Record China 2023年5月20日(土) 15時30分
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5月18、19日の両日、中国・中央アジアサミットが古代シルクロードの出発点(陝西省西安市)で開催された。写真は西安市。
5月18、19日の両日、中国・中央アジアサミットが古代シルクロードの出発点(陝西省西安市)で開催された。このサミットには、中国のほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンが参加した。6カ国首脳が対面で集まるのは初めて。中国と中央アジア諸国が連携し、新たなページを画したイベントとして注目される。会議は2年に一回定期開催され、次回は2025年にカザフスタンで開くこととなった。
中央アジアは、豊富な資源を有し、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」の主要ルートとなっている。習近平国家主席は共同記者会見で、自ら提唱した「一帯一路」が今年で10年の節目を迎えるとして、中央アジア諸国と産業・投資の協力拡大などを進める方針を表明した。「新たな出発点」として協力を強化発展させると謳った。ユーラシアを貫く「シルクロード経済帯」の拡充強化の意義は大きい。中国と中央アジア5カ国の昨年の貿易総額は700億ドル(約9兆5000億円)を超え、過去最高水準を記録した。
中国・中央アジアサミットは最終日に「西安宣言」を採択。中国と中央アジアは「運命共同体」として、経済や文化の領域から国家安全の領域まで幅広く協力すると宣言した。 さらに、中央アジアに隣接するアフガニスタンについても「平和と安定を守ることを助ける」として、影響力を行使する考えを示した。中央アジアにとって喫緊の課題であるインフラ開発などの支援策も提示した。上海協力機構(SCO)の枠組みの中でも、中国、ロシア、インドと中央アジア諸国は、地域の安全保障と経済発展で積極的に協力していくとしている。
中央アジア5カ国は、重要なハブとして、中国が欧州域内で経済的な役割を拡大するのを可能にしてきた。ロシア経由で中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」もその一例。2011年3月に重慶市からドイツのデュイスブルクまで運行したのが始まりで、湖北省武漢市、四川省成都市、河南省鄭州市、陝西省西安市など他都市からも運行されている。中国各都市と欧州23カ国180都市を結んでいる。
2021年の「中欧班列」の運行本数は前年比22.4%増の1万5183本、輸送されたコンテナ数は前年比29%増の146万4,000TEU(20フィートコンテナ換算値)と大きく増加した。同年の輸送貨物の付加価値額は749億ドルと、2016年の80億ドルから大きく増加した。輸送貨物も、当初の携帯電話やノートパソコンなどのIT製品から、自動車部品、完成車、化学工業品、機械電気製品、穀物、酒類、木材などに拡大した。欧州と中国を繋ぐ中央アジア諸国は鉱物資源に富み、中国西部の中国企業にとって、重要なマーケットとなっている。
習近平国家主席は19日、中央アジアサミットで基調演説し、中国と中央アジア諸国の協力に関する8項目の提案を打ち出した。
提案内容は(1)メカニズムの構築強化=中国と中央アジアの協力の計画・発展、(2)経済貿易の拡大=多くの貿易円滑化措置により貿易規模を新たなレベルに引き上げること、(3)交通網の深化=中国・キルギス・ウズベキスタン高速道路、中国・タジキスタン・ウズベキスタン高速道路の拡充整備と、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道プロジェクトに関する交渉推進、(4)エネルギー協力の拡大=中国・中央アジア天然ガスパイプライン建設を加速、(5)グリーンイノベーションの推進=中国は中央アジア諸国と塩害の管理・開発などの分野で協力し、アラル海の生態系危機の解決に取り組むこと、(6)発展レベルの引き上げ=中央アジア諸国の貧困削減のための科学技術特別協力プランの策定への協力、(7)文明対話の強化=中央アジア諸国の「文化シルクロードプラン」への参加、(8)地域の平和維持=地域の安全維持とテロ取締りへの協力――など。
中央アジアは一帯一路の要衝で、天然ガス・石油や鉱物資源の供給地。中国はウクライナ侵攻によってロシアの影響力が低下するなか、地域を支える役割を強めようとしている。日本が議長国を務めるG7サミットでは、中国とロシアによる「力による一方的な現状変更は許さない」というメッセージを打ち出した。これに対し、中国は「G7の言うルールは国際社会共通ではない」との立場。異例の3期目に入った習政権は、新興国や途上国への独自の外交攻勢を展開している。
一方で、中央アジア5カ国はウクライナ問題で難しい立場に置かれ、複雑な状況に直面している。カザフスタンはロシアと軍事的、経済的にも同盟関係にあるが、トカエフ大統領が昨年6月、プーチン・ロシア大統領を前に、ロシアが承認したウクライナ東部の親ロシア派地域の独立を認めない考えを示すなど、「ロシア離れ」の動きを強めている。ロシアの同盟国であるキルギスやタジキスタンには4月下旬、米国高官が訪問。昨年8月には、トルクメニスタンを除く4カ国が、タジキスタンで米国と軍事演習を実施した。
侵攻をめぐる国連総会でのロシア非難決議でも、5カ国は反対していない。背景には侵攻への不満があり、米欧の制裁に巻き込まれれば、ロシア以上に打撃を受ける。ただ、地理的に米欧の手厚い支援は期待できず、急激にロシアから距離を置くのも難しい。
そこで中央アジア諸国が期待するのが中国。ロシアや米欧は地域へのインフラ投資には消極的で、一帯一路を推進する中国とは利害が一致する。習氏とトカエフ氏との首脳会談では、貿易やエネルギー分野などでの協力推進で一致。トカエフ氏は18日、「中国への石油パイプラインの拡張を計画している」と期待を示した。
サミットに参加する5カ国は旧ソ連構成国で、元々ロシアの強い影響を受ける。ただ、ウクライナ侵攻後は、カザフスタンのトカエフ大統領が、ロシアが独立を承認したウクライナ東部の親露派「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を承認しない考えを示すなど、5カ国はロシアと一定の距離を置く。中国としてはロシアの影響力の低下を見極めながら、今回のサミットで中央アジア諸国との関係強化に動いた形だ。
ロシアも「勢力圏」の維持に必死だ。今月9日にモスクワで開催された対ドイツ戦勝記念式典には中央アジア5カ国の首脳を招待し、結束を演出した。出口の見えないウクライナ戦争を尻目に、地政学的に複雑な中央アジアだが、中国が一歩先行している格好だ。(八牧浩行)
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