<日本人が見た新疆>風力発電に度肝を抜かれる、「百聞は一見にしかず」の旅に

Record China    2023年11月16日(木) 16時20分

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中国駐大阪総領事館が企画した新疆ツアー第二陣が9月に行われた。ツアーに参加した貫井正さんは新疆ウイグル自治区で見たこと、感じたことをつづった。

中国駐大阪総領事館が企画した新疆ツアー第二陣が9月に行われ、参加者はカシュガル古城、エイティガールモスク、カシュガル市老城区保護総合治理紀念館などを訪れた。

ツアーに参加した貫井正さんは、新疆ウイグル自治区で見たこと、感じたことを以下のようにつづった。

中国駐大阪総領事館の広報アドバイザーとして、9月1~9日に新疆ツアー第二陣に参加することができた。旅の初日は午前10時、関西空港から中国東方航空上海に向け出発。上海から国内線に乗り継いで新疆の区都・ウルムチに着いたのは、現地時間9月1日午後8時40分だった(日本との時差は3時間)。機内の小窓に顔の額をつけて外に目をやると、空港の広さ、居並ぶ航空機、はるかに広がる山々など周囲が次第にはっきり見えてきた。

私はかつて中国の首都・北京で留学および各地の大学で12年以上、教職員として働いた経験がある。とはいえ、これまで中国の西の果て、新疆へは一度も訪れたことがなく、観光に関する情報があまりに少ないこともあり、私の中の新疆ははるかに遠い地域にあった。

今回のツアーは主に新疆南側のルートを巡る南疆のコースだ。三蔵法師(玄奘三蔵)も訪れた世界遺産「高昌故城」、亀茲国最大の寺院・キジル千仏洞、亀茲仏教の中心地・スバシ故城など、仏教に関する史跡巡りが主たる見学の地で、人類の文明や歴史をじかに感じさせる名勝史跡に多く触れる旅になった。

2日目の9月3日の朝、ウルムチ市内で宿泊した海徳酒店(ホテル)から徒歩1分足らずのところにある広い公園に他のツアーメンバーと行くと、海外からの旅行者の知り得る人々の暮らしの一端が垣間に見て取れた。彼らは太極拳やダンス、スポーツ、サイクリングなどに興じていた。公園の中央には「中国人民解放軍進軍新疆記念」という高く立派な碑がどっしりと鎮座しており、記念撮影をしている人もいる。いずれも新疆市民の豊かな暮らしぶりを伝えているが、それだけでなく、周辺地域の人々の身近な観光地のように思えた。

新疆の特色の一つに、ウイグル人の踊り好きがある。9月4日の昼食の時には、トルファンのレストランできれいな若いウイグル族の女性が民族衣装を身にまとい、一般の日本人が見たことがないような体の動きで、興味深い踊りを披露してくれた。

新疆ウイグル人には男女それぞれの踊り方があるそうだが、男女の割合でいえば、やはり女性の踊り手が圧倒的に多かった。一方、民族楽器の演奏では男女の割合が逆になる。にぎやかなことを好む人々だけに、結婚式などではウイグルの踊りは欠かせない存在だという。

私は日本のメディアが時々取り上げる中国政府のウイグル族に対する人権侵害や強制労働、ジェノサイドなどの実態を確認したい、ということもひそかに考えていた。9月6日にクチャから約260キロ離れた中国の綿花の産地として知られたアクスにある紡績工場・華孚(かふ)を見学した。人権問題を理由とする米国の経済制裁などによって、ユニクロが撤退を余儀なくされた工場だ。同社の夏乃君工場長によると、新疆で最大規模を誇る紡績工場で、従業員は約5200人。大部分がウイグル族などの少数民族だという。

同工場長は「ここでは強制労働は一切ありません」と明言した。すでに米国の制裁によって同工場の経営方針の転換が迫られ、国内向け生産は80%で、残りの20%が東南アジア向けに輸出されている。ツアーには関西新疆同郷会のアラファト会長が参加していた。ウイグル族ウルムチ出身の若い彼に新疆の人権侵害や強制労働、ジェノサイドなどについて尋ねてみたところ、「昔のことはよく分からないが、今はそのようなことはないと思っている」と語っていた。

