この道はいつか来た道…便利でおいしい食を楽しめる中国で進行する恐ろしい事態

Record China    2023年7月3日(月) 23時0分

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中国人は豊かになり、「食の楽しみ」をますます堪能できるようになった。しかしその裏では、先進国がかつて経験した「飽食による健康リスク」が進行している。

中国人は改革開放政策が本格化して以来、豊かになろうと努力し続けてきた。現在でも貧富の格差はあるが、食べたい物を腹いっぱいに食べられる人は急増した。食品メーカーや流通業者、外食産業は、売り上げを伸ばそうとして「美味しい食品」や「便利な食品」を次々に登場させる。そして、その中国で恐ろしい事態が進行中という。食生活の変化による、健康リスクの増大だ。

中国科学院上海栄養および健康研究所の林旭研究員は「上海の街を歩けば、至る所に火鍋(鍋料理)店、焼き肉屋、ミルクティーショップがある」と指摘した。林研究員は、これらの飲食店の料理の多くは脂肪や砂糖や塩分を多く含んでいると指摘した。しかし、消費者がそのことを知っているとは限らないという。

中国では経済発展や都市化の進行に伴い、精製された穀物や肉類の消費量が増えている。そして、先進諸国にとって「いつか来た道」である、飽食の時代の健康問題が進行している。米ノースカロライナ大学で栄養学を研究するバリー・ホップキン氏は、米国英国では30年ほど前に、45歳または50歳を過ぎたあたりの年齢で糖尿病になる人が出始めたと説明。中国も同様な状況になりつつあると指摘した。

中国ではフードデリバリーサービスが急速に発達したことも、食生活の健康に対する影響を増大させる要因だ。何しろ、食べたいと思えば、自宅にいながらにして食べ物をあつらえることができるからだ。中国政府・国家衛生委員会が2020年に発表したリポートによると、中国では成人の50%以上、学齢期の児童の20%近くが、体重過剰または肥満の状態だ。研究者は、効果的な介入措置を取らない場合、30年までには成人の60%以上、学齢期の児童の30%が体重過剰または肥満の状態になると予測している。

摂取カロリーの問題だけではない。世界保健機関(WHO)は成人の1日当たりの食塩の摂取量を5.0グラム以下にすることを推奨しているが、中国では平均10グラムを超えている。この状況は、高血圧や血管リスクを増大させる。中国人の食塩摂取量が過多になる主たる原因は、かつては家庭における調味だったが、現在では外食や加工品の食塩量の問題が深刻になりつつあるとされている。中国人の1日当たりの食塩摂取量を1グラム減らすことで、30年までに900万人近くの心血管疾患による死亡を防ぐことができると主張する研究者もいる。

江蘇省にキャンパスを有する崑山デューク大学は、武漢大学と米デューク大学の合弁事業として運営されている。この崑山デューク大学で、健康問題を研究する閻麗静氏によると、中国人は高齢者の食の問題について誤った考え方をしてきたと指摘した。中国人は「高齢になったら何を食べるかは重要でない」と考えて来たが、閻氏によると、80歳以上の中国人3万5000人を対象に調査したところ、健康的な食事を続けることが死亡率の大幅な低下に関係していることが分かったという。閻氏はさらに、「自分は高齢だから、食べ物の質を変えても関係ない」と考えることも間違っていると論じた。

中国政府はすでに、飲食由来の生活習慣病が急増していることへの対策を打ち出している。16年発表の「健康中国2030計画概要」と17年発表の「国民栄養計画(17-30年)」は、30年までに中国人の塩分摂取量を20%削減し、肥満者の増加をはっきりとした形で減速させることを宣言した。

北京大学中国農業政策センターの黄季焜氏は、中国は一貫して、食の安全問題を政策の重点に据えてきたと説明した。つまり、国民を飢えさせることは絶対に避けねばならないという考え方だ。しかし10年後には、中国の大衆も政府も健康と栄養の問題により注目するようになると考えられるという。

黄氏では中国に伝わる「先吃飽,再吃好(シエン・チーバオ、ザイ・チーハオ、=最初に腹いっぱい食べられるようになる。次によい物を食べるようになる)」という言い方を使って、中国は国としても同様の道をたどることになるとの考えを示した。(翻訳・編集/如月隼人


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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