治療費以外の医師への謝礼、受け取りを「奨励」する意外な事情とは―広東省

Record China    2023年11月5日(日) 22時30分

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定められた治療費以外の「医師への謝礼」の問題は、日本にも中国にもある。一般には「好ましくない」とされるが、広東省湛江市の湛江西南病院は医師などに受け取りを奨励する「奇策」を導入した。

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日本でも中国でも「よくないこと」と見なされ対処法も存在するが

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「お世話になる先生には、個人的にお礼をした方がよいのでは」――。日本でも、このように考える人は珍しくないかもしれない。日本医師会は「定められた以外の報酬を要求してはならない」「(患者側が自らの意志で報酬を渡そうとしても)受け取りは慎むべき」との方針を明確化している。また、公立病院の医療関係者は公務員の身分なので、個人的な謝礼の授受には収賄や贈賄の可能性が出てくる。

中国の場合には、地方政府が明確に禁止している場合がある。例えば黒竜江省の場合、医師が謝礼を2回以上受け取った場合と、受け取りが1回であっても価額が1500元(約3万700円)以上であれば、医師としての職務資格を取り消す罰則がある。

苦し紛れ? で導入した謝礼受け取りの奨励策

ところが、広東省湛江市の湛江西南病院は、医師や看護師に謝礼受け取りを奨励している。同病院の責任者である竜得雲氏によると、明文化した奨励策を導入したのは2023年4月だった。患者側からの謝礼受け取りを病院側に報告して「上納」した医師などには、1回当たり100元(約2050円)の報奨金を支払うことにした。一方で、謝礼を受け取っても病院に「上納」しなかった場合に、事実を知った者が病院に通報した場合、事実と確認されれば通報者に1万元(約20万5000円)の奨励金を支給し、謝礼を自分のものにした医師などを処罰する。

竜氏によると、以前は謝礼の受け取りを厳禁し、受け取った者を処罰していたが、状況を詳細に調査した結果、患者や家族は謝礼の受け取りを拒否されると不安を感じる場合があることも分かった。医師や看護師は謝礼を拒否した場合にも受け取った場合にも精神的な重圧を感じ、業務の遂行に悪影響があることも分かった。そのため、謝礼受け取りの奨励制度を採用したという。


病院側は患者が退院する際に謝礼を返却している。つまり病院側は定められた以上の収入を得ているわけではない。

同病院の泌尿器外科の黄鋭主任医師は、2018年から同病院に勤務する「エース医師」だ。同病院が謝礼を受け取り患者側に返却した事例は23年になってからは23回だが、うち12回は黄医師を経由したものだった。

黄医師は、ある高齢の患者の手術をした際の状況を説明した。手術当日の朝に主任室で執務していると、患者家族が状況を知りたいと言ってやってきた。黄医師が説明を終えると、患者家族は黄医師の服のポケットに謝礼をねじ込んで、部屋から飛び出して去ってしまった。手術の準備を始める時間が迫っていたので、黄医師は家族を追いかけるのを諦め、看護師長に謝礼を預けた。謝礼はその後、病院を通じて患者側に返却された。

同病院内科第2科の葉維聡主任医師は、「患者や家族は、退院の際の治療費精算の際に、渡したはずの謝礼が“一文も減らずに”返却されて、とても感激し、当病院の徳を備えた医療と気風を称賛します」と述べ、謝礼受け取り制度の長所を強調した。中国メディアの紫牛新聞によると、無錫明慈病院など多くの病院が、患者や家族を安心させるために同様の制度を導入したという。

それでも問題の本質解決になっていないとの主張

中国のポータル/情報サイトである捜狐が掲載した記事は、湛江西南病院のような方法にも問題があると主張した。患者側が謝礼を差し出すことが常態化すれば、医師と患者側の関係が不自然になり、互いに邪推しあう袋小路に入ってしまう可能性があるからだ。同記事は「安心を求めて謝礼を贈ることは、医師と患者の正常な関係を維持することにはつながらない」と論じた。

北京青年報は、医師に謝礼を渡す考え方があるかぎり、問題は解決しないと指摘した。まず現状では、多くの医師が患者側から謝礼を受け取らないために、あるいは謝礼を返却するために、多くの労力を費やしている。謝礼を受け取っても構わないということになれば、経済力のある人が競い合って高額の謝礼を渡そうとする状況になる可能性もあるからだ。捜狐の記事も、医師などのストレスを減らす必要があるとしても、「謝礼を病院に上納すれれば、それでよい」という方法には問題があると主張した。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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