新疆ウイグル自治区の人口比率は当然ながらウイグル族が一番多く(45%)、次に漢族(41%)。そのほかは45の民族で構成されているという(2020年、自治区の国勢調査)。新疆の観光地や高速道路、公共場所など案内板にはすべて漢語とウイグル語が併記されており、新疆の呼び名「ウイグル自治区」は中国政府のウイグル族への尊重の念の証と見ることも出来よう。

新疆は中国国土の一部(中国面積の約6分の1)で日本の約4.5倍という広大な面積を占める。そこで暮らす人々の顔つきだけでなく、羊肉の串刺しやトマト、ポテト、タマネギ、ピーマン、ニンジン、麺、ナン(インドやネパールと違い硬い)などの料理には西洋風が感じられ、ライフスタイルは漢族のそれとは明らかに異なる。特に新疆西のオアシス都市・カシュガルは西洋風の異国情緒にあふれていた。

ツアー最終日の夕食をとった民族風レストランではウイグル族の結婚式が行われていた。そこに居合わせた子どもたちは私たちが日本人だと知ると、笑顔を振りまきながら寄ってきて、一人一人に飴を手渡し、写真撮影に気さくに応じてくれた。新疆の人はみな、空港でも観光地でも親切で友好的という印象だ。

今回、数多くの観光の中で、大変興味深く、最も驚いたのは中国最大規模の風力発電だった。中国は今、風力エネルギーによって低炭素化の転換やエネルギー不足の解消を進めているとされるが、陸上の風力発電はわれわれ日本人には大規模な自然エネルギー政策を思わせる。

9月3日、ウルムチの市街地からトルファンへ大型観光バスで180キロ(東京-大阪間の半分程度)ほど移動した。世界有数の盆地といわれるトルファンへ行った時のこと。観光バスが高速道路に入り、広い道路をひたすら真っすぐ走る。両側の車窓から見えるのは延々と続く山々の自然風景であり、観光バスで大地を駆け抜けて行く。まるで米国の有名なハリウッド映画のハイウェイのシーンのようだった。日本の国土のスケールからは感じ取れない二つの大陸の共通点を見た気がした。

バスの両側の車窓から見る天山山脈の切れ目から突然、大量の風力発電機が現れてきた。この辺りは中国で最も海抜の低いトルファン盆地だ。海抜の高い天山山脈から広大な盆地に年間を通じて強い風が吹きさらしとなり、風力発電の利用にとってめったにない地の利を得ているように思われる。

新疆で風力発電の導入が始まったのは1980年代以降だという。この地に派遣されているデンマークオランダ人ら欧州のエンジニアは風力発電に関する高い技術やノウハウを持っているという。一方、新疆の地形は風力発電の活用に適した土地が多く、強い風が吹くなど資源に恵まれている。当初の実験的な風力発電の運行効率も良かったことから、風力発電の設置は徐々に拡大し、新疆各地へと広まっていったそうだ。

われわれを乗せた観光バスは高速道路上を時速80キロで走り続けた。50キロ以上走った道路の両端には、約百メートル間隔で風力発電が設置されていた。われわれが今回の旅で出会ったものの中で最も驚異的だったのは、これらトルファンの風力発電ではないだろうか。中国国営放送CCTV(中国中央電視台)4チャンネルのYouTube報道(9月25日付)によると、すでに数万基以上の風力発電(建設中のものを含む)が存在するという。延々と続くそのスケールには新疆ツアーのメンバーの誰もがあぜんとした表情を見せていた。

日本の洋上風力発電も欧米を初めとする諸国に知られる存在になり始めているが、トルファンの風力発電には日本人の誰もが度肝を抜かれるに違いない。現在の新疆は一般の外国人団体ツアーを入れない状況にあり、本当の姿のほとんどは神秘のベールの向こう側にある。まさに「百聞は一見にしかず」。古来、日中両国で使われてきたことわざがしばしば浮かんでくるツアーだった。

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