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車載電池2強のCATLとBYD、将来のカギはテスラとトヨタが握る?

高野悠介    2023年8月11日(金) 17時0分

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4~5年後の車載電池の業界地図は一変している可能性がある。やはりテスラとトヨタがカギを握りそうだ。写真はテスラ。

車載電池の世界シェアは中国の寧徳時代(CATL)と比亜迪BYD)が半分以上を抑え、2トップに君臨している。ただし両者のアプローチは大きく異なる。車載電池業界はこれからどうなっていくのか、カギを握るのは誰か、中国メディアの報道から検討してみたい。

■世界2強の売り上げは絶好調

韓国の市場調査会社SNEリサーチによると、2023年1~5月の世界の車載電池ランキングは次の通り(GWh/伸長率/シェア)。

1位 CATL 86.2/59.6%増/36.3%

2位 BYD 38.1/107.8%増/16.1%

3位 LGエナジー 33.0/56.0%増/13.9%

4位 パナソニック 19.1/37.1%増/8.0%

5位 SK On 12.4/9.0%増/5.2%

CATLが発表した2023年上半期決算によると、売り上げは前年同期比67.5%増の1892億5000万元、利益は同154%増の207億1700万元だった。BYDは上半期の利益予想を発表したが、それによると192~225%増の105~117億元で、陰りはどこにも見えない。

■電池専業のCATLは三元系リチウムから新型へ

CATLは2011年設立。創業者の曽毓群(ロビン・ゼン)氏は1968年、福建省生まれ。上海交通大学船舶工程系を卒業し、福建省の国有企業に配属されるとすぐに頭角を現し、マネージャーへ出世。1999年に上司らと共に「新能源科技有限公司(アンプレックステクノロジー、ATL)」を創業し、EV車用電池の商業化を狙う。2011年に「寧徳時代新能源科技有限公司」を設立した。

2017年にエネルギー密度が高く航続距離の長い三元系リチウムイオン電池を開発すると、これが大ヒットし、瞬く間に最大の車載電池サプライヤーとなる。2018年6月に深セン市場に上場、7月にはドイツ工場建設を発表し、BMWと提携した。2019年7月にトヨタと提携。2020年3月にテスラ上海へ供給を開始した。

販売先はそのテスラが構成比20%でトップ、その他に蔚来汽車小鵬汽車、上海汽車、第一汽車などがある。

今年4月には、レアメタルを使わないナトリウムイオン電池の商用化を発表した。まず奇瑞汽車(Chery)のEV車に搭載される。また、新世代のCTP(Cell to Pack)技術を生かした航続距離1000キロも可能という「麒麟電池」の供給計画も進んでいる。

■BYDは4分野へ展開…2003年に自動車進出

BYDは1995年設立。創業者の王伝福(ワン・チュアンフー)氏は1966年、安徽省生まれ。中南工業大学を卒業後し、北京有色金属研究総院で修士を取得した。1995年まで同院に勤務し、同年BYDを創業した。電池、電子、自動車、軌道交通の4部門だが、最近は新エネルギー車の存在感が圧倒的だ。二次充電池の生産からスタートし、1997年にリチウムイオン電池に進出した。2002年に香港市場に上場。自動車製造に進出したのは2003年だ。

その15年後の2018年、中国にはEV車製造企業が487社あった。現在は約40社になり、5年で400社以上が淘汰されたが、BYDはその頂点に立った。

車載電池の主力は三元系よりエネルギー密度は低いが安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン電池だ。2020年3月にこれを刀型に並べたブレードバッテリーを開発。体積利用率を高め、エネルギー密度の低い弱点をカバーした。製品の90%以上は自社用で、残りは第一汽車、長安フォード、金康汽車などに供給している。

2020年にトヨタと合弁企業「比亜迪豊田電動車科技有限公司」を設立。2022年8月にテスラへの供給を開始。ベルリン工場生産のModel Yにブレードバッテリーが採用され、CATLへ衝撃を与えた。

■現下の懸念はテスラと供給過剰

中国メディアはCATLとテスラの関係に注目している。

6月、CATLがテスラにバッテリーを供給できなくなるといううわさが流れ、株価が乱高下した。CATLは即座に否定したが、モルガン・スタンレーは同社の目標株価を16%も引き下げた。その理由は、米国が昨年成立したIRA法により、EV車の税額控除に厳しい要件を課したことだ。今後、車載電池は北米のサプライチェーンを絡ませないと7500ドルの控除が得られない。現段階では影響は見通せない。

もう1つは、供給過剰による価格競争が避けられないとみられるからだ。実際にCATLの上半期の工場稼働率は60.5%に過ぎず、前年同期の81.3%から大幅に下降した。そして準大手企業に市場シェアを奪われ、「造車新勢力」の蔚来汽車と小鵬汽車は独自の電池調達を模索し、CATLから距離を取りつつある。

これらの理由から、最高益の半期決算を発表した後も株価の戻りは鈍い。

■業界地図は一変の可能性

近い将来の懸念は6月にトヨタが発表した全固体電池の技術的ブレークスルーだ。

全固体電池は電解質に固体を使うため、液漏れや発火リスクが低く、安全性が高い。トヨタは車載電池の「重い、大きい、高価」という要素を固体電池とその製造工程の合理化によって半減させると宣言した。固体電池はトヨタだけでなく、日産やBMW、上海汽車も開発を進め、搭載スケジュールを明示している。CATLは開発中とだけ述べている。

中国メディアの関心は技術そのものより製造設備に向いている。やがて固体電池の時代が到来した場合、すでに過剰となっている現状の生産設備を低コストで更新できるのか。この課題は目に見えている。CATLはナトリウムイオン電池や「麒麟電池」の普及で対抗できるのか。

これに対し、BYDは余裕がありそうだ。電池を自社消化できる上、自動車販売が絶好調だ。テスラへの供給は始まったばかりで、トヨタとは合弁事業がある。いずれにしろ4~5年後の業界地図は一変している可能性がある。やはりテスラとトヨタがカギを握りそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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