米国に「にじり寄り」つつ中国と“縁切り”できない韓国経済の事情とは

Record Korea    2023年7月31日(月) 8時0分

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2021年までとは異なり、韓国の対中貿易は「赤字体質」が定着しつつある。韓国には経済面でも米国に接近する構えだが、中国との“縁切り”はできない事情がある。

香港の英字紙であるサウス・チャイナ・モーニングポストはこのほど、米国に追随しつつも、中国と「縁切り」できない韓国経済の状況を紹介する、解説記事を掲載した。

経済面における韓国と中国の関係は大きく変化しつつある。最大の原因は、中国でハイテク分野が急速に発展したことで、中国市場における韓国や日本の製品のシェアや利益が低下し始めたことだ。南京大学国際関係学院の朱鋒執行学院長は、「そのため日韓の経済界は改めて米国に目を向け、中国への投資よりも米国への投資の方が重要になったと見なしている」と説明した。

朱学院長はさらに、米国は中国に「全面的圧力」をかけていることで、日本と韓国は経済や外交についての対中関係と対米関係のバランスを取ることが出来なくなったと指摘した。

第二次世界大戦後、日本、韓国、中国の経済はいずれも労働集約型から技術革新集約型への道を歩んだ。労働集約型で低付加価値の製造業では、日本から韓国へ、そして中国へという生産拠点の移転現象が発生した。そのことで、日中韓は経済面でのつながりを強めた。

しかし、中国で「産業の質の向上」を実現しつつある中で、産業の「国別住み分け構造」の変化が始まった。中国の呉江浩駐日大使は6月、日本企業の代表に対して「二国間の経済協力モデルは『垂直型』から『水平型』に変化した」と述べた。すなわち、中国と日本や韓国は異なる種類の製品を産出するのではなく、同様の製品が競合する関係になったということだ。この変化が中韓関係ではとりわけ顕著に現れている。目立つのは韓国の対中貿易の赤字だ。韓国政府の統計によれば、同国は6月に16カ月ぶりの貿易黒字だったが、対中貿易は9カ月連続の赤字だった。

韓国は2021年まで、最大の貿易相手の中国との取り引きで、毎年膨大な黒字を出してきた。しかし、中国からの輸入が増えた結果、韓国の対中貿易は赤字体質になった。しかも、中国からの輸入品として顕著に増加しているのは繊維、機械、コンピューター、自動車用電池、さらには半導体など、韓国が長年にわたり優位だった品目だ。また、韓国製品は中国以外の国への輸出でも、中国製品に押されている。

また、中国に進出している韓国企業の2022年の売上高は、2016年比で約13%縮小した、韓国のビジネス調査会社CEOスコアの7月月初の発表によれば、、バッテリーや半導体を除くと、この数字は約40%に上昇していた。

韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領は、中国に偏っていた韓国の貿易を多角化し、特に先進的な半導体チップに関する「サプライチェーン同盟」を構築する活動を主導している。尹大統領はまた、4月にワシントンを公式訪問した際に、米国との経済連携をさらに強化すると述べた。

尹大統領のこれらの構想はすべて、中国からの調達を減らし、その影響力の高まりを抑えることで、サプライチェーンを強化することを目的としている。

また、韓国政府は5月、2027年までに世界のディスプレイ市場のトップの座を奪還するために、66兆ウォン(約9兆8000億円)を投資する計画を発表した。

しかし韓国貿易協会(KITA)は、石油化学、家電製品、メモリーチップなど、造船やディスプレイ以外の幅広い主要分野では、韓国の輸出は2023年後半に中国との厳しい競争に直面する可能性が高いと指摘した。

韓国企業が生産拠点を中国以外に移す例も多い。例えばサムスンは2019年に中国の携帯電話市場から撤退して、生産拠点もベトナムに移した。中国国内における現地企業との厳しい競争と、人件費の高騰が原因だった。政治学が専門で、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の特別顧問も務めた韓国・延世大学の文正仁(ムン・チョンイン)教授は、競争優位性の変化や中国市場への「過度な依存」を減らす必要性を考えれば、韓国企業が他国に移ることは「ごく自然なこと」と述べた。

文教授はさらに、「中国への依存を減らし多様化することは問題ないが、多様化の結果として韓国の貿易量や専門家の量、貿易黒字を増やすべきだ」と指摘した。文教授ただし、状況が単純ではないことにも言及した。「中国市場はやはり韓国にとって非常に大切」であり「国境のすぐそばこれほど大きな市場があることは、災いになる可能性もあるが、われわれが可能な限り、地理上の近さを利用すれば、(中国という存在は)同時に恵みにもなる」という。

米国と中国は対立を強めている。そして、日本と韓国は米国が中国を抑えるために主導している「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」のメンバー国でもある。中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長は、中国が多くの産業で韓国を抜いて世界トップになったため、中韓関係は「以前よりももろくなった」と述べた。

しかし文教授は、韓国が経済面やサプライチェーンの面で米国よりになっても「市場には常に制約がある」と論じ、さらに「韓国は、たとえ安全保障や政治的な理由を強調したとしても、中国市場から簡単に離れることができない」と述べた。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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