福島原発汚染水の海洋放出計画、東アジアに大波紋=中韓は猛反発、日本の全漁連も反対

Record China    2023年6月26日(月) 7時0分

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政府が「今夏ごろ」とする、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出が迫る中で、内外の反対論が勢いを増している。写真は韓国ソウル。

政府が「今夏ごろ」とする、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出が迫る中で、内外の反対論が勢いを増している。

◆韓国最大野党、尹政権を「日本をかばう」と批判

韓国最大野党「共に民主党」の李在明代表は6月21日、議員総会の冒頭で「尹政権は国民不安の解消どころか日本の核汚染水(処理水)の放出にあらゆる情熱を注いでいる。放出を阻止せず、日本をかばって安全だと強弁するのは到底納得できない」と批判した。

6月19日、韓国・聯合ニュースは「5月の日本からの魚介類輸入量が30%以上減少した」と伝えた。2カ月連続の減少で、輸入額も2カ月連続で減少した。貿易統計によると、活魚、冷蔵・冷凍魚類、甲殻類、軟体動物などを全て合わせた魚介類の先月の日本からの輸入量は前年同期比30.6%減少の2129トンだった。1~3月は増加が続いていたが4月に減少に転じ、5月も減少が続いた。5月の日本からの輸入額も、1406万7000ドル(約20億円)で前年同月比1.8%減少した。1~3月は増加したが4月に減少に転じ、5月も減少を記録した。

韓国政府は13年9月から福島をはじめとする8県からの水産物輸入を禁止している。このため日本からの魚介類輸入規模は14年まで減少が続いている。

韓国の国会は過半数を野党が握るねじれ状態にある。世論調査では与野党の支持率は拮抗する。2024年4月の総選挙(一院制の国会議員選挙)を視野に、改めて福島処理水への対応が争点に浮上している。

◆全漁連が「反対決議」

お膝元の日本でも、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は、6月22日の総会で福島第一原発の「処理水」放出に反対する特別決議を可決した。全漁連の坂本雅信長「処理水の放流に反対という立場は変わらないし、政府が何十年にわたり責任をもつよう決議をして要請したい」と語った。全漁連は海洋放出は世界のどこも経験のないことで、漁業者の将来への不安はぬぐい去ることができないとして、処理水の海洋放出に反対する特別決議を可決した。

東京電力は6月5日、福島第一原発の港湾内で5月に捕獲したクロソイから1万8000ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。日本の食品衛生法が定める基準値(1キログラム当たり100ベクレル)の180倍に達する。

中国外交部の汪文斌報道官は4月中旬の記者会見で、「われわれは改めて日本側に対し、国際社会と日本国民の合理的な関心事を直視し、国際的な義務と安全基準および国際的に良好とされる慣例に基づいた安全な方法で放射能汚染水を処理するよう促す」と言明。「海洋放出以外の方法を十分に研究・検証し、予測不可能なリスクを国際社会に転嫁することを避けるべきだ。また、周辺諸国などの利害関係者や関連する国際機関と十分に協議し合意する前に、日本側は独断で放射能汚染水の海洋放出を開始すべきではない」と指摘した。

中国外交部の汪文斌報道官は6月14日、在中国の日本大使館が13日に福島放射能汚染水海洋排出問題について在中国の外国メディアに対するブリーフィングを行ったことについて、日本は放射能汚染水の海洋排出を強行する誤った決定を反省しないばかりか、またもや虚偽の情報をばらまき、国際世論を惑わそうとしていると述べた。

日本はこのブリーフィングで、日本が提案した、両国で科学に基づいた専門家対話を行うという案を中国側が繰り返し拒否したことに対して遺憾の意を表し、中国がこの問題を日本に対する外交カードとしていると臆測している。日本は「放射能汚染水」という中国側の呼び方に懸念を示し、排出予定のトリチウムを含んだ「処理水」が安全であることを強調した。

◆中国、「国際社会をミスリード」と批判

汪報道官はこれに対し、「日本側は放射能汚染水処理問題について善意の協議原則に従わず、繰り返し国際社会をミスリードしようとしている」として、「日本に本当に協議しようという誠意があるなら、排出開始の一時見合わせを宣言し、隣国や太平洋島しょ国などの利害関係者が放射能汚染水に対する独自のサンプリング分析を行うことを認め、海洋排出以外のあらゆる可能な処分方法を検討することに同意すべきである」と強調した。

汪文斌報道官

汪報道官は、いわゆる「処理水」が本当に安全であるのなら、日本は環太平洋諸国にリスクを転嫁するのではなく、国内での処置を選択すべきである」と求めた。香港政府などが、海洋放出を始めれば福島県周辺の魚介類の輸入を禁止すると表明するなど、影響が懸念されている。

ウィーンで6月5日に開かれた国際原子力機関(IAEA)の理事会で、中国国家原子能機構(CAEA)主任でIAEA中国理事の張克倹氏は、日本による福島の放射能汚染水海洋放出計画を強く非難した。張氏は「福島の放射能汚染水の海洋放出は、世界の海洋環境と人々の健康に関わる大きな問題であり、日本の私事ではない。日本政府が日本国民および世界各国の正当で合理的な懸念を無視し、汚染水の海洋放出計画を独断専行で加速するのは、極めて無責任な行為だ」と指摘した。

福島東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出問題は、今後も尾を引きそうだ。(八牧浩行

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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