Record China 2024年1月21日(日) 22時30分
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「消えてしまった大富豪」と思われていた陳天橋(写真)が実は、かつてと異なる分野で事業を展開し、しかも資産を大幅に増やしていることが分かった。精神面でも「大脱皮」したという。
中国では改革開放の進行に伴い、多くの「大富豪」が登場した。典型的なパターンは、立ち上げた企業が大きく伸びて保有する株式の時価総額がうなぎのぼりになるなどだ。しかし一方で、消えてしまう人も多い。不正行為などで有罪判決が確定した人もいる。そんな中で、「消えてしまった大富豪」と見なされた一人が陳天橋氏だ。しかし中国では最近になり、陳氏は現在も盛んに事業を行っており、資産総額もかえって増えているとして話題になった。さらに、精神面でも「大脱皮」をすることになり、事業にもそのことが反映されているという。
陳氏は1999年に盛大網絡を共同創業した。同社は韓国製ゲームの代理配信で急成長し、2004年には米ナスダックに株式上場した。同社はその時点で、中国で最も時価総額が高いゲーム会社であり、世界で最も時価総額が高いゲーム会社になった。わずか31歳だった陳氏の資産総額は90億元を突破し、翌年には150億ドルに達した。
しかし陳氏はその後、盛大網絡を通じて手掛けた新規事業の多くに失敗した。陳氏は12年にシンガポールに移住し、盛大網絡は上場廃止となった。陳氏は14年以降、盛大網絡の関連会社を相次いで売却するなどした。陳氏はインターネットでもほとんど話題にならなくなり、ビジネス界でも忘れられていった。
しかし陳氏はまだ保有していた会社を通じて、投資事業を進めていた。主な分野はベンチャーキャピタルや不動産投資だ。傘下に5本のファンドを抱えており、過去20年間に創業プロジェクト156件に投資し、年間回収率は40%を上回っているという。また、米国の不動産情報誌によると、陳氏は米オレゴン州に19万8000エーカー(約8万ヘクタール)の土地を保有し、米国における外国人として2番目の大土地保有者という。陳氏はまた、カナダのオンタリオ州にも約50万エーカー(約20万ヘクタール)の土地を保有しているという。
さらに、ニューヨークやロサンゼルス、上海でも「ランドマーク的建物」を購入した。現在は45社を支配しており、投資地図は世界に広がっている。個人の資産額は、盛大網絡を手放した時期には120億元だったが、現在は530億元(約1兆1000億円)で、むしろ大幅に増やしている。
陳氏が一時、ビジネスから手を引いた主たる理由は病気だった。36歳の時に手術を受け、深刻なうつ状態になったという。陳氏は「毎晩、太陽が西に沈むと、私の人生が終わりを迎えたような気がします。今夜、私は死ぬような気がします」「横になると起き上がれないし、座ると立ち上がれないし、呼吸もできない」と語ったことがある。
陳氏はその後、仏教を深く信仰するようになり、同時に「脳科学マニア」になったという。そして、設立したTCCI財団(陳天橋脳科学研究院)を通じて、カリフォルニア工科大学に脳科学研究所設立のために1億1500億ドルを寄付するなどしている。陳氏がこれまでに脳科学分野で出資した金額は100億元近くに達するとされる。
陳氏の「脳科学への傾倒」は、同氏が仏教信仰などにも関連していたため、長らく「神秘的色彩がある」と見なされてきた。しかし実際の事業展開を見ると、大脳の認識、大脳の治療、大脳の発育という科学としてきちんとしたテーマに主眼を置いていることが分かる。陳氏はまた、大脳と人工知能(AI)の組み合わせにも関心を持っている。陳氏は、「脳科学を通じて、自分が探しているのは自分自身の『救い』です」と語ったことがある。
中国の「消えてしまった大富豪」については、あまりにも欲望を膨らましてしまったことが転落の大きな原因と見受けられる場合がある。しかし陳氏の場合には、苦しい病気を体験したことで、精神面が「大脱皮」したようだ。陳氏の脳科学分野への投資についても、投資期間が長いだけでなく、結果を数値化することも困難な場合があるので、「何が何でもリターンを求める」のではなく寄付の側面が強いとの見方がある。陳氏については、病気になったおかげで「欲望を満たすためならば悪魔に魂を売り渡す」という、最も深刻な心の病気にならずにすんだといった論評もある。(翻訳・編集/如月隼人)
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