中国に行った外国人の「支払いできない問題」の現状と今後はどうなのか

Record China    2023年11月26日(日) 22時0分

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モバイル決済が普及した中国では、外国人の「支払いできない問題」が注目されてきた。中国当局は、金融分野の開放にからめて、同問題の緩和に取り組んでいる。

中国ではアリペイ(支付宝)やウィーチャット・ペイ(微信支付)などのモバイル決済が急速に普及し、2019年ごろにはすでに、日常の買い物でも現金をほとんど使わない人が珍しくなくなっていた。また、現金による支払いを受け付けないケースも出現するようになった。困ったのはアリペイやウィーチャット・ペイなどを利用していない、外国から訪れた人だ。一時は新型コロナ感染症の影響で中国を訪れる外国人が激減したが、中国政府はすでにコロナ対策を緩和し、現在では外国人の訪中を促進する政策を実施している。中国メディアの環球時報はこのほど、中国における外国人の「支払困難問題」の現状や当局側の措置、専門家の見方を紹介する記事を発表した。

北京のある大学で留学生の指導を担当する孫さんは、「今年の夏休み前には、外国から来た学生が中国での支払いについて、何らかの不便を強いられる状況になっていた」と説明した。アリペイやウィーチャット・ペイを利用するためには、中国国内で発行されたデビットカードをひも付けねばならないからだった。

中国のモバイル決済を外国のカードとひも付けることも不可能ではない。しかし孫さんによると「一定の手数料がかかる上に利用枠に上限があるため、入国したばかりの学生にとっては、あまり便利ではなかったから」という。

アリペイやウィーチャット・ペイは7月下旬に、ビザやマスターカードなど主流の海外カードとの連携を全面的に開放し、関連サービスを向上させると発表した。孫さんによると、この措置により、秋学期からは、留学生の中国での決済に関する問題はすでに大幅に改善された。

しかし長期にわたって中国に滞在する留学生ならば、生活のためにも支払い手段を確立せざるをえず、また手段を確立することで中国国内での問題は解消されるが、短期滞在する人にとっては、不便な状態が続いているようだ。国有企業で研修マネージャーを務める林尚さんによると、10月には20カ国以上から50人あまりの協力販売業者の関係者を北京に招待して製品関連の研修に参加してもらったが、外国人は依然として「支払い困難」の問題に直面していたという。

海外で発行されたカードの所有者もモバイル決済ができるようになっていたが、モバイル決済を選択した人は全体の3分の1以下に留まり、多くの人はやはり現金による支払いを選択したという。林さんは「多くの招待客は初めて見知らぬ国に行くと、これまで使ったことのない金融決済ツールに自然と不慣れに感じ、関連する銀行のデビットカードやクレジットカードの盗難などのリスクを懸念します」「それ以外にも一部の外国人客は、自分が中国に来たのはほんの短い旅なので、時間をかけて新しい決済ツールを知って理解したくないと考えます」と分析した。

中国に住むキルギス人のミルタンさんも「中国に来たばかりの頃、海外で発行されたクレジットカードを持っていました。しかし決済通貨が人民元ではない上に、中国ではモバイル決済が主流になっていて、カード決済の利用は限られていました」と、外国人にとって中国での支払いは不便だと述べた。


中国における外国人の「支払い困難」の軽減に奏功すると考えられている政策の一つが、金融カードの対外開放の推進だ。例えば中国当局は、マスターカードと中国企業の網聯精算の合弁会社である万事網聯信息技術(北京)(以下、「万事網聯信」)に対して、同社によるクレジットカードの発行を許可した。

マスターカードはこれまで中国関連での制約が多かったが、中国当局の措置により、中国国内では人民元建てで、海外では外貨建てで使用することが可能になった。中国社会科学院世界経済・政治研究所の高凌雲研究員は中国当局の措置について「中国が(金融分野で)高水準の対外開放を拡大する決意を示している」と述べた。

しかし現在までの措置では、中国に来た外国人の「支払い困難」問題を解決するには不十分だとの意見もある。金融カードの研究を続けてきた董錚氏は、「外国ではカードによる支払いが主流であるのに対して、中国ではモバイル決済が主流になる流れです」と指摘。そのため、外国人が中国国内でクレジットカードを使う際の利便性が向上しても、それだけでは「障壁」が残る。董氏は、「マスターカードやアメリカン・エキスプレスなどのカード発行会社は、カードとモバイル決算のひも付けを優先して進めるべきです」と主張した。

董氏はさらに、中国は金融あるいは決算手段の対外開放を進める上で、諸制度を整備する必要があると指摘した。董氏は「具体的に言えば、現行の法律や法規に基づき、データとユーザー情報をどのように保護するかについては、なお一層明確にする必要があります。クロスボーダー資金の流れの面でも、われわれはモニタリングをしっかり行い、アンチマネーロンダリング・アンチテロリズムに相応する制度と方法をしっかりと実行し、実践の中で既存の監督管理・規制を不断に改善せねばなりません」と述べた。

董氏によると、現在の中国の関連政策は、よい方向に向かっている。董氏は「われわれは現在、すべての取引データを中国国内に置くことを要求し、しかもカード発行機関は、一定の基準に達して資格を持っている中国側の金融関連会社機関と合弁しなければなりません。この設定は、国外での盗難や詐欺に対して効果的なモニタリングを行い、銀行のリスク防止を支援することができます」として、データや情報のリスクは制御可能だとの考えを示した。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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