中国で最近、コンサートや各種イベントなどが「予期せぬ事態」を理由に主催者の発表で相次いで突然中止となっている、と米ブルームバーグ通信が報じた。「予期せぬ事態」は背景に当局の力が働いていることを意味する。記事は「理由が不可解」と指摘。今後の動向に注目している。

ブルームバーグ通信によると、北京郊外で20日に予定されていた野外コンサートは昼すぎにスタートするはずだったが、中止になった。外国人を含む10組のアーティストが「魂を癒やすアコースティック音楽」を生演奏することになっていた。

バーベキューの串焼きやクラフトビールを売るブースの近くには折り畳み椅子などが置かれ、風を楽しみながら、新型コロナウイルス時代の制限からの解放感を満喫したいと願う来場者たちが集まり始めていた。だが、ボランティアがステージに上がり「予期せぬ事態」でコンサートが延期になったと告げた。主催者側は警察から退去を命じられたことを明らかにした。

中国語での「予期せぬ事態」は、警察もしくは他の政府機関などが国家や社会に有害だと見なす活動をやめさせるルールを執行もしくは圧力をかけることを指し示すえん曲表現だ。サプライヤーの制御が及ばないとして法的責任を免除する「force majeure（不可抗力）」と同義になる。

愛媛県の禅僧が結成した日本のコーラスグループ「キッサコ」は17日夜、広東省広州市での公演が突然中止となった。中国版ツイッター・微博（ウェイボ）上の同グループ公式アカウントへの投稿によれば、この公演の中止は政府機関が命じたもので「不可抗力」だという。

15日には性的少数者（LGBT）の差別解消に取り組んできた「北京LGBTセンター」も「不可抗力」を理由に活動停止を発表した。

背景にあるとみられるのは当局が習近平国家主席の軍事スローガンをお笑い芸人がジョークにしたとして、トークショーの運営会社「笑果」に罰金1340万元（約2億6300万円）を科し、少なくとも二つの主要都市での公演を「無期限」停止としたことだ。

北京でのフォーク音楽イベントに出演を予定していたミュージシャンによると、中国での公演は厳密には文化観光部の地方局から事前に許可を得る必要があるが、これまではそれほど厳しくなく、多くの公演が事前承認なしに行われていた。

北京在住のある音楽家は政治的に敏感な問題だとして匿名を条件にブルームバーグ通信に対し、ライブや文化イベントに対する取り締まりはお笑い芸人の問題と関係しているとの見方を示した。ただ、そうした取り締まりは、外国人やもっと人気のあるバンドや出演者が主要なターゲットになることが多いという。（編集/日向）