中国初の国産大型クルーズ船「愛達・魔都号」が進水=コスト総額20兆円―上海を母港に世界に運航

八牧浩行    2023年7月18日(火) 8時0分

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中国初の国産大型クルーズ船「愛達・魔都(ADORA MAGIC CITY)」号が進水した。海上試運転を終えた後、年内に納船され、上海を母港とする国際航路を開設する見込みだ。

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中国初の国産大型クルーズ船「愛達・魔都(ADORA MAGIC CITY)」号が進水した。海上試運転を終えた後、年内に納船され、上海を母港とする国際航路を開設する見込みだ。

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この国産大型クルーズ船は、部品の数が2500万点にも達し、クルーズ船の製造やメンテナンスなどのコストは総額1兆元(約20兆円)規模となるという。

「愛達・魔都号」の総トン数は13万5500トン、世界最大のクルーズ船運航会社カーニバル・コーポレーションのプラットフォームに基づき、全長323.6メートル、幅37.2メートル、満載喫水8.55メートル、最大速力22.6ノット、旅客定員最大5246人、客室2125室と世界最大級を誇る。

中国船舶集団とカーニバル社の合弁会社・中船嘉年華郵輪の陳然峰・最高経営責任者(CEO)は、「初の国産大型クルーズ船は2023年内に納船されるとともに、上海を母港とした国際航路を開設することになる」と述べている。同社によると、「愛達・魔都」号は日本航路と東南アジア航路で運航するとともに、「海上シルクロード」などの中・長距離航路の運航も開始。長・中・短距離を合わせた多様な旅行・レジャーの選択肢を提供する計画という。

部品数は2500万点、大型旅客機の5倍

長年にわたり、世界には大型クルーズ船を設計・建造できる企業は、イタリアのフィンカンティエリ、ドイツのマイヤー・ヴェルフト、フランスのアトランティーク造船所など数社に限られていた。大型クルーズ船の建造が非常に難しいことがその要因だった。

業界関係者によると、現在世界で最も複雑な単体の電気機械製品であるこの国産大型クルーズ船は、建造のレベルが他の輸送機関よりもはるかに複雑だ。部品の数は2500万点に達し、中国製大型旅客機「C919」の約5倍、高速鉄道復興号」の13倍に相当し、「海上を移動する都市」と呼ばれている。

一般のクルーズ船をはじめとする輸送船と異なり、大型クルーズ船の建造は造船技術のほか、ホテル、娯楽システムなど数十の専門分野に関わっている。航行の安全保証のほか、乗船者の船上生活や娯楽サービスなども考慮しなければならない。

有力旅行専門家は「クルーズ船の建造は複数の産業を牽引している。原料の生産から部品の割当まで、重工業から軽工業まで、いずれも関わっている。例えば建造において、クルーズ船のシステム集積やコア装備の開発を牽引するほか、動力装置、甲板機械、船室設備、新エネルギー・クリーンエネルギーなども含まれる。国産大型クルーズ船の進水により、後続の日常的な船舶の修理メンテナンスといった関連産業も牽引されることになる」と述べた。

「愛達・魔都(ADORA MAGIC CITY)」

日韓の造船会社、欧州勢の牙城を崩せず

大型クルーズ船の設計・建造は難度が極めて高く、世界の造船業界では大型LNG(液化天然ガス)運搬船、航空母艦と並ぶ「三大クラウンジュエル(王冠の宝石)」と呼ばれている。中国の造船業界にとっては、3つの中で唯一実績がなかったのが大型クルーズ船だった。

愛達・魔都号の建造は2019年10月に始まり、当初は2023年7~9月期に引き渡す計画だった。しかし、新型コロナウイルスの流行の影響や建造工程の複雑さから完成が遅れ、引き渡しは2023年末に延期された。

過去20年余りの間に、日本や韓国などアジアの造船会社が大型クルーズ船の設計・建造に参入し、ヨーロッパ勢の牙城を崩そうと挑んだ。だが、結果はいずれも惨敗に終わっている。

中国のクルーズ船市場、急成長

クルーズ船運航会社の招商維京游輪(招商バイキングクルーズ)は、上海または深センから日本に向かう「和の魅力を巡る15日間日本周遊クルーズ」の実施を発表した。招商バイキングクルーズは、中国の国有複合企業の招商局集団(チャイナ・マーチャンツ・グループ)が、アメリカのクルーズ船大手のバイキングクルーズと共同で2020年に設立した。中国の旅慣れた富裕層をターゲットに、中型の豪華クルーズ船によるツアー商品を企画・販売する。

中国発着の国際クルーズ船は、2020年1月に大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で発生した新型コロナウイルスの集団感染をきっかけに、全面的な運航停止が続いてきた。

中国交通運輸部はこのほど、国際クルーズ船運航の試行再開計画を発表した。クルーズ会社は最初の国内対象港を上海、深センとする同計画に対応した。

新型コロナウイルスの流行前、中国のクルーズ市場は急速に発展し、2016年からは米国に次ぐ世界第2のクルーズ客市場になった。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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