亜洲週刊 2023年6月6日(火) 5時0分
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香港誌「亜洲週刊」はこのほど、米中関係について論じる毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。同記事は「民間の立場による見え方」を中心に論述された。
香港誌「亜洲週刊」はこのほど、「デリスク」など米中関係について論じる毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。毛支局長は同記事を「民間の立場による見え方」として、米中それぞれの相手側に対する政策が、民間人や経済界にどのように受け止められているかを念入りに論じた。以下は同記事の主要部分の訳出だ。
「De-risk(デリスク、リスク排除)」という言葉が流行している。この言葉は、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長がEUと中国の関係について述べたもので、EUの利益を考えれば中国との関係を断つことは「極めて愚かで実現不能」であり、代わりに中国との関係を「デリスク化」せねばならないとの主張に用いられた。この言葉は、米国のブリンケン国務長官が引用したこともあり、さらに流行した。
米国のバイデン大統領もこの言葉が流行すると米中関係を改善させるメッセージを発表し、「短期的」には良くなるだろうと述べた。それに先立ち、中国政府は米国国債を200億ドル(約2兆8000億円)以上買い増すと発表した。米国国債の買い増しには米国の財政危機の救済効果がある。すなわち中国が発動した予想外の「対米親善行為」だった。
中国と米国は依然として厳しく対立しているが、双方の政策立案者は、下手をすれば戦争開始メカニズムが作動しはじめてしまう「瀬戸際外交」は実質的に避けねばならないことを理解している。台湾海峡問題については、先日上海で、大陸と台湾の対話活性化の大きな節目になった汪道涵・辜振甫会談の30周年を記念する行事が行われた。中国側はこの機会に、中国が武力統一を急がないというメッセージを示した。
米国政府は中国発の動画投稿サイトのティックトックの利用を禁止したいと言っているが、それができないのは、ティックトックは若い世代の米国人に絶大な人気があるので、禁止をしようものなら若い世代の有権者が民主党を嫌うようになり選挙で敗北することになると、政権側が分かっているからだ。
中国では、米国が好きな人が多い。米国に留学に行く人が後を絶たず、新型コロナウイルス感染症対策が緩和されてからは、米国大使館にビザを申請する人の行列ができたことでも分かる。
米国が中国に追加関税を適用しても、マクドナルドやスターバックスは中国国内で店舗を増やしている。大きな需要があるからだ。テスラは上海に巨大工場を設立して、これまでに100万台以上の電気自動車(EV)を生産した。フォードやゼネラル・モーターズなどの従来型自動車を生産する米国企業も、自国市場で直面する「冬」の痛みを、中国市場で「春」を謳歌することで埋め合わせた。
米国人は、中国製の高品質で安価な中国製品に夢中だ。例えば、ファストファッションのShein(シーイン)は米国の消費者の心をしっかりつかんだ。シーインは、労働者を搾取することで低価格を実現したのではない。シーインの低価格は、中国でIT分野が急速に発達したことを背景に、きめ細かなデジタルマネジメントを構築したたまものだ。
トランプ前大統領が貿易戦争を発動する前には、中国と米国の経済界は「グローバリゼーション」理論の最高の理解者だった。「世界が円滑であること」が両国民に利益をもたらすことは証明済みだった。しかし、トランプ前大統領がポピュリズムの手法の一環として政治権力を経済に及ぼしたことで、両国間の「疑念の扉」が開かれてしまった。バイデン政権はトランプ政権の手法をさらに強化したので、対中制裁は常態化した。これが米国の「悪夢の始まり」につながった。
米国の「悪夢」とは、国民を犠牲にする激しいインフレだ。その背景に米中貿易戦争の影響があるのはもちろんだ。制裁や対抗制裁はすべて反市場・反経済であり、金融や経済の基本法則を歪める。その目的は選挙に勝つことであり、常に架空の敵を設けて中傷する手法を取る。その結果として、米国国民が苦しめられることになった。
「対中デカップリング」がもたらす影響は大きすぎて、米国の発展の足かせになる。そのため一般庶民だけでなく、大手企業も混乱と悪影響を感じるようになった。企業は政治の市場への干渉に耐えられず、イデオロギーによる経済支配にうんざりして、本来のやる気を失った。米国政治に対する企業の信頼は失われていった。
米国の財界からは、自国の産業チェーンがこれ以上粗暴に破壊されてはならないとの、あるいは国家の安全保障の名目で貿易の国際的な準則に反することは許されないとする発言が出るようになった。最近になりモンタナ州は、ティックトックを全面的に禁止しようとしたが、ティックトックは同州を相手に、メディアプラットフォームの禁止措置は合衆国憲法修正第1条に違反し、地方の政治家が米国の中核的な価値観を侵害することは許されないと訴えることで対抗した。
米中の「デリスク」の背景には、政治は国民の幸せに合致させるべきであり、国家の安全保障を名目に誤った認識を作り出して国民を愚弄することは許されないという、米中両国国民の思いがある。アメリカの地政学的利益は、中国の助けを緊急に必要としている。例えばウクライナの停戦やヨーロッパの恒久的な平和は、いずれもパワーバランス上で大きな重みをもつ中国の出方に関係する。
米国のベテラン外交官であるキッシンジャー氏は、中国、アメリカ、ロシアの関係は、2辺の和が残りの1辺より大きい不等辺三角形だと指摘してきた。米国は、中国が「最大の辺」になることを恐れてきた。しかし中国と米国の「大小関係」がどのようなものであっても、中国とロシアが完全に一致して中国とロシアの力を加算されることになれば、米国は圧倒されてしまう。今日の米国は、そのことを忘れている。
中国は常に米国との関係を重視している。数カ月も空席だった駐米大使のポストには謝鋒氏が就いた。中米首脳会談も間もなく行われる予定だ。これは中国と米国の物語における新たなページであり、グローバルな運命共同体の物語における新たなページでもある。(翻訳・編集/如月隼人)
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