凌星光 2023年8月28日(月) 14時30分
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東京電力が24日、福島第一原発の処理水の海洋放出を開始した。そんな中、中国・蘇州大学の王殳凹博士から、トリチウム分離技術の実用化を加速し、環境保護と日中関係改善に資するべきだという提案があった。
東京電力が24日、福島第一原発の処理水の海洋放出を開始し、中国の強い反発を招いた。 改善が期待されていた日中関係は再び悪化の一途をたどっている。そんな中、中国・蘇州大学の王殳凹博士(38)から私に、トリチウム分離技術の実用化を加速し、環境保護と日中関係改善に資するべきだという提案があった。
王博士は放射線医学の専門家で、彼が率いる研究チームは2018年からトリチウム分離に取り組み、成果を上げている。「トリチウムは水と一体化しているため、現在の技術では分離が難しい」というのが通説だったので、当初は懐疑的だった。 しかし、関連資料を読んで、真摯な対応が必要だと感じた。
東京電力のホームページを見てみると、王博士のチームの研究成果は確かに選ばれている。東京電力は2021年5月、国内外からトリチウム分離技術の公募を行った。王博士のチームはそれに応募し、一次評価と二次評価をパスし、2023年3月に日本で行われたフィージビリティスタディに参加している。計124の研究チームが応募し、7チーム(日本2、中国2、カナダ2、スペイン1)が残り、王博士のチームはそのうちの一つだ。
東京電力の段取りでは、次のステップは小規模実証試験で、その後は実証試験と進むが、正確な時期はまだ明らかになっていない。王博士は、現在の進捗ペースは遅すぎると考えている。2022年8月の時点ですでに実用化を達成しており、現在は年間処理能力10トンの施設の開発に成功している。次は年間1000トンの処理能力を持つ大型施設を開発する予定だ。一刻も早く問題を解決するために、日中両国は協力して福島に大型施設を建設すべきだと、王博士は熱っぽく語る。
日本政府の現在の計画では、処理水は今後30年にわたって海に放出される。しかし、王博士の研究チームの技術では、この問題は10年以内に解決される可能性がある。現在、蓄積されている処理水は134万トンで、もし年間15万トンの処理能力を持つ施設が建設されれば、問題は約10年で解決することになる。
王博士によると、この技術で浄化された処理水中のトリチウムは約100Bq/Lまで減少し、99.9%のトリチウムが廃液として現在の1000分の1(廃液貯槽の容積に相当)に濃縮されるという。
王博士のチームの分離技術はかなり成熟しており、東京電力もそれを評価しているにもかかわらず、なぜ採用が遅れ、代わりに処理水の海洋放出にこだわるのだろうか?すでに海洋放出を決定し、かなりの時間と資金を投じて「ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設の設置工事」を行った無駄遣いへの批判を恐れたのだろうか?もしそうだとしたら、一抹の不安を感じる。
いずれにせよ、今必要なのは後ろ向きではなく、前向きの科学技術だ。日中両国は協力を強化し、力を合わせて人類が直面しているトリチウム分離の難題を解決するべきだ。私はここに日中両国政府および社会の各界に強く呼びかけたい。処理水の海洋放出という難題を確実に解決し、人類に幸せをもたらすために、王博士のチームの研究成果の実用化を加速させよう!
■筆者プロフィール:凌星光
1933年生まれ、福井県立大学名誉教授。1952年一橋大学経済学部、1953年上海財経学院(現大学)国民経済計画学部、1971年河北大学外国語学部教師、1978年中国社会科学院世界経済政治研究所、1990年金沢大学経済学部、1992年福井県立大学経済学部教授などを歴任。
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