中国で出生数減少が「どうにも止まらない」状態、6年減り続けて今年は800万人割れ

Record China    2023年5月21日(日) 13時0分

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中国では出生数の減少に歯止めがかからない状態だ。2022年には出生数が1000万人を切り、23年800万人を割り込むことが確実になった。

中国では現在までの妊産婦登録から、2023年内の出生人口が800万人に満たないことが確実になった。中国では17年から22年まで6年連続で出生人口が減少してきた。専門家は出生数の減少を食い止めることは、当面は困難との見方を示している。中国メディアの中国新聞社の傘下メディアで公益問題や慈善関連情報を扱う「中国慈善家」が報じた。

22年には初めて1000万人以下で、今年は800万人割れ

国家統計局によると、中国では22年通年の出生人口が前年比106万人減の956万人だった。人口1000人当たりの出生数は前年比0.75人減の6.77人だった。

最近における中国の年間出生人口は16年の1883万人がピークで、その後は6年連続で平均で毎年150万人程度減少し続けた。22年には出生数が初めて1000万人を切った。減少の理由は、出産する世代の女性が減り続けていることと、結婚や出産についての考えが変化し、初婚と初産の年齢が上昇していることだ。

地方の状況を見ると、22年には広東省の常住人口は数十年ぶりに減少した。ただし戸籍人口は1億49万7000人に達して、全国で常住人口と戸籍人口が同時に1億を越えた省になった。広東省の年間出生人口は、17年には151万6300人だったが、その後は減少し続け、22年には105万2000人にとどまった。

もう1つの注目すべきデータは、中国政府・民政部が発表した婚姻届の状況だ。21年に婚姻届を出したカップルは前年比6.1%減の764万3000組で、過去30年で最少だった。22年1-9月に中国全国で婚姻届を出したカップルは前年同期比7.49%減の544万5000組だった。婚姻届の提出数は9年連続で減少している。

23年年初には、中国各地の産科がいずれも「冬の時代」を迎えていると報道された。新生児の数は減り続けており、産科の規模を縮小したり、廃止する病院もある。

出産の減少が病院の産科にとって死活問題に

出産が最も多い女性の年齢層は21-35歳だ。中国・国家統計局によると、中国では21年、この年齢層の女性が約300万人減少した。翌22年には、この減少数が500万人近くに達した。

広東省にある総合病院の産婦人科の主任医師は「中国慈善家」の取材に対して匿名を条件に、「ここ数年、妊婦の数は明らかに減少している。今年は特に顕著で、私どもの病院では3分の1は減少した」と説明したという。

同医師は、「(新型コロナウイルス)感染症の前は、3人目や4人目を産む家庭を時々見かけたが、今では2人目や3人目を産む人は少なくなった。病院に来る人の大半は初産だ」とも述べた。ただし、初産の女性も減少しているという。

中国で妊婦数が激減したのは16年からだが、同医師によると、比較的大きな変化を実感したのは21年からという。多くの人が新型コロナウイルスに感染したことで、出産の計画を取りやめたからだ。しかし、感染症は出産数の減少の根本原因ではなく、若者が子を作ることを望まないことが問題の本質という。多くの若者が生活の厳しさを考慮して、子を作るとしても1人しか考えていない状況だ。

病院の産科は、生き残りをかけた「サービス競争」を展開している。例えば江西省にある著名な産婦人科病院では、VIP病室の使用料金を5割引きにした。河南省のある病院の産婦人科医は、「現在の妊婦数は数年前と比べて明らかに減少している。現在は出産検査にほとんど列に並ぶ必要がなく、産科はかなり静かになった。より多くの妊婦を呼び込むため、無料送迎を提供している病院もある」と述べた。

出産数確保のために大技繰り出す地方政府

地方政府は出産を奨励するために、次々に「大技」を繰り出している。湖北省の東湖ハイテク区は5月12日、子が生まれた世帯に最大で6万元(約118万円)を補助する計画を発表した。23年1月1日以降に3人目以降の子供が生まれた関連条件を満たす世帯に対し、子供1人につき毎年1万元(約20万円)の育児手当を支給し、最長で満6歳まで支給するという。同計画は「史上最強」の出産奨励策とされている。


出産に関連する補助政策は、四川省攀枝花市が21年に導入した制度だったとされる。第2子からは、出生してから3歳になるまで毎月500元(約9800円)を支給するもので、累計で1万8000元(約35万円)を受け取れるものだ。その後、山東省、甘粛省、黒竜江省、雲南省、寧夏回族自治区などの多くの市や県が補助金政策を打ち出した。

「中国慈善家」のまとめによると、大部分の地域では補助金の対象は第2子や第3子がいる世帯だ。補助対象を第1子にまで広げている地域はわずかだ。

補助金の支給以外にも、複数の子がいる世帯には住宅物件の取得数制限を緩和したり、自動車のナンバープレートを優先して取得できる政策を採用した地方政府もある。山西省普城市沢州県は、第2子または第3子を持つ両親は、該当する子が満2歳になるまで、出勤時間を1時間遅らせるか、退勤時間を1時間早くできる規則を導入した。

「産みたくない・産めない・育てられない」状態を改善する以外に手なし

しかし中国人口学会副会長を務める西南財経大学の楊成鋼教授は、補助金などは政府の出産奨励の姿勢を示すものではあるが、家庭が実際に使う「子育て費用」を考えれば「焼け石に水」と指摘した。

楊教授によると、現在の中国では、第2子以降の出産による出生率への貢献率が40%以上に達している。大きな問題は第1子の出産が少なすぎることだ。楊教授は「これは正常な現象ではない。現在、必要なことは主に、第1子についての対策だ」との考えを示した。

しかし一方では、「子どもがいない家庭に比べて、現状で1人っ子家庭は次の出産への意欲がある」として、第2子や第3子の出産を促進すべきとの意見もあるという。

楊教授は、中国で出生数が落ち込んでいることには、養育費が極めて高い一方で、現在の若者の間も個人主義や快楽主義も大きく影響していると指摘。より具体的には、未婚の同棲の増加と結婚するカップルの減少、初婚の年齢が高くなり、多くが30歳以降になったこと、さらには離婚率の高さも影響しているという。

楊教授は、若い世代の文化的潮流を短期間で変えることは難しいと指摘。また、出生数が多かった時期に生まれた人が、子どもを産む時期になれば、一時的に出生数が増える可能性はあるが、一時的なものに過ぎないという。

楊教授は政府による対策について「政策が断片化してはならない。体系的に設計し、完全な体系を形成しなければならない」と指摘。肝要なことは、出産に直接関連する「産みたくない」「産めない」「育てられない」「世話する人がいない」といった状況をなくしていくこであると論じた。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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