万6598台、21.3%増

25位 北京ベンツ、3万5522台、210.5%増

日系は23位から

23位 東風日産、4万2742台、160.7%増

31位 東風本田、2万3116台、27.1%増

42位 広汽本田、1万1329台、80.3%増

47位 一汽豊田、7543台、28.9%減

48位 広汽豊田、7164台、38.6%減

ドイツ系に対しても相当出遅れている。

■日系新車情報…ハイブリッドモデル中心

2023年発売予定の日系新型車は次の通り。

(ホンダ系)

アコード…新型11代フルモデルチェンジ版、18万8000元~(約370万円~)、上半期発売予定。1.5Lターボのガソリン車とハイブリッド(2Lプラス2モーター)バッテリーはCATL製。

HRV…16万元(約315万円)前後。ZRVの姉妹車。1.5Lターボのガソリン車から先行発売、ハイブリッドは順次投入。

(日産系)

シルフィ…マイナーチェンジ版、3月発売。1.6Lガソリン車と1.2L+モーターのハイブリッド。

キャシュカイ…マイナーチェンジ版、2.0Lガソリン車から1.3Lターボのライトハイブリッド車に置き換わる模様。ターボエンジンは日産とメルセデス共同開発。

(トヨタ系)

クラウンスポーツクロス…2月発売、36万9000元~(約725万~)、2.5L+モーター、2.4Lターボ+モーターのハイブリッド2種。国内生産はなく、輸入車となる。

bZ3…bZ4Xに次ぐ2番目のEV車、16万8000元~(約330万円~)。フロントドライブの1モーター。バッテリーはBYD製。航続距離は500~600キロ。

純EV車をそろえるにはまだ時間がかかる。2023年はガソリン車とハイブリッド車を“熟成”させ、時間を稼ぐしかない。

■中国メディア…トヨタの後進性を指摘

中国メディアは辛辣だ。トヨタはテスラに敗れた前提で論旨を展開している。Model Yを分解したところ、トヨタは大きな衝撃を受けたというのだ。トヨタは内装の品質、エンタメ情報システム、生産システムに後進性を抱えている。これらに対する中国側の改善提案を、日本本社は品質を保証できないという理由で採用しなかった。確かにこれまでの生産方式は耐久性、品質の高さなどトヨタの評価を形成していた。しかし、これからはイノベーション、信頼性、コストをどうバランスさせるかだ。そしてこれがEV時代にもトヨタが主流でいられるかどうかのカギ、などと上から目線の主張をしている。何とかクリーンヒットを飛ばし、EV車出遅れの懸念を払しょくしてもらいたい。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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